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JUN,2020
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【バイオリンの運弓とは?】上げ弓と下げ弓の違いやポイントを現役講師が解説

投稿者 :石内幹子

バイオリンの上げ弓と下げ弓とは?

今回は、バイオリンの「上げ弓」と「下げ弓」について見ていきたいと思います。そもそも「上げ弓」「下げ弓」とはなんなのでしょうか。「上げ弓」と「下げ弓」には、普段気付かない、奥深い違いが有ります。バイオリンの「上げ弓」と「下げ弓」の違いを理解することで、ワンランク上の演奏に役立てる事が出来ます。

バイオリンのボーイングの方向を指す

バイオリンのボーイングの方向のことを言います。弓先から弓元に向かうボーイングを「上げ弓(アップ)」、その逆に弓元から弓先に向かうボーイングを「下げ弓(ダウン)」と言います。「上げ弓」なのか「下げ弓」なのか、よくこんがらがってしまう人が多いのですが、腕の上げ下げで考えると簡単に理解できるでしょう。腕を下から上に上げれば「上げ弓」です。

上げ弓と下げ弓にどんな違いがあるのか?

バイオリンをボーイングした時、ただ「上げ下げ」しているように思えます。しかし「下げ弓」の方が、力強い音が出やすいのではないでしょうか?

アクセントを付けて弾いて見ましょう。弓元から「下げ弓」でアクセントを付けて弾くのは簡単に弾けますが、弓先から「上げ弓」で同じようにアクセントを付けて弾くのは少し大変です。
では今度は、デクレッシェンドをかけて弾いて見ましょう。弓元から「下げ弓」で音量を減衰して行くことは簡単ですが、逆に弓先から「上げ弓」で同じように弓元にかけて音量を減衰させるのは難しくなりますよね?

なぜこの違いが出るのか理解することが、ポイント!

なぜ、「上げ弓」と「下げ弓」ではこのような差が出来るのでしょうか。いちばん大きな理由は、「弓を持っている位置」です。弓元で弓を持ちますから、当然弓元がいちばんチカラを入れやすいわけです。さらに弓元は弓の太さ自体も最も太く、毛箱も付いている為、弓の重さ自体が重く出来ています。弓元から弓先に向かうにつれて、どんどん弓自体が細くなっていきますし、弓を持っているところからも離れていきます。

物理的に言うと、「力点」から「作用点」が離れて行ってしまう訳ですから、弓先に行くにつれて音が細くなっていくワケです。この様に、どうしても自然に「上げ弓」と「下げ弓」では違いが出てきます。この「違い」をしっかり理解しておく事が、バイオリンの演奏にはとても重要になってきます。

実践編!バイオリンの「上げ弓」「下げ弓」を演奏に取り入れてみよう!

クラシック 種類

バイオリンの「上げ弓」と「下げ弓」に、それぞれ特徴があることが分かりました。これは、弓を使って演奏する楽器に特有の特徴です。この特徴を活かして「上げ弓」「下げ弓」を自ら「選ぶ」ことで、音色はもちろん、演奏に様々な表情をつける事が可能になります!是非「上げ弓」と「下げ弓」を意図的に取り入れて見ましょう!

ボーイングを理解しよう!

「ボーイング」とは一般的に、弓を弦に当てて、上げ下げし音を出す「行動」そのものを指します。しかし演奏をする現場では「上げ弓」と「下げ弓」をどの音に、どのように割り当てるかを指します。「ボーイングを決める」とか、「ボーイングをつける」の様に使います。

ボーイングの選び方

では、ボーイングを付けていきましょう!今まで見てきた通り、基本的には「下げ弓」の方がより弓に力が入りやすく、力強い音が出しやすいので、アクセントを付けたい音や、曲のポイントになる音には「下げ弓」を割り振ると良いですね。

逆に、曲の最後でたっぷり音を伸ばして、スーッと自然に音が消え入る様にするためには、「下げ弓」で弓先に弾いていけば、ストレスなく綺麗に終わる事が出来ます。この様に、「上げ弓」「下げ弓」それぞれの特性を取り入れてボーイングを選んでいきましょう!

特性を活かしてボーイングに取り入れよう!

