みなさん、こんにちは!2nd Community(旧:EYS-STYLE/ブランドとしてはEYSの名前を引き続き使用)広報です。これから新しい楽器をはじめようと思っている方はもちろん、すでに何かの楽器を学んでいる&演奏している方も!新しい楽器を買おうとする前に、ぜひEYSオリジナル楽器を知っていただきたいと思います。
EYSオリジナル楽器は、どれも楽器製作のプロフェッショナル達が、素材の選定から楽器の仕様、そして製作工程の一つひとつにこだわり抜いた一品です。
シリーズ『EYSオリジナル楽器STORY』では、オリジナル楽器こだわりの仕様とともに、製作のキーマンとなる楽器製作のプロフェッショナルたちの想いをご紹介します。ものづくりに真摯に向き合う彼らのストーリーを知ることで、津軽三味線のイメージが広がっていったら嬉しいです。
今回は、EYSオリジナル津軽三味線のご紹介です。「いつまでもこのひと棹を愛用してほしい」という一人の職人さんの情熱から生まれた逸品です。
そのパワフルな音と圧倒的な存在感で、見る人を惹きつける津軽三味線。三味線の種類は大きく分けると3種類(細棹、中棹、太棹)ありますが、津軽三味線は「太棹」に分類されます。叩きつけるような弾き方の流派が多いのも津軽三味線の特徴で、その昔、屋外で弾くことも多かったことから、多くの人に音が響き渡るよう大きな音を出す必要があったそうです。「弾く」だけでなく「叩く」。その太い棹と大きな胴から生み出される迫力のある音色は、北の大地の厳しい寒さにも負けない、人々の真の強さを感じさせてくれます。
また、和楽器でありながら多彩な楽器とセッションが行われているのも津軽三味線の面白いところ。ピアノのほか、ギターやヴァイオリンなどの弦楽器、ロックバンドやオーケストラのパートなど、さらにはオペラとのコラボも!ジャンルを問わずセッションしてみたくなる、津軽三味線特有の迫力の音と腹の底に響く深みのある音色が、人気の高い理由なのかもしれません。
EYSでは、一人で演奏を楽しむことはもちろんですが、合奏したり、歌と合わせたり、たくさんの人と一緒に楽しむ音楽シーンも多くのみなさんに体験していただきたいと思っています。津軽三味線でもぜひ挑戦してその魅力を味わってください!
「音楽教室」のEYSが、オリジナル楽器の製作にこだわる理由は、これまでのブログでもご紹介をさせていただいた通り。少し振り返りますと、実はEYSには楽器製作販売事業部があり、オリジナル楽器の製作や、楽器の価格比較、販売サイト「オトリエ」の運営を行っています。
世の中には様々なメーカーの楽器が販売されていますが、EYSは「楽器の値段は掛け値なしの正味の価値に合っていない」と考えています。つまり、楽器本来の素材・加工技術・品質からすると、もっと安い値段で買うことができるはずということです。
では楽器の値段はどのように決まっているのか?
それには、ブランド名やアンティーク的価値、そして装飾やデザインという要素が大きく関係しています。また、販売経路によってはその間で発生する手数料等でも値段が変わります。
でも、これらの要素は楽器の本質的な価値とは関係がありません。例えば、同じ工場で作られた全く同じ楽器であれば、ブランド名が刻印されているからと言って、音や操作性は何も変わりませんよね。
EYSではこれらの要素ではなく「素材と部品」と「加工技術」こそが、楽器本来の価値であると考えています。
楽器製作販売事業部では、この品質と価格の関係を明確にし、価値に見合った適正価格で楽器を提供することを目標に、楽器製作に取り組んでいるのです。
詳しくはこちらのエレキギター誕生記事を御覧ください!↓
EYS-STYLEプロデュース オリジナルエレキギター登場!!
