皆さん、ミュージシャンのライヴ舞台裏を見たことはありますか?
いわゆる“バンド”のドラマー達はライヴDVDの特典で舞台裏を映されることはあるかもしれませんが、私達のようなセッションミュージシャン(スタジオミュージシャンとも呼称されます)の舞台裏はあまり取り上げられることがないと思うので、今回はセッションドラマーとして演奏の仕事をしている筆者の舞台裏を解説しながら、演奏面以外の裏話も交えてたっぷりと公開していこうかと思います。
もくじ
実際の本番での演奏をする前に、まずは、演奏する曲を“仕込み”ます。ここでの仕込みとは勿論、練習することも含まれますが、練習するより前に“楽曲の全体像を把握”することが大事だと私は思います。
私は曲を練習することよりも曲の全体像、構成を理解することが演奏する上で一番重要だと思っております。
なので、正直シンプルな8beatが多い曲とかではドラムセットに座っての練習は殆ど行いません。
それよりも楽曲の構成を理解してどのようなアプローチをすれば良いのか“イメージトレーニング”をします。
このやり方は電車に乗りながらやイヤホンで曲を聴きながらでもできるのでオススメです。
ちなみに、ドラマーは「ドラム譜」が送られてくることは稀で、ほとんどは歌のメロディー譜かコード譜なので、フレーズは自分で作らなければならないことがほとんどです(中にはキチンとドラム譜で送って頂ける仕事もありますが)。なので、楽器に座るより先に自分がどう叩くかをイメージしておくことが非常に大事になります。
この時に、リハーサルがどのように進んで行くかを想像しておくことがとても大事です。
これはジャンルによっても違うのですが、クラシック系の譜面ベースで進めていくリハーサルは“小節番号”や“練習番号”をしっかり認識していくことが大事になります。
逆にポップスやロックのリハーサルでは“Aメロ”や“サビ”と表現されることが多いので、どこのメロディーが“Aメロ”と呼ばれるであろうという可能性を考えて譜面に記載しておくことが大事になります(既に曲を暗譜してしまっており頭の中でスグに判断できればそれで構いません)。
リハーサルで一番大事になるのはメンバーとの“話題共有”になります。ここでの話題とは“今どこのフレーズを弾いているか”や“これからどこのフレーズを確認しよう”という認識を共有することです。
リハーサルは時間との勝負になります。
よく勘違いされがちですが、リハーサルは個人練習の時間ではないのです。
人にもよるとは思うのですが、私達ミュージシャンは基本的にリハーサルをほとんど行いません。なぜかと言うと私達にとってリハーサルとは“個人の演奏ができた上でのアンサンブル確認”という意味合いなので、それぞれがしっかり演奏できていればリハーサルは特に必要ないのです(舞台仕掛けがあったり、ダンサー等のメンバーが大所帯になるコンサートツアーでは1ヶ月に渡りリハーサルを行い、演出等を綿密に確認をする場合もあります)。
勿論、音を出してみないと解らないことはあるので実験的な要素も含まれる時がありますが、それでもほとんどは個人の演奏技術がしっかりできているのが当たり前で、「次、“A2”から始めましょう」と言う号令にしっかりついていけるか(話題が一致して“A2”がどこだか判っているか)が大事です。フレーズが叩けるかどうかも大事ですが、譜面がキチンと自分の中での“楽曲の地図”になっているかどうかを確認してみましょう。
さて、次は実際に“アンサンブル”する時の極意です。アンサンブルにおいて最も重要なのは『周りの音を聴くこと』です。
この、周りの演奏を聴くことは自分の演奏がしっかりできている、あるいはパッと対応できることが前提条件にもなってきます。
演奏の土台を支えるドラムと言うパートは野球で言うなればキャッチャーの役割、バンド全体を見渡さなければならないのです。
よくドラムはリズムキープの要と言われますが、それだけではなくダイナミクス(音量の大きさ)なども非常に重要となってくるのでメンバーを常に観察していられるように余裕のあるプレーを心がけたいですね。
そして、リハーサルにおいて私が重要視しているのは“今誰が主役なのか”をハッキリさせることです。
基本的にボーカルが居れば大半の主役はボーカルでしょう。
しかし、ボーカルが居ない場合はその都度主役の楽器が変わります。
また、ギターソロやイントロ等はギターだったりキーボードが主役になっていることも多いですよね。
この時に大事なのは“大きい音を出すのが難しい楽器を楽に演奏させる”ことです。
私は仕事柄よくヴァイオリンなどの弦楽器と共演することが多いです。
さて、比べてみてください。
ヴァイオリンとドラムやピアノ、それぞれ音が大きかったり音を大きく出すのが楽な楽器は何でしょう?
