YouTubeは今や音楽好きにとって欠かせないサービスです。
しかし、米国やオーストラリアなど一部の海外諸国では、日本のレコード会社がYouTubeにアップしたアーティストの公式MV(ミュージックビデオ)が観られなくなっているのです。みなさん、ご存じでしょうか?
海外にいる邦楽ファンとしては、MVすら観られない状況だとガッカリですよね。
いったいなぜ、このような状況になっているのでしょうか?
もくじ
一部の海外諸国で邦楽MVがほとんど観られないのは、いったい何が原因なのでしょうか?
著作権にうるさいと評判のJASRACが影響している?
実は、YouTubeが新たに始めたサービス「YouTube Red」が黒幕なのです。
「YouTube Red」とは、YouTubeが米国で2015年10月より提供開始した有料定額サービスです。現在は、米国のみならずオーストラリア、メキシコ、ニュージーランド、韓国でもサービスを提供しています。
視聴ユーザーは月額料金9.99ドルを支払うことで、「広告が入らないYouTube動画の再生」「端末に再生リストを保存してのオフライン再生」「携帯で他アプリを起動しながら視聴できるバックグラウンド再生」などが可能となります。
また、「YouTube Red」オリジナルの特別番組や映画などのプレミアム動画コンテンツの閲覧も可能になるようです。
このように、海外でサービスを展開する「YouTube Red」が邦楽MVを観られなくしている原因なのです。
そのしくみは、動画をアップロードするクリエイターが「YouTube Red」と合意して契約を結ばない場合、「YouTube Red」展開国で、そのクリエイターの動画は「YouTube」で非公開となるため、観られなくなるということです。
YouTubeは「YouTube上の99%の動画は、YouTube Redの月額料金を払う限り、これまで通り視聴できる」と言っています。しかしながら、その残りの1%の動画の中に邦楽のMVが入っています。
基本的に、YouTubeに音楽をアップロードする権利を持っているのはアーティストではなく著作隣接権の中の原盤権を持つ「ポニーキャニオン」や「ビクターエンタテインメント」などの大手レコード会社です。
しかし、レコード会社はYouTubeの利益配分方針に同意しがたいところがあることや、動画のオフライン再生許可へのためらいがあり「YouTube Red」の契約を結んでいません。
このような背景があって、米国など海外で邦楽アーティストのMVが観られないのです。
「YouTube Red」は動画の視聴ユーザーに課金し、その料金で得た収益は動画をアップロードするクリエイターに配分します。そのためYouTube Redにとってはクリエイターの収益増加が見込まれます。クリエイターだけでなく、視聴ユーザーにも前述した広告なしで動画を楽しめるなどのメリットがあります。
しかしながら、YouTube Redの料金を支払った人「しか」そのクリエイター動画が観られないのは、問題ではないでしょうか。もし、クリエイター動画をこれまで観ていた視聴ユーザーが「お金を払う必要があるなら観ない」となると、そのチャンネルの視聴ユーザー数は大幅な減少を招く可能性があります。
これはクリエイターにとって大問題です。なぜなら、課金しても観たいと言える動画でなければ視聴ユーザーの減少を招く可能性が高いからです。
アメリカ、オーストラリアなどのYouTube Red展開国でMVが非公開にされてしまう事態を受け、日本のアーティストらは頭を悩ませています。
アーティストの中にはYouTube以外で視聴制限のない動画配信プラットフォーム「Brightcove(ブライトコーブ)」などにMVをアップし、海外ユーザーからの「MVを視聴したい」という要望に応えているアーティストもいるようです。
ピコ太郎のように海外で評価され、一億回以上も再生される日本のアーティストも出現しています。一方で、今後はさらに邦楽への期待が高まる中で、海外への音楽発信のあり方が問われていると言えそうです。
※本記事は2017年2月時点の情報を記載しております。