前述のとおり、「会員さんをはじめ、多くの人に価値に見合った適正価格で楽器を提供したい」と考えていたEYSですが、ある日、東亜楽器株式会社さんから思いもよらず、素敵なお話をいただいたのです。
「当社で新しいコンセプトの津軽三味線を開発しました。ぜひEYSさんのオリジナル楽器に加えてもらえないでしょうか」
驚いたスタッフは、すぐさま東亜楽器さんを訪ねました。
東亜楽器株式会社は、三味線や琴など和楽器製品を取り扱う製造卸問屋さんです。静岡市に本社と工房があり、台湾には三味線工場、中国南京には三味線と琴、タイでは三味線用の皮の製造工場を持つ会社です。迎えてくれた増田専務が見せてくれたのは、美しい津軽三味線でした。専務は言います。「この三味線は、いつまでも使い続けることができる三味線なのです」。
棹に糸を押し付けこすりながら弾く三味線は、使っているうちに棹の部分がすり減り、やがて使えなくなる…つまり三味線は、消耗品としての側面を持つ楽器だといえます。そこで、『消耗品としてではなく、いつまでも使い続けることができるものを』と考えられたのがEYSオリジナル津軽三味線<遥遠>。使う度にすり減ってしまう棹の部分には堅い高級素材の『紫檀(したん)』を張り付けることでより強度を増すことができ、さらに棹の表面が摩耗したら、紫檀を張り替えることでより長く使い続けることができる、というものでした。
すり減り摩耗しやすい棹の部分には、唐木三大銘木の高級素材「紫檀」という堅い木材を張っています。面の強度だけでなく、音の質、見た目の高級感も格段にアップ。かんべり(すり減ってしまうこと)してしまっても、紫檀の部分だけを張り替えることができるため、半永久的に使用することが可能です。
胴の部分には、オリジナルの合成皮革を使用。耐久性に富み長く安心して扱うことができます。合皮に塗装を吹き付けその部分を最適な厚さまで磨いていくという、津軽三味線では昔から伝わる手法で作られています。
津軽三味線をより楽しむために欠かせない「東さわり」を標準装備しています。東さわりは、一番上の太い糸を(一番糸)を触れさせるための器具です。奏者の好みに応じて、自由にさわり(余韻)の音を調整することができます。
※さわり(余韻):糸の振動とともに発生する雑音成分の音。弦楽器だけでなく打楽器にもあります。主にアジア圏でかなでられる音楽にはさわりの音が多く用いられています。
糸は2013年度伝統的工芸品産業大賞準グランプリを受賞した、丸三ハシモト製の糸を使用しています。
糸巻は六角形の形に。初心者でも握り回しやすく、かつ角があることで調整の目安もつけやすい形を採用しています。
駒は津軽三味線に多く使われている竹駒を使用。自然素材である竹の繊維部分が音の伝わりを深め、魅力あるものにしてくれます。自然素材であるが故に、この細かな個体差が個性ともいわれることも。奏者ならではの音を作り出します。
下地からきちんと磨いているか否かで仕上がりが全く異なるという磨きの工程。東亜楽器では磨きに力を入れており、油砥石3000番まで研磨し、総仕上げに植物性の天然油と砥の粉で丹念に磨きだします。手間ひまをかけることで、本来の木が持つ深みのある艶を楽しめるようにしています。
「長く使い続けることができるクオリティの高い楽器を作る」ことは、EYSオリジナル楽器のコンセプトの一つ。ですが、メーカーとしては、新しい楽器を売らなければ事業は成り立ちません。長く使える楽器を作れば、新しい楽器は売れなくなってしまうのでは?楽器を作り卸すことを生業とする東亜楽器さんとして、どのように捉えていたのでしょうか。専務に聞きました。
「もちろん新しい三味線が売れたらメーカーとしては嬉しいです。しかし和楽器の奏者人口が減っている現状では、もっと多くの人に三味線(和楽器)の魅力を知ってもらうことが大切だと考えています。ギターやサックスに興味を抱くのと同じように、『やってみたい』と誰もが気軽に三味線を手に取れる環境と、その気持ちに応えられる好奇心をくすぐるような和楽器を作っていかないといけないと考えています。この津軽三味線は、同じ想いを持つ当社の職人と共に作り上げた楽器です」。
職人さんは言います。「津軽三味線は、構造上ほとんど無駄がなく作られた美しい楽器です。だからこそ、それ以上に洗練させ精度を上げていくにはどうすればよいのか、追求するにふさわしいものでもある」と。EYSオリジナル津軽三味線<遥遠>は、そんな職人さんたちの飽くなき挑戦心が生み出した逸品なのです。
「この使い続けることができる三味線というアイデアは、奏者にしてみれば、今までの弾き心地をキープしたまま、さらに自分の演奏技術を高めていけるというものです。棹を張り替える費用だけで弾き心地を良くできるのは、画期的なこと思うんです」。
棹に異なる素材を張り合わせることに違和感を抱く、という意見の職人さんもいるといいます。「それはそれでいいと思います。ただ自分が思うのは、良い楽器を使おうって思うのは一人ひとりが決めることであって、伝統や家元文化などが決めるものではないんです。ですからこれからも、面白いとか、いいな!と人の好奇心をくすぐれるようなものを職人として作っていくことが目標です」。伝統と継承の格式を重んじる世界へ一石を投じるものなのか!いや、三味線のイメージを超える新たな潮流を生み出すものなのか!この津軽三味線<遥遠>をぜひみなさんの手で試していただきたいと思います。
【取材こぼれ話】
この新しい津軽三味線を考えたのは、気難しく頑固な職人さんのイメージは全く無い、気さくでありつつも自分の軸をしっかり持った素敵な職人さんでした。10代の頃、昼間は庭師として木について学びながら、夜はDJとして好きな音楽に浸るという日々を過ごしていたという彼が、20歳でインドにわたり22歳で中国へ行くまでに訪れた国は、タイ、インドネシア、チベット、カンボジアなど全て「さわり」の音楽がある土地でした。そんな彼が東亜楽器で三味線という日本文化に触れた瞬間、「もっと知りたい!」と思ったのは、必然だったのかもしれません。