みなさん、こんにちは!2nd Community(旧:EYS-STYLE/ブランドとしてはEYSの名前を引き続き使用)広報です。
これから新しい楽器をはじめようと思っている方はもちろん、すでに何かの楽器を学んでいる&演奏している方も!新しい楽器を買おうとする前に、ぜひEYSオリジナル楽器を知っていただきたいと思います。
EYSオリジナル楽器は、どれも楽器製作のプロフェッショナル達が、素材の選定から楽器の仕様、そして製作工程の一つひとつにこだわり抜いた一品です。
シリーズ『EYSオリジナル楽器STORY』では、オリジナル楽器こだわりの仕様とともに、製作のキーマンとなる楽器製作のプロフェッショナルたちの想いをご紹介します。ものづくりに真摯に向き合う彼らのストーリーを知ることで、アルトサックスのイメージが広がっていったら嬉しいです。
※ソプラノ、テナーサックスもリリースしております、詳しくはこちらを御覧ください!
アルトサックスの人気は、何といっても演奏シーンのカッコよさ!チャレンジしてみたい楽器として常に上位にランキングされているのも納得です。さらに人気を後押ししているのは、ビギナーにも挑戦しやすい楽器であるということです。単に、「かっこいいから」と見た目や興味だけでスタートしても比較的すぐに吹けるように。間口が広いからモチベーションもアップ!楽しさも広がります。
またアルトサックスはメロディラインも伴奏も、どんな演奏シーンでも立ち回れるから、ジャズはもちろんポピュラー音楽、ロック、吹奏楽などセッションできるチャンスも広がるというのも魅力です。EYSでは、一人で演奏を楽しむことはもちろんですが、合奏したり、歌と合わせたり、たくさんの人と一緒に楽しむ音楽シーンも、多くのみなさんに体験していただきたいと思っています。アルトサックスはそんなシーンにもってこいの楽器なんです。
「音楽教室」のEYSが、オリジナル楽器の製作にこだわる理由は、これまでのブログでもご紹介をさせていただいた通り。少し振り返りますと、実はEYSには楽器製作販売事業部があり、オリジナル楽器の製作や、楽器の価格比較、販売サイト「オトリエ」の運営を行っています。
世の中には様々なメーカーの楽器が販売されていますが、EYSは「楽器の値段は掛け値なしの正味の価値に合っていない」と考えています。つまり、楽器本来の素材・加工技術・品質からすると、もっと安い値段で買うことができるはずということです。
では楽器の値段はどのように決まっているのか?
それには、ブランド名やアンティーク的価値、そして装飾やデザインという要素が大きく関係しています。また、販売経路によってはその間で発生する手数料等でも値段が変わります。
でも、これらの要素は楽器の本質的な価値とは関係がありません。例えば、同じ工場で作られた全く同じ楽器であれば、ブランド名が刻印されているからと言って、音や操作性は何も変わりませんよね。
EYSではこれらの要素ではなく「素材と部品」と「加工技術」こそが、楽器本来の価値であると考えています。
楽器製作販売事業部では、この品質と価格の関係を明確にし、価値に見合った適正価格で楽器を提供することを目標に、楽器製作に取り組んでいるのです。
詳しくはこちらのエレキギター誕生記事を御覧ください!↓
EYS-STYLEプロデュース オリジナルエレキギター登場!!
EYSオリジナルのアルトサックス製作に乗り出した担当スタッフが、まずは各楽器製作の有識者に話を伺おうと東京大久保にある『高橋管楽器』を訪れたのは、プロジェクトがスタートしてすぐのことでした。高橋管楽器は、戦後間もなくスタートした管楽器修理専門と管楽器を販売する工房。先代から1948年生まれの2代目高橋一朗氏が技術を受け継ぎ、現在は3代目大輔氏と共に、全国からの修理依頼をはじめ、さまざまな管楽器の相談に誠実に向き合っています。
早速、EYSオリジナル楽器製作のコンセプトをお伝えし相談すると、2代目一朗氏は言います。「うちは主に管楽器を修理する立場だから楽器を作ることはしていないけれど、修理をしていて、『こういう楽器だったらいいのにな』って思うことは多いよ」――その言葉がきっかけとなり、『高橋管楽器プロデュースEYSオリジナルアルトサックス』プロジェクトがスタートしたのです。
さて、まずは高橋管楽器プロデュースEYSオリジナルアルトサックス<Felicia>の特徴をご紹介します。
まず前提として、EYSオリジナル楽器はどれも、ビギナーの方にも演奏しやすく、お使いいただく方の技術が向上してからも、長く愛用いただけるスペックであることを大切にしています。
ソプラノ、テナー、バリトン、バスなど様々な種類があるサックスですが、まずは人気の高いアルトサックスから製作がスタートしました。
立ったままの姿勢で両手にサックスを持ち、手を動かし息を出す……と文字にすると、なんの色気もありませんが、サックスの演奏シーンは何といってもそのカッコよさ!そんな人を魅了する演奏技術や体の動きを手に入れるためには、演奏のしやすさが大切なポイントになります。そのため高橋氏は、『最小限の力で効率よく演奏できる、アルトサックス』を考えました。イコールそれは、ビギナーの方に優しいということになります。
