楽器初心者にまず「ドラム」をオススメしたい6つの理由
投稿者 :沼田翼
こんにちは。EYS音楽教室ドラム/チェロ/ヴァイオリン講師の沼田です。
今回は、ドラマーである筆者が少しでもドラムに興味を持って頂いた皆さんにドラムという楽器を是非お勧めしたい理由をお話しします。
ドラムは楽器が大きかったり手足をバラバラに動かしたりしなければならないというイメージがあり、ハードルが高いものと思われてしまっていることが多いのですが、実はそんなことはなく皆さんが思っているよりもずっと手軽に始められる楽器であることを知って頂ければ嬉しいです。
もくじ
ドラムは打楽器なのでギターやベースなど他の楽器との“音程”による兼ね合いが殆どありません(厳密には太鼓ごとに音程は存在するのですが)。なのでコード(さまざまな和音)を覚えたり、対旋律(凄く簡単に言ってしまうとハモリのようなもう一つのメロディー)を気にしながら演奏しなければならないということはなく、初心者でも始めやすい楽器といえます。
ただ一つだけ。
リズムを止めないようにすることが大事なんです。よく、リズムキープすることがドラムの役割と言われますが、ドラマー目線からするとそれはドラムに責任転嫁しすぎなんですね笑
演奏者が人間である以上、演奏者それぞれのリズム感はあります。
ただ、ドラムは楽器の中でリズムを“強調”する事ができるので他の楽器よりリズムの責任が大きくなってしまうということはあります。
そして、ドラムは実は殆どが繰り返す演奏(同じフレーズが殆ど)によって成り立っているので、少しのフレーズを覚えてしまえばたくさん覚える必要が無い楽器なんです。
私がドラムを始めた大きな理由の一つがこれです。そう、ドラムという楽器は“叩けば音が出る”のです。しかも、狙う的が大きいんです。
これはつまりどういう事かというと“ミスをする”という概念が殆どないんです!他の楽器は音程というものがあるので音を出す+音程をコントロールした上でフレーズを作るワケですね。
ただ、ドラムにおいては”音程を作る”という行程がなくなるので叩いた瞬間の音でフレーズを作ることができるのです。
音程がある楽器は譜面通りの音を出さないと他の楽器と音がぶつかってしまい不協和音になり、それが“ミス”と捉えられてしまいます。
ではドラムはどうでしょうか?もちろんドラムにも譜面はありますが、叩く場所が変わってしまったからといって他の楽器と音がぶつかる心配はありません。
先ほどドラムにも厳密には音程が存在するとお話ししましたが、あくまで打撃音の音程なので音質が違う為に気にならないことが殆どです。
むしろ、私のレッスンではその“叩き間違え”を逆手に取って“叩き変える”ことによっていくつもフレーズを作るようなデメリットをメリットに変えるようなこともしております。
また、ドラムはたくさんシンバルや太鼓が付いておりますが全てを叩く必要はなく簡単な8ビートであればスグに叩くことができます。
私の体験レッスンでもたった20分で皆さん8ビートが叩けるようになられてます。
よく「ドラムって手足がバラバラに動いて難しそうだよね」と言われる事がありますが、実は手足がバラバラに動いているワケではなくて同時に叩いているか休んでいるかだけなのです。
簡単に言ってしまえば右手を叩いている間に右足が一緒になるのか左手が一緒になるのか、、、この辺りは言葉だけだと難しく感じてしまいそうなので、是非レッスンにいらして下さい。
ドラムの演奏は思っているより複雑ではないことをお約束します!
前章でも少し触れましたが、リズム感は鍛えることができます。
そもそも、音楽とは言語能力と同じで触れれば触れるほど技術向上するのです。小さな子供達が文字は読めないけどお話はできるのと同じですね。
運動もトレーニングすればドンドン身体が思い通りに動いてくるのと同じで、“リズム感”も鍛えることができます。
もっと言ってしまえば“絶対音感”も大人になってからトレーニングすれば習得することは可能です。
ドラムは特に音程を意識する必要がない為にリズムを無意識に集中して取り組める楽器なので、特に意識をしなくても自然とリズム感は付いていきます。
ただ、それにプラスαしてドラムに取り組む事によって“リズム”に対してとても自信がつくようになります。このリズム感というのはドラムだけでなく他の楽器を扱う時にも大きな財産になるのです。
では、“リズム感が良い”とはどういう事でしょうか?
