みなさん、こんにちは!2nd Community(旧:EYS-STYLE/ブランドとしてはEYSの名前を引き続き使用)広報です。これから新しい楽器をはじめようと思っている方はもちろん、すでに何かの楽器を学んでいる&演奏している方も!新しい楽器を買おうとする前に、ぜひEYS‐STYLEオリジナル楽器を知っていただきたいと思います。
EYSオリジナル楽器は、どれも楽器製作のプロフェッショナル達が、素材の選定から楽器の仕様、そして製作工程の一つひとつにこだわり抜いた一品です。
シリーズ『EYSオリジナル楽器STORY』では、オリジナル楽器こだわりの仕様とともに、製作のキーマンとなる楽器製作のプロフェッショナルたちの想いをご紹介します。ものづくりに真摯に向き合う彼らのストーリーを知ることで、二胡のイメージが広がっていったら嬉しいです。
今回は、オリジナル楽器製作プロジェクト初期から根強い人気を誇るEYSオリジナル二胡<双王>(本体編)改めてご紹介いたします。二胡<双王>(弓編)と共にぜひ読んでくださいね!
二胡と言えば、中国4000年の悠久の美を感じさせる音色。「人の声に近い音」とも言われているそうです。たった二本の弦から生まれる独特の美しい音色は、多くの人の心を癒し魅了しています。EYSでは、音楽教育事業のスタート時から二胡のレッスンを設け、子供からシニア層へと幅広い世代が学んでいます。
二胡の構造はとてもシンプル。2本の弦の間に弓を挟み、弦を摩擦して演奏します。その振動が、へビの皮を張った筒に伝わり音が出るという仕組み。シンプルなだけに、音を出すことは比較的簡単です。初心者でも2~3回のレッスンで簡単な曲なら弾けるように。でも、美しい透明な音色を出せるようになるには話は別です。シンプルなのに繊細な奥深さがある、それが人気の秘密なのかもしれません。
「音楽教室」のEYSが、オリジナル楽器の製作にこだわる理由は、これまでのブログでもご紹介をさせていただいた通り。少し振り返りますと、実はEYSには楽器製作販売事業部があり、オリジナル楽器の製作や、楽器の価格比較、販売サイト「オトリエ」の運営を行っています。
世の中には様々なメーカーの楽器が販売されていますが、EYSは「楽器の値段は掛け値なしの正味の価値に合っていない」と考えています。つまり、楽器本来の素材・加工技術・品質からすると、もっと安い値段で買うことができるはずということです。
では楽器の値段はどのように決まっているのか?
それには、ブランド名やアンティーク的価値、そして装飾やデザインという要素が大きく関係しています。また、販売経路によってはその間で発生する手数料等でも値段が変わります。
でも、これらの要素は楽器の本質的な価値とは関係がありません。例えば、同じ工場で作られた全く同じ楽器であれば、ブランド名が刻印されているからと言って、音や操作性は何も変わりませんよね。
EYSではこれらの要素ではなく「素材と部品」と「加工技術」こそが、楽器本来の価値であると考えています。
楽器製作販売事業部では、この品質と価格の関係を明確にし、価値に見合った適正価格で楽器を提供することを目標に、楽器製作に取り組んでいるのです。
詳しくはこちらのエレキギター誕生記事を御覧ください!↓
EYS-STYLEプロデュース オリジナルエレキギター登場!!
EYSオリジナル二胡製作に着手した際、EYSの担当がまずコンタクトしたのは、EYSでずっと二胡のレッスンを担ってくださっている村井講師です。「EYSオリジナル楽器にふさわしい楽器とは何か」を村井講師に伺っていく中で、二人の二胡の製作者のお名前があがりました。二胡本体の製作者である王乃正(ワンナイジョン)氏と、二胡弓の製作者である王小廸(ワンシャオディー)女史です。中国で最高峰の技術力を誇る製作者であるお二人に、「EYSオリジナル楽器製作を打診してみては?」とアドバイスいただいたのです。すぐさま担当は中国に飛び交渉。「会員さんをはじめ、多くの人に価値に見合う適正価格で楽器を作り提供したい」というEYS楽器製作のコンセプトにご快諾いただき、仕様を詰め、EYSオリジナル二胡<双王>の誕生に至りました。
さて、まずは二胡本体を作る王乃正(ワンナイジョン)氏のEYSオリジナル二胡<双王>の特徴をご紹介します。EYSでは、初心者の方にも二胡らしい柔らかな音色を奏でられるように、演奏が楽しくなるように。そしてお使いいただく方の技術が向上してからも、長く愛用していただけるスペックであることを大切に作っています。
天津市郊外で二胡を製作する王乃正(ワンナイジョン)氏の工場では、十数人の職人が真剣に製作に向き合っています。氏は中国全土規模の二胡職人コンクールで金賞を受賞した巨匠と呼ばれている人。ですが、驚くことに「師事した師匠はいない」といいます。30数年前、大工だった王氏は2本の二胡を買い求め分解、その構造を徹底的に研究することから職人人生をスタートしました。そして何十年も研究し積み重ねた結果、最上級の評価を得るまでの二胡づくりに至ったのです。しかもその間、すべてが手作業で作ることが当たり前だった製造工程のほとんどを機械化することで、安定品質の製品を生み出すことに成功。加えて「割れない二胡」の製作特許も取得。多くの人が二胡の演奏を気軽に楽しめるようになり、業界に多大な影響をもたらせたのです。