例えばフロントのFキーは、指をスライドすることが多い場所です。ここにわずかな傾きをつけて、軽い力でも一瞬で穴をふさぐことができるように、無理なく指が運べるよう設計。同様に、Gキーに関しても指への負担が軽くなるよう遊びを調整しました。
トーンホールは丁寧にやすりがけ。凹凸があるとタンポがきちんと閉まらず、音が出なくなるため、やすりがけを施し調整しています。
ネックと本体の嵌合度(カンゴウド:軸と穴がはまり合っている度合い)も、音の質にかかわる大切なポイント!固すぎず、緩すぎず、絶妙な硬さになるように設計しています。
演奏スタイルのカッコよさ!つまり、魅せる演奏も意識して前面には贅沢に「手彫りによる彫刻」も!3代目大輔氏によるオリジナルデザインです。
さらに音の要であるリードは、青箱として親しまれている定番のVandoren Traditional。ビギナーでも音が出しやすい2 1/2を一箱付属しています。
そんな高橋氏のこだわりを実現する工場を探すために、EYSでは海外で開催されている大規模な楽器市に参加しました。高橋氏にもご同行いただき出品者のブースを周っては、クオリティの高い楽器を作っているか否かを一つ一つ試しながら探していきました。当然、価格が高すぎるものではこの試みは実現しません。適正な価格であることはもちろん、信頼できるものづくりをしていると思われる工場を見つけては、EYSオリジナル楽器製作を打診、交渉を進めました。数社の工場と幾度にもわたりサンプルをやり取りしベストな工場を絞り発注。求められる特徴を理解し対応できる技術を持つ工場だけが、EYSオリジナル楽器の生産を行っています。
工場への細かい指示を書いた仕様書作成も、高橋氏自ら記載して頂きました。
EYSオリジナル楽器は、「無理なく演奏できるからレッスンが楽しい」→「続けられる」→「上達する」の無限ループを創出する楽器として、一人ひとりの音楽シーンを彩る存在として、いつまでも傍においてほしいと願い作られた楽器です。
実際に長く使いたい、けれど具体的にはどのようにすればいいのでしょうか。高橋氏に聞きました。
「毎日~週に4、5回練習する人だったら、半年~1年くらいで色々な部分に狂いが生じてきます。自分ではわからなくても、調整に出した方がいいですね。ある程度吹けるようになれば、あれ?ってわかると思いますよ。良い音が出ないと思っても、それは演奏技術のせいではなく、部品の摩耗によるものの場合があるからです」上達のためにもメンテナンスは欠かせないと、高橋氏は言います。高橋管楽器では、点検することは無料だといいます。すぐに修理しなくても、摩耗が進んでいる部分や修理のタイミングを教えてくれるとのこと。自分の演奏の癖や、楽器の状態を把握するためにも気軽に持っていきたいですね。理想としては、1年毎など定期的にメンテナンスをして良い状態を保つことが、楽器を長持ちさせることはもちろん、上達につながるということです。
全国から送られてくる修理を待つ楽器たち
「例えば、お客さんがアメリカから楽器を持って来て分解してみると、『あっ、アメリカの修理屋はこうやって直しているんだ』と、修理の軌跡が見えるものがあります。逆に、『こんなことしやがって!』っていうのもありますね」。
年代も含め、ほぼすべてのメーカーの管楽器の構造を把握している高橋氏にしてみれば、100年超えの年代物のサックスに出逢うことも珍しくないそうです。修理のために部品がなければ自ら作る。そのための工具もあり、先代から引き継がれたものも含め、工房には驚くほどたくさんの、『楽器のためのもの』があります。それらに囲まれながら、目の前にある楽器一つひとつに真摯に向き合い修理し、新たな命を吹き込んでいくのです。「修理の内容だけではなく、どんな風に吹かれてきた楽器なのか、その歴史も一つひとつ違います。その歴史に合わせて、今後お客さんがいかに楽器を上手く使っていけるか、を絶えず考えて修理をしています。だから飽きることはないですね」と高橋氏。自分が大切にしてきた楽器を安心して託せるし、託したいと思わせてくれる人なのです。
そんな高橋氏のリペアの視点から、演奏のしやすさを考え抜いて作られたEYSのオリジナル楽器<Felicia>。ぜひあなたの歴史の一本に加えていただけたら嬉しいです。
【取材こぼれ話】
静岡県にあった日本管楽器株式会社(ニッカン)の工場で修業し大久保でスタートした高橋管楽器。中学生の頃からお店を手伝っていたという2代目一朗氏から、技術は3代目大輔氏へと受け継がれています。「腕がないとできない仕事だから、息子がやりたいと言った時はじめは反対したのですが、今は自分以上にセンスがあると感じています」と嬉しそう。
その一朗氏のリペアのこだわりは、『とにかく丁寧にやること』だといいます。「何時までにやろうとか、今日は何本やろうとか、そういう考えは一切ないです。修理を請け負ったら頂く金額以上の修理内容をするといつも思っていますし、それを続けてきたから今があるのだと思います」。趣味はクラリネット吹くこと。愛用のクラリネットを嬉しそうに見せてくれたその顔は、音楽好きの少年そのものでした。
先代から使っているという工具たち。今も現役です。