「ビオラ」という楽器の名前を聞いて、音や曲を思い浮かべられるでしょうか。人によっては外観を思い浮かべるのも怪しいかもしれませんね。もし「弦楽器のなかでビオラが一番好き!」という方がいれば、そうとう渋い感覚をお持ちです。
三谷幸喜の書いた「オケピ!」というミュージカルを観てみると、ビオラ奏者は名前を憶えてもらえない影の薄い存在として描かれていて、まさにビオラという楽器の立ち位置を表しています。
バイオリン・ソナタに関して、モーツァルトは43番まで、ベートーヴェンは10曲書いていますが、ビオラ・ソナタに関してはほとんどありません。また、ビオラ協奏曲に関しても、バイオリン協奏曲やチェロ協奏曲に比べて極端に少ないという現状があり、ビオラがいかにスポットライトが当たる機会の少ない楽器なのかがよくわかります。。
でもじつは、ビオラがメインに据えられている楽曲が少ないからといって、決して他に劣っているということではなく、むしろ縁の下の力持ちとして、なくてはならない楽器なのです。今回は、そんなビオラの魅力がわかってもらえるような有名曲を5曲選んでみました。
バイオリンでは味わえない深いコクを堪能してみてください。
もくじ
その昔、バイオリン属がまだ登場する前から、弓で弦を擦って演奏する楽器(擦弦楽器)があり、これらに対して「ビオラ( Viola:イタリア語。フランス語ではビオール:Viole)」という呼び名が使われていました。16世紀にバイオリン属が登場した際に、これを「ビオラ・ダ・ブラッチョ(腕のビオール)」。これ以外を「ビオラ・ダ・ガンバ(脚のビオール)」と呼び分けています。
バイオリン属は18世紀後半に、バイオリン、チェロ、コントラバス、ビオラの4種類に統一されることになりますが、それまでは規格があいまいで、現在よりも多様な種類のものが出回っていたようです。
弦楽四重奏の発達に伴い、室内楽にも欠かせない楽器となりましたが、独奏楽器として認められるようになったのは18世紀後半からです。さらに、本格的にビオラ主体の楽曲が作られるのは、20世紀に入ってバルトークやウォルトンが登場してからのことになります。
一般的には、ビオラとバイオリンを聞き分けたり見分けたりできる方は意外に少ないように思います。音はバイオリンよりもやや低く、見た目はバイオリンよりもひと回り大きいのがビオラの特徴です。
ビオラのボディの全長は、390mmくらいのものから、420mmを超えるものまでばらつきがありますが、バイオリンより50mmほど大きくなっています。弦や弓もそれぞれビオラ独自のものを使いますし、調律はバイオリンよりそれぞれ完全5度低く(チェロの1オクターヴ上)なっています。
高音でグイグイ引っ張るのはバイオリン奏者の役割で、味わい深い低音で演奏に厚みを加えるのはチェロ奏者の役割です。
ビオラ奏者はその中間的な音域を担当し、両者の橋渡し的な役割を担うことが多いです。また、弦楽器と管楽器の仲介役としての使命もあり、これがビオラが縁の下の力持ちといわれる所以です。ビオラは一般的に、独奏向きの楽器ではないので、主役になる機会は多くないかもしれませんが、オーケストラでのバランスを取り、ハーモニーを形成するのに重要な役割を担っているのです。
後編では、いよいよビオラの音色が存分に楽しめる有名曲を紹介します!
ビオラから目が離せなくなる!有名曲&特徴を解説【後編】