とはいえ、全てを機械化したわけではありません。繊細な職人の技術を要する重要部分は、人の手で行っています。今でも「音色が決まる」という皮張りの工程だけは自らが行い、高い技術と飽くことのない情熱で二胡を作り続けています。
全工程が手作業で行われてきた二胡製作ですが、もともと素材や工作機械に精通し、高い学識を持っていた王乃正氏は、製作工程に機械を導入しました。例えば従来、「機械では難しい」とされていた棹作りの曲線も、高品質なものを安定的に量産することに成功。多くの人に高品質な二胡を安価で提供することを可能にしたのです。
王氏の作る二胡の棹太さは中位のものです。「太すぎては良い音にならない、細すぎても温度に弱く変形してしまうため適さない」と王氏はいいます。その最適な太さを正確に導き出すと共に、すべてを同じ寸法で作る技術を生み出しました。「王氏の二胡は、長時間弾いても疲れない」といわれる所以は、棹の太さの精度にあります。
製造工程のすべてを機械化したわけではありません。微妙な手仕事が活かされる部分は職人による手仕事で行っています。中でも、音の良し悪しを決める「皮張り」の工程は、王乃正氏が自ら行っています。
皮は、厚さや薄さ、弾力それぞれが異なるため、一番良い音を出せるか否かは、皮を張る人の技術がものをいう世界。長年の経験や勘どころが必要なため、機械では難しい工程だといいます。皮の目利きから引っ張る加減、さらに接着剤の配合や用い方など個体に応じて絶妙に調整。すべては二胡本来の柔らかい音色を導き出すための工程です。
6枚の板を張り合わせた胴は、王氏が2002年に開発し、特許を取得した特殊技法で作られたもの。6枚それぞれの板が木組みの技術で接合されており、簡単には割れない丈夫な構造になっています。ポイントは乾燥と接合方法。この両者のバランスが、丈夫なだけでなく良い音を作り上げていくのだと王氏は言います。
美しい光沢を生み出すためには、「磨き」の工程も大切なポイントです。機械では難しい工程となるため、人の手の感覚や温もりにより時間をかけ丁寧に行っていきます。
材料はすべて倉庫で40日ほど乾燥させてから加工。一つの二胡を完成させるのに3年くらいかかるそうです。
二胡製作に大切なのは、「皮張りの技術」「割れない胴づくり」、そして「棹がまっすぐであること」だと王氏は言います。『豊富な知識と研究から導き出された材料を見極め、正確な寸法に基づくバランスのとれたもの』が、王氏の作る二胡なのです。
値段がそれぞれ異なっているのは、材料の違いだけで、「音色には差がない」と王氏は言い切ります。そんな王氏が作り上げるEYSオリジナル二胡<双王>は、初心者はもちろん、上達して上級者と言われるようになっても、充分に弾き続けることができる逸品です。
「私には職人の師匠はいませんでしたが、いつも演奏家が二胡づくりの先生になってくれました。彼らが奏でる二胡の音色が、私に多くの作るためのヒントを与えてくれたのです」。王氏は研究を始めた頃、作り方を学びたいと専門工場へ見に行ったことがあったそうですが、見せてはくれなかったそうです。「人に教わっていては、自分ならではのものづくりはできない」と気づいた王氏は、製作しながら自分でも演奏し、時には演奏家の意見を聞きに尋ね研究を進めました。
「もっといい音を出したい!」と小さな工房から始まったそのまっすぐな想いは、自ら機械設計した工場を構え、特許を取得し、販路を広げ、大きく成長していきました。事業者としても成功を手にした王氏ですが、「何年、何十年やってもまだまだ目指す先がある」と現在も技術を磨き続けています。数回にわたる金賞受賞がそれを物語っているようでした。
「良い二胡を選ぶとき、材料の種類というよりは、まずは寸法がきちんとしているものを選ぶことです。そして皮が適性に張られているか、さらに胴の線はまっすぐとしたラインを描いているかをみます。木には年輪がありますよね。年輪に対して割れる方向は決まっています。良い二胡は、割れる方向に年輪が入っていないのです。材料を選ぶ段階から割れにくい木を選んでいるからです」と、二胡を手にポイントを語ってくれた王氏ですが、素人には中々判断がつかない部分も。その点、EYSオリジナル二胡<双王>は、王氏の目利きにより作られたもの。安心して長く使い続けていただけます。
ぜひ多くの方に、美しい音色をこの二胡で奏でて悠久の美に浸ってほしいと思います。
【取材こぼれ話】
北京から新幹線で天津へ。天津の駅には王氏自ら高級車で取材班を迎えに来てくださいました。取材後、食事を共にし(もちろん中華料理!)すっかり打ち解けた私たちをご自宅へ案内くださいました。壁にはお子さんの結婚式のお写真が。お子さんはみなさん銀行家などになったというエリート一家。嬉しい反面、二胡製作の後継者がいないことが目下の悩みだそうです。奥様とともに温かく迎えてくださり、ひまわりの種の食べ方を教えていただくなど楽しい時間を過ごしました。
巨大な新幹線の天津駅
王氏が住む高級高層マンション
2022年11月より、本体素材がアフリカ小葉紫檀へとバージョンアップいたしました。
赤みがかった色合いと、艶やかな音色が特徴の素材となります。
アフリカ小葉紫檀の手に馴染む感触をどうぞお楽しみください。