なんだかオシャレだけど、どこかとっつきにくい…そんなイメージを持たれがちなジャズ。
あまり身近な音楽ではないかもしれないけれど、きっかけさえあればきっと「面白い!」「かっこいい!」と思ってもらえるはず。
今回は初めてジャズを聴く方に向けて、おすすめなアルバムを「定番」「ロック/ポップス好きにおすすめ」「クラシックファンにおすすめ」「おしゃれな音楽を聴きたい人におすすめ」向けにご紹介します。
Spotifyなどのサブスクリプション・サービスでも聴くことができるので、ぜひ新しい音楽との出会いに活用してください!
もくじ
ピアニストのビル・エヴァンス(Bill Evans)が名門ジャズクラブ「ヴィレッジ・ヴァンガード」で演奏した至高のライヴ盤がこの『Waltz for Debby』。ピアノ、ベース、ドラムスとのトリオ(3人編成)で、抒情の極みとも言える演奏が繰り広げられます。
ライヴ盤なので演奏以外にも、お客さんの笑い声やグラスが触れ合う音、さらにはよ~く聴くと近くを走る地下鉄の音(!)なんかも入っていて臨場感もあります。
ジャズのピアノトリオといえば、まずこれを真っ先に挙げる人も多数。この音にじっくり浸るときっとジャズの良さが分かるはず!
累計セールスは1000万枚超!ジャズの枠を飛び越え、「20世紀が生んだ最も偉大なアルバム」のひとつにも数えられる傑作がこの『Kind of Blue』です。
マイルス・デイヴィス(Miles Davis)は“ジャズの帝王”と称されるトランペッターで、オーソドックスなスタイルから前衛的なスタイルまで、生涯にわたってジャズという音楽の可能性を追求し続けました。
現在では「ジャズ」と呼ばれる音楽の幅は節操なく広がり続けている感がありますが、マイルス・デイヴィスこそがジャズの幅を広げた張本人だと言われています。
ピアノの巨匠、オスカー・ピーターソン(Oscar Peterson)による当時の流行歌の超ご機嫌な演奏が聴けるアルバムが『We Get Requests』(邦題:プリーズ・リクエスト)です。
「酒とバラの日々」や「イパネマの娘」などスタンダード曲も豊富でジャズの格好良さを知るにはもってこいの一枚。とてつもなくテクニカルなピアノが楽しめる超名盤です。
ジャズサックス奏者スタン・ゲッツ(Stan Getz)と、ボサノヴァのギタリスト/歌手のジョアン・ジルベルト(Joao Gilberto)が共演した名盤『Getz / Gilberto』。
ヴォーカル入りなので聴きやすく、ジャズの入り口のみならずボサノヴァの入り口としてもおすすめの一枚ですが、この柔らかな印象の音楽とは裏腹に互いに音楽に対するこだわりの強い二人の共演には確執も生じ、ブラジル人のジョアンがスタンに対して言ったポルトガル語の悪口を、通訳に入ったアントニオ・カルロス・ジョビン(Antonio Carlos Jobim)が「あなたに会えて光栄です、と言っています」と英語で伝えたというエピソードも…。
マイルス・デイヴィスのバンドで活躍したアルトサックス奏者のキャノンボール・アダレイ(Cannonball Adderley)の代表作がこの『Somethin’ Else』です。“キャノンボール”というのはあだ名で、大食漢(cannibal)に由来しています。
1曲目は渋いイントロで始まりますが、50秒を過ぎてテーマが演奏されると「この曲知ってる!」となる方も多いのではないでしょうか。この「Autumn Leaves」(邦題:枯葉)はジャズの定番中の定番で、多くのミュージシャンによって演奏されていますが、もともとはフランスのシャンソンというジャンルの古い曲です。
愛用のフレットレスベースでエレクトリック・ベースに革命を起こし、若くして亡くなった天才ベーシストがこのジャコ・パストリアス(Jaco Pastorius)です。
ベーシストなら誰もが憧れる曲「Portrait of Tracy」や超高速で演奏されるジャズ・スタンダード「Donna Lee」などなど、アルバムを通してジャコの超絶テクと高い音楽性が楽しめる名盤です。
惜しくも2021年2月にこの世を去ってしまった名ピアニストのチック・コリア(Chick Corea)がリターン・トゥ・フォーエヴァー(Return to Forever)というバンドを率いて録音したジャズ・フュージョンの金字塔が『Light as a Feather』です。フローラ・プリン(Flora Purim)というブラジル出身の女性歌手が参加していて、なんとも味のある歌声を聴かせてくれます。
アランフェス協奏曲の引用で始まる6曲目の「Spain」はフュージョン屈指の名曲。必聴です!