私は
・自分の身体をコントロールする力
・周りの音を聴く力
だと思います。
まず、自分の力をコントロールすることによって狙ったタイミングで音を出すことができ、周りの音を聴くことによって狙うタイミングを瞬時に判断することができるので、自分の音だけでなくバンド全体のリズムコントロールをすることができます。
私自身、セッションをしている時に「少しピアノが早いな、、、」など感じることがあったりします。
この感覚は「周りの音を聴く力」ですね。
ライヴにおいて走ったりモタったりという表現をされます。
しかし、人間は感情を持っている生き物なので私は走ったりモタったりするのもライヴの醍醐味かと思います。
しかし、それが細かいパッセージの多い難曲だったりするといつものテンポより早くなってしまうと演奏するのが困難になりアンサンブルがズレてしまう危険性があります。
そのような時にピアノが弾いているテンポより少し遅めのリズムを出すことによってバンド全体のテンポ感をコントロールして丁寧な演奏を可能にし、コンサートを成功に導くことができるのもリズム/テンポをコントロールするドラマーの醍醐味だと思います。
よく「ドラムって疲れそうだよね」「ドラムって大変そうだよね」という言葉を頂くことがあります。
おそらく、頭を振って叩いたり腕を大きく振り上げて叩くイメージが強い楽器なのでドラムは筋肉や体力がないと叩けないと思われてしまうのではないかなと思います。
しかし、実際はそんなことはなく真逆なんです。
簡単な表現になってしまいますがバスケットボールをイメージして頂けるとわかりやすいかと思います。
というのはドラム(太鼓)はスティックで叩いて音を出すのですが、発音した直後にスティックが“跳ね返ってくる”んですね。
世の中にある楽器で発音した後に元の位置まで戻ってくる楽器はドラムしか無いんです(ピアノも一応打鍵楽器なので戻ってきますね)。例えば、金管楽器など吹く楽器は息を吹き込んだらまた吸って吹き込んで…の繰り返しになりますよね。
弦楽器も弓を下に下ろしたら自分の力で上に上げないと同じ位置には戻りません。
バスケットボールをドリブルする時、ボールは地面に当たって跳ね返ってくるので力を使わないですよね。
ドラムも同じで、上から叩くことを練習するのではなく、打面から跳ね返ってきたスティックをキャッチする練習をすると飛躍的に楽器のコントロール力が上がるんです!
ドラムをいかに上手に演奏するかは筋肉の力に頼って叩くのではなく、跳ね返ってくる“リバウンド”を自由にキャッチしてコントロールすることによって次のフレーズを楽に叩けるかどうかということに繋がってきます。
ドラムを始めるに当たって家にドラムが無いといけないのか、何を用意すれば良いのか、、、など相談を受けることもよくあります。
しかし、実はドラムを始める為に用意しなければいけない物は殆どないのです!
