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NOV,2017
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【音楽トリビア】なぜ私たちは子どもの頃から「音楽」の授業を受けていたのか?

# 子どもの音楽レッスン

投稿者 :高橋一磨

小学生、中学生…と、5教科に加え、ごく自然に受けてきた「音楽」という授業。そもそもなぜ、私たちは幼少の頃から音楽を学んでいたのでしょうか? 東京音楽大学・音楽教育専攻卒業のピアノ講師「溝井花代子(みぞいかよこ)」さんにその理由を伺いました。

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キーワードは“戦前”と“戦後”

音楽 習う

さっそく、日本の義務教育に音楽が取り入れられている理由を聞いてみることに。

溝井さん:「音楽という授業が存在する理由、それは戦前と戦後で大きく意味が異なります。戦前の日本では国歌斉唱の機会が多く、国民の一体感を生み出すため、国学の一種として子どもたちに学ばせていた背景がありました」

歴史を遡ると、戦争に音楽を利用することが度々あったようで、例えばその昔、ドイツの『ヒトラー』は兵士たちの士気を高めるため『ベートーヴェン』の交響曲第9番を流しました。いうなれば、戦争のために音楽が必要だったというわけです。

溝井さん:「その一方、戦後になると、それまで使われてきた唱歌やクラシック音楽が高い生活水準を持つ人の“娯楽”となりつつありました。そして学校でも、子どもたちの協調性や社会性を育む目的で音楽教育を進めていったと聞いています」

友達と一緒にリコーダーを練習することも、「男子ちゃんと歌ってよ!」なんて女子に怒られながらクラス合唱に取り組むことも、全ては社会生活に必要な協調性・社会性に繋がるのだとか。確かに、国民として必要だから学んでいた戦前と、個々の能力を伸ばす“教育”として進められるようになった戦後では、その理由が大きく異なりますね。

音楽はあらゆる教科に通じる“総合科”である

音楽を習う

音楽は協調性や社会性を養うための教科。しかし、それ以外にもさまざまな効果があると溝井さんは話します。

溝井さん:「私自身、音楽の授業は全ての教科に通じる“総合科”であると思っています。例えば、授業で歌の詩に込められた意味を考える機会があったかと思いますが、それは国語の俳句・短歌と似ていますよね。有名な作曲家の生い立ちを調べることも、社会科の歴史みたいなもの。音楽自体が非常に柔軟性の高い教科であるため、あらゆる教科の“とっかかり”になることが多いんですよ」

……なるほど。確かに総合科といっても過言ではなさそうです。さらに溝井さんは続けます。

溝井さん:「あと、音楽の授業を通じて子どもの自己肯定感を高めることもできます。例えば、クラス合唱。周りの人の歌声を聴けるようになるためには、自分自身の歌声をよく聴いて、自分の実力を認めてからでなければ難しいんです。何かと比べられることが多いこのご時世、“自分を認める機会”がすごく減っていますから、そういった意味でも、音楽はとても重要な役割を果たす教科だと感じています」

「最近の子どもたちは自己肯定感が低い」という話を耳にする機会が増えていますが、音楽がそれを高めてくれるのは驚きです。このほか、リコーダーやピアニカなどの楽器を“練習するプロセス”や、「弾けるようになった!」という“達成感”が得られるのも、この教科ならではのメリットだといいます。

もし音楽の授業がなかったら……

音楽 成長

最後に、ひとつだけ疑問が浮かびました。それは、もし音楽の授業自体が存在しなかったら“協調性に欠け、心の貧しい大人に育ってしまうのか?”ということです。これだけ重要な役割のある教科ですから、もしそれがなかったら……!?

溝井さん:「それに関して、私は“ならない”と思います。音楽を教育に取り入れていない国はたくさんありますが、そこに住む子どもたちの心は決して貧しくないはず。なぜなら、海外ではお祝い事があるとみんなで歌って踊り、喜びを共有するために音楽を利用しているからです。日常的に音楽とふれあう機会が多いからこそ、何かを達成する喜びや自分を好きになる気持ち、人の良いところを見つける能力を自然と身につけられるのでしょう」

日常的に歌って踊る文化が濃い地域といえば、日本では沖縄県が有名。沖縄の人たちは、同じ音楽の義務教育を受けているとはいえ、本土に住む私たちよりも感受性や心の豊かさを強く感じるのは筆者だけでしょうか。

いずれにせよ、授業の有無によって子どもたちの成長が左右されることはなく、それよりも文化や習慣、環境に依存することがよくわかりました。

今回のまとめ

楽器を習う メリット

筆者は音楽を聴くのも、見るのも、作るのも好きな人間のひとりです。その一方、「学校で音楽を習う必要なんてある?」と疑問にも思っていましたが、今回のインタビューを通じてその考えが覆されました。

“灯台下暗し”ということわざがあるように、身近すぎるものだからこそ、その価値や必要性に気づけなかったのかもしれません。改めて音楽の素晴らしさを感じた、とても有意義なインタビューでした。歌ったり楽器を演奏することは、日常の何気ないシーンでも行うことですが、いろいろな“いいこと”が含まれているのですね。

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ラーメンと牛丼ばかり食べてるライターと一眼エンジョイ勢。Twitter→@a_posh_man