日本が生んだ天才ピアニスト、上原ひろみの衝撃のデビュー作『Another Mind』。彼女のロックやプログレも丸呑みした凄まじい演奏は海外にもたくさんのファンがいます(海外では「Hiromi」名義で活動)。
ラストの「The Tom and Jerry Show」はラグタイム風ストライド・ピアノが印象的なソロ演奏で、ピアニストならチャレンジしたくなる名演です。
アルメニアから現れた稀代のピアニスト/作曲家ティグラン・ハマシアン(Tigran Hamasyan)が提示する新しい時代のジャズ。
ジャズ、プログレ、ロック、エレクトロニカ、そしてアルメニア民族音楽などがバランスよく配合された衝撃作です。
2003年のグラミー賞最優秀アルバム賞など8部門で受賞し、話題を独占したモンスター級のアルバム。
当時若干22歳の新人とは思えないノラ・ジョーンズ(Norah Jones)の成熟した作曲センスやピアノ、声がリラックスの極致へと誘います。
ノラ・ジョーンズは生まれも育ちもアメリカ合衆国ですが、彼女の父親はインドの伝説的なシタール奏者のラヴィ・シャンカール(Ravi Shankar)です。
イギリスの男声カルテットのヒリヤード・アンサンブル(The Hilliard Ensemble)によるグレゴリア聖歌と、北欧の名サックス奏者ヤン・ガルバレク(Yan Garbarek)の即興演奏によるコラボレーションアルバムです。
天上の音楽かと思うほど美しい歌唱と、ヤン・ガルバレクのどこまでも透き通ったサックスが素晴らしい。
名ピアニストのキース・ジャレット(Keith Jarrett)が突然の慢性疲労症候群という病気で一時的に活動を休止し、2年間ほどの療養の末に発表したソロピアノの作品がこの「The Melody at Night, with You」です。ピアノの音を一音一音しっかりと確かめながら、次第に深く深く没入していく圧巻の演奏です。
ブラジルの個性的な作風で知られるギタリスト/作曲家のギンガ(Guinga)と、美しい音色に定評のあるイタリアのクラリネット奏者ガブリエーレ・ミラバッシ(Gabriele Mirabassi)の共演作。全編ガットギターとクラリネットのみ。
ギンガ作曲の美しくも奇妙な楽曲と、表現力豊かなジャズクラリネットを存分に楽しめる室内楽ジャズの名盤です。
クラシック音楽そのものを即興演奏のテーマにする試みは1960年頃から盛んに行われるようになりました。フランスのピアニストのジャック・ルーシェ(Jacques Loussier)や、ルーマニア出身のオイゲン・キケロ(Eugen Cicero)はその先駆者です。
この「Rococo Jazz」はオイゲン・キケロの1965年のデビュー作で、バッハやモーツァルトのジャズアップ(ジャズ化)の大名盤です。
挾間美帆(はざまみほ)は米ダウンビート誌の「ジャズの未来を担う25人」にも選出された、今注目の日本人ジャズ作曲家です。国立音楽大学でクラシック作曲を専攻し、その後マンハッタン音楽院大学院でジャズの作曲を学んだという経歴の持ち主で、国内外のさまざまなオーケストラ、ラージアンサンブル、ビッグバンドなどの指揮で活躍。即興だけに頼らない緻密な作編曲は現代のジャズの新しい潮流のひとつになっています。
アメリカ合衆国のピアニスト/プロデューサー、ロバート・グラスパー(Robert Glasper)は進化を続ける現代のジャズを語る上で外せない重要人物です。音楽シーンの主流であるR&Bやヒップホップを本格的にジャズに取り入れ、21世紀の新しいジャズの形を提示。2012年のアルバム『Black Radio』はグラミー賞も受賞するなど高く評価されています。
なんとも可愛い名前のイギリス・マンチェスター発のピアノトリオ、ゴーゴー・ペンギン(GoGo Penguin)。
オリジナル曲をメインに演奏しており、ヨーロッパのジャズらしい抒情性がありつつもサウンドはエレクトロ・ミュージックなどの影響を受けている未来志向のバンドです。アコースティックな楽器とエレクトロ成分の比重もちょうど良く、2012年の結成以降現代的なジャズの最前線を突っ走っています。
ニコラ・コンテ(Nicola Conte)はイタリアのジャズミュージシャン/プロデューサー。50年代以降のモダン・ジャズへの深い造詣をバックグラウンドに、現代的でスタイリッシュな独自の感性でジャズを再構築。クラブジャズのカリスマとして圧倒的な人気を誇っています。
ハウスミュージックやEDM(エレクトロ・ダンス・ミュージック)にレトロなスウィングジャズの要素を加え、2010年代にヨーロッパを中心にブームとなった「エレクトロ・スウィング」というジャンルを代表するバンドがこのキャラヴァン・パレス(Caravan Palace)。音楽はもちろん、MVなどで見せるレトロフューチャーなビジュアルも含めた世界観も魅力的です。
1960年代、ブラジルではジャズサンバという儚いムーヴメントがありました。そのシーンの中心にいたのがピアニストのテノーリオ・ジュニオール(Tenorio Jr.)。悲劇的な死を遂げた彼が遺した唯一のリーダーアルバムがこの『Embalo』(1964年)で、2000年代以降のクラブジャズにも通じる洒落たサウンドは今聴いても新鮮です。