数ある習い事の中でも、幼少期にピアノを習っていたという方は多いのではないでしょうか。アップライトでもグランドピアノでも、必要なのが「調律」。
年に一度は調律師さんが家にやってきて、普段はなかなか開けないピアノのふたを開けて、なにやらトントンやっている。調律をしてもらうと、ちょっと不調だったピアノの音色がよみがえり、途端にピアノの練習が楽しくなる。そんな経験をしたこともあるでしょう。
この調律師、どうしたらなれるもの?今回は、音楽に関する職業として「調律師」に迫ります。現役のピアノの調律師さんに話をお聞きしました。
もくじ
ピアノは弾かなくても日が経つにつれ湿度や乾燥により音がずれてきてしまいます。それを正しい音に調整するのが調律師の仕事です。
ピアノの鍵盤は88鍵(音)あり、1音につき1~3本の弦がついています。つまり1台のピアノには220~250本もの弦がついていることになります。
1音に複数本の弦が付いていると、鍵盤を弾くことにより振動にずれが生じてきます。その弦によって振動が強かったり弱くなったりと、差が生じる現象のことを「うなり」と呼んでいます。このうなりを調律によって正しい音に直していくのです。
「調律」の作業は下記のように4つに分かれています。
1. 整調
鍵盤とアクションの動きを整え、鍵盤を押したときに正しい動きができるように調整します。正しい音に合わせるだけではなく、弾き手の「好みの音」に合わせ、弾き心地を決めます。
2. 調律
弦は1本それぞれ90kgもの重さで引っ張られています。そのため、時間が経つにつれ次第に音がずれてきてしまうものです。そこで、弦を引っ張っているチューニングピンをチューニングハンマーを使ってしめたり、あるいはゆるめたり、正しい音律に仕上げます。
3. 整音
1や2の作業を経て、音色のバランスを整えます。
4. 仕上げ
調律師本人が、最後に弾いてピアノ全体の音を確かめます。
大きく分けて2つあります。ひとつが、師匠について技術を学ぶ方法。もうひとつが、専門学校や大学で学ぶ方法です。現在は資格の有無は関係なく調律師と名乗り、活動することができます。
しかし、調律師になるための資格試験「ピアノ調律技能検定」を導入し始めているので、ゆくゆくは資格が必須になる可能性があると思われます。
大学では国内で唯一、国立音楽大学の別科に調律師専修があります。調律師は男性の印象が強いですが、女性も多く通っています。
特に絶対音感が必要だとか、元々耳がいいとった特性は必要ありません。音の訓練をすることにより、正しい音を覚え、聞き分けることができるようになります。
ピアノを弾けることは必須条件ではありませんが、調律師の多くは、ピアノ経験者で弾くことができるようです。ちなみに話をお聞きした調律師さんは、3歳からピアノを始め、その経験から「ピアノ自体のことをもっと知りたい」と調律師に憧れを抱いて今に至るようです。
重い弦を片手で支えながら、もう片手で作業をするので、ある程度力は必要です。そして1時間半から2時間程度、集中して作業を続けるため神経を使い、忍耐力も必要な仕事かもしれません。
基本的に、蓋は開けなくて大丈夫です。むしろ、知識がない人が無駄に弦を触ってしまうことは非常に危険です。絶対に弦には触らないでください。
ピアノを弾いたあとは、鍵盤をやわらかな布で拭き、ピアノ全体も定期的にほこりを払ってください。また、直射日光やエアコンの風が直接当たる場所、床暖房の上などにピアノを置くと湿度・乾燥によって音が狂いやすくなります。出来れば床暖房がある場所は避け、直射日光が当たる場合はピアノカバーをかけるとよいでしょう。
ピアノに限らず楽器は過度な湿度、乾燥を嫌います。特に日本は、夏場は多湿、冬場は極度に乾燥するため、ピアノにとって好ましい環境ではありません。湿度が高い時はピアノも汗をかきます。
ピアノは湿度と乾燥の変化によって音が狂いやすくなるので、もしご家庭に加湿器・乾燥機があれば湿度を40~60%に保つと、音が狂いにくく、ピアノも良い状態に保つことができます。
そして最低でも1年に1回は調律を頼んでください。ピアノを日常的に長時間弾く人は、半年に1回でもいいでしょう。
虫がいることはしょっちゅう、ほかにはネズミが巣を作っていることもありました。ピアノにはネズミが好むフェルトが使われているので、フェルトを集めて巣にしていたようです。動物にとって心地いい空間…ということなのでしょうか。。
調律する際は、正しい音に調整するだけではなく、弾き手の好みに合わせて「整調」します。その際「やわらかな音」「甘い音」といった、抽象的な表現で依頼をされることが多いです。
「やわらかな音」も「甘い音」も、こうすればよいという正解はありません。しかも、相手によって「やわらかな音」のとらえ方が違います。よく話を聞き、自分なりに相手の求める音に近づける努力をするので、作業が終った後に、仕上がりに喜んでもらえる瞬間は、何にも代えがたい喜びのようです。
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