ビオラから目が離せなくなる!有名曲&特徴を解説【前編】では、ビオラの歴史や役割、音色の特徴などを説明しました。後編では、ビオラの音色を存分に楽しめる有名曲をご紹介します。
もくじ
お待たせいたしました。それではここからは、ビオラの有名曲をご紹介していきます。
まずは、ビオラ協奏曲の先駆的な存在である、ウィリアム・ウォルトンの作品をご紹介します。
1929年にウォルトンによってビオラ協奏曲が作曲される頃までは、現在主流となるビオラによる協奏曲の体系がほとんど見当たらず、ヒンデミットの協奏作品やバルトークのビオラ協奏曲と並んで、ビオラ協奏曲の先駆けとして評価されています。
ウォルトンは旋律美より和声美を得意とする作曲家で、大きな編成の作曲で偉業を成し遂げました。彼はビオラ協奏曲以外にも、いくつもの交響曲とヴァイオリンやチェロの協奏曲などを遺しています。
プロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第1番を手本として作曲されたこの作品、20世紀前半を代表するビオラ奏者のライオネル・ターティスのために作曲されたとのことですが、当時としてはモダンすぎる作品だったため、初演は拒否され、ヒンデミットの手に託すことになりました。
19世紀に興ったロマン派音楽の要素を継承しつつも、ダイナミックかつ美しい旋律で、当時としてはそうとう異色の作品だったにちがいありません。
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトが「協奏交響曲」というジャンルに興味を持って作曲したといわれる作品です。協奏交響曲というのは複数の独奏楽器がオーケストラと共に曲を作り上げている楽曲。一般的な独奏協奏曲よりも、独奏楽器のオーケストラとの協調が重視されます。
『ヴァイオリンとビオラのための協奏交響曲変ホ長調』は、1779年にザルツブルグにて作曲した作品です。特徴的なのは、ビオラに特殊な調弦法である「スコルダトゥーラ」が要求されていること。通常よりも半音高い調弦で弦のテンションが増すことで、より力強い音になります。
ビオラ・ソナタは1曲も作らなかったモーツァルトですが、自身でもビオラを好んで弾いていて、その魅力には早くから気づいていたようです。この曲では、こうしたビオラの魅力を最大限に発揮することを主眼に置いたのかもしれません。
ウォルトンやバルトークと並んで、ビオラ独奏曲の新潮流を切り開いたパウル・ヒンデミットは、自身がビオラ奏者としても活躍していた筋金入りです。彼は、無伴奏とピアノ伴奏付きのもの合わせて7曲のビオラ・ソナタを作曲しています。それ以外にもビオラ協奏曲も4曲作曲しており、ビオラに対する熱意は飛びぬけていました。
1917年末から約1年間、第一次世界大戦に従軍。その翌年からビオラ・ソナタの作曲を開始しますが、ほかにもナチスの大会を風刺したパロディの作曲もしていました。このことから、彼の音楽は「退廃音楽」とされ演奏禁止に。ヒンデミット自身もドイツを追われ渡米する羽目になります。
こうしたこともあり、4曲ある無伴奏のビオラ・ソナタのうちの最後の作品(1937年作曲)は、苦渋に満ちた彼の心情が反映されたような内容です。同時に独奏楽器としてのビオラの特質もしっかりと活かされていて、彼が生み出した斬新な調性感を堪能することができます。
1943年に作曲されたバルトーク・ベーラの晩年最高傑作の1つです。バルトークはナターリヤ夫人とともにクーセビツキー財団を設立して、現代音楽の普及に寄与しましたが、この作品はナターリヤ夫人が亡くなったあと、彼女への追憶のために財団から依頼を受けて作曲したものです。
じつはこの依頼、彼の友人がうつ状態のバルトークを救うために手をまわして実現したもので、これがなければ、『ビオラと管弦楽のためのロマンス』をはじめ彼の晩年の素晴らしい作品は生まれてこなかっただろうといわれています。
ハンガリーからアメリカへ移住した当時、バルトークは健康状態の悪化、戦争による印税収入のストップから、創作意欲を完全に失い、ライフワークとしての民族音楽の研究も手がつかない状態でした。見かねた友人らがクーセビツキーに提案してこの依頼が実現したのです。
これが功をなして、創作意欲を取り戻したバルトークは、なんと2か月でこの作品を仕上げたとのこと。その後もボストンでの初演のリハーサルに立ち会うなど精力的な音楽活動を再開したようです。この曲では、旋律的な要素を重視する彼の作風に加え、大衆に理解しやすい明快さが伴っていてとても聴きやすいものとなっています。
もともとビオラ以外のために書かれた楽曲が、後にビオラ用に編曲されることがよくありますが、ヨハネス・ブラームスが遺した2つの『ビオラとピアノのためのソナタ』に関しても、最初はクラリネット用に作曲されたものでした。
ブラームス最後のソナタ作品でもあるこの楽曲は、ビオラ版でさらに彼の晩年の心情をよく表したものとなっています。
『ビオラとピアノのためのソナタ』は、情熱的な第1番のヘ短調と、安定した第2番変ホ長調と対照的なトーンの2曲から成っていて、情熱あふれる作曲家であるブラームスの集大成ともいえる作品。綿密な装飾が施された旋律や、主題パートの拍子・装飾を変えて後半に再登場させる手法など、ブラームスの得意とする作風が存分に取り入れられています。
また、ブラームスの作品1である『ピアノソナタ第1番』第2楽章の主題が引用されていて、ライフワークとしての作曲を完結させることを意図した壮大なものになっているのです。
いかがでしたでしょうか。ビオラの存在意義が再確認いただけたなら幸いです。お聴きいただいてわかるように、太く豊かな音色を持つビオラは、独奏でも十分にその魅力が発揮できます。
ビオラの音に耳が慣れてきたら、オーケストラでの役割を確認してみてください。オーケストラはビオラがいないとバランスが取れず、考えるよりずっと重要な役割を担っていることに気づくのではないでしょうか。
こうした需要を見越して、あえてビオラ奏者を目指すのもありかと思います。前面に出るよりも、裏方に徹することが好きな人には相性がよい楽器ですし、ハーモニーを職人的に形成したい方にもおすすめしたいです。
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