間違いなくドラムですよね。
ピアノも楽器自体が大きいのである程度大きな音を出すことができます。でも、ヴァイオリンは大きい音にも限界があります。
このような、いくらアンプを使っても楽器個体の音量差がある楽器とアンサンブルする時はドラムは大きい音を出さないように演奏しないと、そもそもアンサンブルが成り立ちません。
ロックバンドも同様です。ギターやベースとプレーしていても全員が大きい音を出してしまうとスタジオ内で音が飽和してしまい何も聴こえなくなってしまいます。
これは、ライヴでのモニター(各楽器の音を返してもらうスピーカー)要望も同じで「ギターの音を(聴こえないから)上げてください」と伝えるだけでなく、まず自分の音量を下げることから始めてみてください。ドラムは一瞬にしてアンサンブルを破壊してしまう力を持っています。
気持ちが良いからと言ってバシバシ叩いてしまうと音楽として成り立ちません。
(写真:アクリルの遮音板を使用したドラムセット)
先日、ライヴ収録の仕事があったのですが音量にまつわるので少しだけ。
「遮音板」と言う音を分離させる衝立ですね。テレビ番組でもよく見るかもしれません。
コレはドラムの音が他の楽器のマイクに入らないようにしながら、ドラムの姿は見えるという優れもの。
持っていくとエンジニアさんからは大変好評頂きます。このように、演奏技術だけではどうにもならない所は楽器や機材の力にも頼ったりして良い作品を作っていきます。
しかし、まず確認すべきは自分の演奏技術です。周りを気遣えるような音量コントロールができる(特に小さい音でしっかりコントロールできる)ドラマーを目指しましょう。
最後に、ドラムはステージの花形。どのように見えているかを意識して楽器をセッティングしたりプレーしたりする気持ちを持ちましょう。
(写真:ドラムセットを組む前のホール)
私たちが演奏する場所はホールだったりレコーディングスタジオだったりするのですが、基本的にはドラムセットは置いていないので自分の楽器を持っていきます。車に載せて運び、バンドメンバーより1時間先に入って準備して、1時間かけて片付けてメンバーより遅く帰るのがドラマーの宿命・・・勿論、ギャラは同じ!笑
私もドラムを始めた頃はスティック2本しか持っていませんでした。けれども今は、自分の楽器を1から組み立てて演奏するのがプロならではの醍醐味だと思っています。正直、慣れてきてしまうと楽器を組むのが面倒くさいと思うことはあります。それでもステージの花形であるドラムは視覚的にもカッコよくなくてはならないと私は思います。
(写真:芸術鑑賞教室などでの小さいセット)
( 写真: パーティー演奏などで曲によって使用する楽器に特化したセット)
ドラムセットの形は人それぞれです。大きい人も居れば小さい人も居ます。私は演奏するジャンルによって使う楽器の大きさを決めています。
(写真:テレビ収録などで横に大きく広げた形のセット)
(写真:ジャズクラブなどで最低限小さくした形のセット)
ジャズクラブなど派手な演奏をそんなにしない時はタム1つのシンプルな楽器。逆に1回のコンサートで様々なジャンルを演奏しなければならない時はベースドラムが2つだったりシンバルを沢山用意したりして色々な音色をすぐに演奏できるようにしておきます。今、申し上げたように私のドラムセットは全て組むとかなりの大きさになります。ただ、それは全ての太鼓には音程があったり、シンバルもそれぞれ音程や音質が違うので、飾りで組んでいるワケではない、ということですね。
逆に、ワザと“飾り”にすることもあります。それは“見た目だけで人を立ち止まらせる力”がドラムにはあると思っているからです。具体的には、ショッピングモールなどの不特定多数の人が通る所ですね。私は以前ラゾーナ川崎やサンシャインシティ池袋など数百人規模のフリーライブを敢行したことがあり、その時にスタッフの方から「あのドラム、スゴイ」と“演奏をまだしていないのに立ち止まって開演を待っててくれる人が居る”と伝えて貰ったことがキッカケでした。確かに、普通に買い物をしていて巨大なドラムセットが置いてあったら気になりますよね。
(写真:大きな音量を出してはいけない会場での電子ドラムと使用したい楽器をハイブリッドさせたセット)
(写真:池袋サンシャインシティでのライヴの様子)
ただ、実は全ての楽器を叩いているワケではないのですがワザと端っこのシンバルを叩いたり大きく魅せることでお客さんを魅了することも可能です。ライヴは音だけでなく“見た目”もとても重要になってきます。
(写真:ミュージックビデオの撮影で全ての楽器をセットアップしたセット)
コレは楽器だけでなくフォームも同じです。コンパクトに叩くことはとても大事なのですが、要所要所で大きく魅せることで印象に多大なインパクトを与えることができます。人間は情報を手に入れる時に視覚が9割と言われています。普段スマートフォンで聴いている音楽に+して見た目もこだわってこそのエンターテイメント、特に楽器だけでカッコいいドラムの醍醐味だと思います。
いかがでしたか? 曲の練習や基礎練習も勿論重要ですが、アンサンブルをする際の気遣いと見た目も気にしてカッコいいドラムプレーヤーを目指しましょう。
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私は首都圏でドラム、チェロ、ヴァイオリンを教えています。
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