勿論、叩く物が何かあるに越した事はありませんが特別何かを買わなければならないということはないのです。
それよりも重要なのがイメージトレーニングになります。
もっと砕けた言い方をすると、いわゆる“エアドラム”ですね。
確かに前章で述べたようにドラムはリバウンドを活かす楽器なので練習パッドなどでトレーニングするのもひとつの手ですが、筆者は太ももを練習パッドに見立てて練習したりしてました(叩き過ぎて痛めないようにだけ気をつけましたが笑)。
(写真)左:ドラムパッドで練習 右:腿を叩いて練習
また、そのリバウンドを得る練習と別軸で取り組みたいのがエアドラム練習なのです。これは何かと言いますと右手と左手を別に動かす練習や、叩く位置を変える練習に当たります。
ドラムはタムやシンバルなど、様々な場所に楽器が配置してあります。
この配置してある所に腕を少し伸ばしたりするイメージを持つことはとても大事になってきます。
そして、このエアドラムと並行して行って頂きたいのが“口ドラム”です!この“口ドラム”実はかなり効果的なトレーニングなんです。
“口ドラム”とは、フレーズを口に出して歌う事ですね。
例えばベースドラムを“ド”、ハイハットを“チ”、スネアドラムを“タ”と擬音にして歌ってあげます。8beatなら“ドチタチ ドチタチ”の要領ですね。
この時のポイントは自分の聞こえたドラムの音をより“リアル”に発音することです。例えば、ハイハットの“チ”もベースドラムと一緒に演奏すると音が重なるので“ヂ”のように音が濁るハズなんです。
このように聞こえた音をかなり細かいニュアンスで発音することがポイントです。
人間の身体とは本当に不思議なもので口で歌えるフレーズというのは実際に楽器をプレーするとできてしまうものなんです。
私の家にもドラムセットはありません(この日本という国でドラムセットを自宅に所有しているという方の方が少ないでしょう)。なので、私はリバウンドトレーニングとエアドラム(口ドラム)を並行して行い演奏する曲の練習をしていました。
それだけでかなり色々な曲が叩けるようになりました。
ドラムを演奏する上で皆さんがよく悩みがちなのが、次にどの太鼓を叩けば良いのか“手順”が分からなくなってしまうことなのですが、このお悩みもエアドラムで十分解決することができますのでぜひ試してみて下さい。
最後に、ドラムという楽器は究極のアコースティック(電気を必要としない)楽器なのです。
演奏しようと思えば、叩く場所も大きいしミスというのが殆ど無い楽器なので簡単に演奏できてしまいます。
ただ、極めようと思えばとても奥が深いのがドラムという楽器です。セッティングも人によって違いますし、何しろチューニングに至っては物凄く奥が深く“ドラムテック/ドラムチューナー”というドラムチューニング専門の方々がいらっしゃる世界なんです。
ドラムはプラスチックのヘッド(打面)がネジによって均等に張られているのですが、このバランスを取るのがもの凄く難しいのです(この話をし始めるとどこまでも書けてしまうのでまたの機会にしましょう笑)。
また、ジャンルによって叩き方がまるで違うのも奥深い理由のひとつです。
ドラムのイメージが強いロックやポップスでは8beat(エイトビート)と呼ばれるベースドラム、スネアドラム、ハイハットの三つの楽器を主体として叩きますが、ジャズでは逆にベースドラムは殆ど使われずにライドシンバルとハイハットの2つを主体として演奏しますし、拍の取り方も変わってきます。
そして、楽器それぞれをとっても奥が深く材質や大きさが違ってきます。
太鼓も小さいものは6インチから、ベースドラムの大きいのは26インチなので子供の補助輪サイズから大人の自転車タイヤサイズまで非常に幅広く、また胴の深さも違います。
(写真)様々な大きさの太鼓
コレは時代によって求められてきたサウンドによって変わってきておりまして、80年代のように余韻が長い歌謡曲などの時代は胴が深く残響音が長い楽器が求められ、現代のように音数が多い音楽になってくると余韻が邪魔になってくるので胴が浅くなりレスポンスの早い楽器が求められてきました。
シンバルに至っても大きさや厚さでサウンドが随分異なってきます。
ジャズのように静かなサウンドは薄いものが用いられますが、ロックなど大きなサウンドが欲しい場合は分厚く、耐久性のあるものが求められます。
こだわりが深いのはドラムスティックやフットペダルも同じです。スティックも材質や重心、長さが違うものがかなりの種類ありますしフットペダルもスプリングの強さやビーター(打面を叩くハンマー)の角度により踏み心地がとても変わります。 …この辺りの話も止まらなくなってしまうので、また今度にしましょう。
テレビや雑誌などでも様々なドラマーの楽器を目にすることがあると思いますが、その時にどのような楽器を使っているのかや、なぜこのセッティングにしているのかを考えるのもとても楽しいです。
特にドラムは世界共通ですので海外のドラマーさんの楽器を見てみるのもとても面白いです。
一度“テリー・ボジオ”氏のドラムセットを見てみるのをお勧めします。
きっと空いた口が閉じなくなることをお約束します笑
それくらいドラムを極めると個性が随所に出てきますし、奥が深いのです。
いかがでしたでしょうか?
今回は初心者にドラムをお勧めしたい理由をお話しさせて頂きました。
またレッスンでもドラムの歴史や奥深い事を色々とお話しできれば嬉しいです。