バイオリン名曲31選 / ドレミ楽譜出版社

実際に、ボッケリーニの「メヌエット」の楽譜を見て見ましょう。曲のはじめは「上げ弓」になっています。別に「下げ弓」からはじめても良いのですが、ここでは「強い音で始めたくない」と言う音楽的な意図を読み取る事が出来ます。

バイオリン名曲31選 / ドレミ楽譜出版社

おなじボッケリーニの「メヌエット」より、このフレーズはどうでしょうか?ここからは2小節目の最初に強いアクセントを付けて、その後の2音を上げ弓にする事で、軽やかな音を演奏したいと言う事が伺えます。「上げ弓」「下げ弓」の特性を活かし、うまく曲の表現に役立てているのが分かりますね。

バイオリンの「上げ弓」「下げ弓」を実践する上で知っておきたいこと。

弦楽器 特徴

バイオリンの「上げ弓」「下げ弓」は、ただ物理的に弓を上げ下げするだけではなく奥深いものですね。一見見落としがちですが、実はバイオリンの演奏にはとても重要な事がお分かり頂けたかと思います。ここでは、バイオリンの「上げ弓」「下げ弓」を実践する上で知っておきたいことを、少し違った視点から見ていきたいと思います。

ボーイングは誰が決めるのか?

ボッケリーニの「メヌエット」。この楽譜にはあらかじめ、いくつかのボーイングが印刷されています。多くの楽譜には、初めからこの様にボーイングが印刷されていますが、同じ曲でも、出版社や版によってボーイングが違う事があります。実は、作曲家自体がボーイングを指定していることはほとんど有りません。

ボッケリーニの「メヌエット」の楽譜ひとつでも、いろんな出版社が出版していたり、いろんな版がある理由は、それぞれの楽譜製作者が原曲を研究し、より音楽的に演奏するためにはどんなアーティキュレーションを付ければ良いか、それぞれ工夫を凝らしているからです。楽譜を買ってしまった後に、全部ボーイングを変えるのはとても大変です。バイオリンの「上げ弓」「下げ弓」の特性とボーイングについて理解していれば、自分の演奏したいスタイルにより近い楽譜を選ぶ事が出来ますね。楽譜を選ぶときにとても役立ちます。

ボーイングはオーケストラやパートの担当が決めることも

オーケストラをはじめ、ストリングスでのアンサンブルで、バイオリンの「上げ弓」「下げ弓」の方向が、全員綺麗にそろっているのを見た事がありますよね?その理由はもうお分かりですね?そう、ボーイングがバラバラでは、音色がバラバラになって音楽的に統制が取れなくなってしまうからです。ボーイングは各パートのトップが決めて、統一しています。しかし各オーケストラごとに見てみると、少しづつ違い、特徴があります。

基本的には、「上げ弓」「下げ弓」を決めるのに、決まりはありません。自由に決めてOK! 重要なのは「上げ弓」「下げ弓」に、どの様な意味を持たせているかと言うことです。いろいろ試してみましょう!

プロにチェックしてもらおう!そのメリットは?

バイオリンのボーイングは、是非プロにチェックしてもらうことをオススメします。バイオリンの「上げ弓」「下げ弓」は微妙な力加減が必要です。また、曲の中で「上げ弓」なのか「下げ弓」なのかボーイングを決める上で、自分ではどうしても確信が持てなくなってきます。また、楽譜に書いてあるボーイングがどうしても弾きにくい場合もあります。そんな時は自分に合うボーイングを当て直すことも出来ます。自分に合った「上げ弓」「下げ弓」を知るためにも、しっかりプロにチェックしてもらいましょう!

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最後に

ボーイングをしていれば、「上げ弓」も「下げ弓」も当たり前に交互に来ますが、それだけではなく、奥深いものです。その特性を知り演奏に取り入れる事で、ひと味もふた味も違う演奏ができるようになります!どんどんご自身の演奏に取り入れて、豊かな表現力のある演奏を手に入れましょう♫

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MUSIC LESSON LAB
投稿者
武蔵野音楽大学卒業。武蔵野音楽大学在学中、ステファン・グラッペリの音楽と出会いマヌーシュ・スウィングに傾倒。作曲、アレンジも手がけ、オーケストラや室内楽での活動のほか、ポップスからジャズまで幅広い分野で活躍。2013年に、フランスを代表するジャズ・ヴァイオリニスト、フローリン・ニクレスクをプロデューサー迎えてアルバム「Swimg from Paris」をパリでレコーディング、リリース。2015年〜2017渡仏。Didier Lockwood氏に師事。