見た目タンバリン、でも音はドラムセット!?凄い楽器「パンデイロ」
投稿者 :ミュージックレッスンラボ編集部
もくじ
「パンデイロ」という楽器をご存知でしょうか?
これはブラジル生まれの楽器で、手に持って演奏する「ハンドパーカッション」に分類されます。
こんな楽器です。
この楽器がパンデイロです。
なぁんだ、ただのタンバリンじゃん。
は、はい、たしかに見た目は私たちが幼稚園の頃から知っているタンバリンととっても似ていますが、実は全然別モノの楽器なんです。音だってまったく違うんです!!
うそばっか。どうせショボいんでしょ
…。
百聞は一見に如かず。
まずは騙されたと思って聴いてみてください、これが「パンデイロ」の音です。
え、すごい…!
私が知ってるタンバリンじゃない…。
お腹に響くバスドラムのような低音、スネアドラムのようなスカッと抜ける中高音、そして細かく刻まれるハイハットのようなリズム…
そう、これが「パンデイロ」なんです!!
迫力のある音にびっくりしました。ほんとにかっこいい!
動画の前半ではパンデイロ奏者がソロで叩いていますが、同じ低音でも微妙に音程が変わっていたり、リズムもいろいろ変わって面白いですよね。
途中からピアノとフルートも入ってきて3人でのアンサンブルが始まります。
なんだかクラシック音楽みたいで、すごく優雅な感じですね♪
この動画の曲はホアキン・カリャード(Joaquim Callado)という19世紀のブラジルの作曲家がつくったもので、クラシック音楽や現地の舞踊音楽から影響を受けてブラジルで発展した「ショーロ」というジャンルのものです(ショーロについてはコチラの記事で詳しく解説しているから、ぜひ見てくださいね)。
パンデイロがリズムをキープしつつ、ピアノとフルートがリズムに乗って豊かなハーモニーと流麗なフレーズを重ねています。
こんな優雅な室内楽にも、パンデイロはとても合うんですよ♪
パンデイロはその小さな楽器からは想像もできないほど多彩な表現力を備えています。
その秘密を探ってみましょう。
ヘッドの端の方(フープに近い部分)を叩くと低音が鳴ります。
ヘッドの中央付近を叩くと中高音が出ます。
さらに右手(左利きの方は左手)のかかとと指先で交互にヘッドの周辺部を軽く叩く動作によってプラチネラ(ジングル、鈴)がシャンシャンと鳴ります。
パンデイロの演奏は基本的にこの3つを様々に組み合わせて行われます。
ほかに人差し指や親指をヘッドで滑らせ摩擦によって連続した音を出すロールといった特殊な奏法もたくさんあり、さまざまなリズムの表現が可能です。
文字で説明しても難しいので、ぜひ初心者向けの動画などで確認してみてください。「how to play pandeiro」などで検索すると、多くの動画が出てきますよ。
ゆっくりだとカンタンそうに見えるけど、意外と頭がこんがらがりそうね…。
パンデイロとタンバリンの違いはいくつかありますが、特に音色に関係するところとしてはフレームに取り付けられたジングル(鈴)の違いが挙げられます。
タンバリンのジングルはお皿を背中合わせにして重ねられており大きな音がしますが、パンデイロの場合はタンバリンとは逆にお皿を伏せた向きで重ね合わせています。これはドラムセットの「ハイハット」と同じ向きで、ハイハット同様にリズムを刻むのに最適な控えめな音色・音量が特徴的です。
この軽やかなリズム、私けっこう好きです♪
パンデイロのジングル(ポルトガル語で「プラチネラ」と呼ばれます)の音は楽器ごとに全然違って、楽器の個性が出るポイントでもあります。
パンデイロのヘッドはタハーシャ(テンションロッド)と呼ばれる部品によってチューニング(調律)が可能となっています。これもタンバリンとの大きな違いですね。
これによって意図的に低い音を出しやすくしたり、軽い音色にしたりと演奏する曲にあわせてコントロールをすることができます。
「タハーシャ」って、なんだか不思議な響きですね。タハーシャタハーシャタハーシャ…
早口言葉みたいに言わないでください…(笑)
また、演奏中に楽器を持つ左手の親指でヘッドをグッと押さえこんで張力を変えることにより、曲中でさまざまにピッチ(音程)を変える表現もできるのです。
パンデイロがどんな楽器か分かってきたところで、有名なパンデイロ奏者を何人か紹介しますね。
多くの人はパンデイロ以外にも様々なパーカッションを演奏しますが、パンデイロに特化して演奏している人もいます。サンバやショーロといったブラジル特有のジャンルだけではなく、最近はポップスなどでもその需要が高まってきています。日本のシンガーソングライターの山崎まさよしさんもパンデイロが得意ですよね。
まさやん、タンバリン上手だなーって思ってました!!
そう、山﨑まさよしさんのアレはタンバリンじゃなくてパンデイロなんですよ。
冒頭で紹介した凄いパンデイロのおじさんが、マルコス・スザーノ(Marcos Suzano)というブラジルの人です。
1990年代中盤の音楽シーンに彗星の如く現れた彼は、従来サンバやショーロで使われていたパンデイロをロックに持ち込んだり、エレクトロ・ミュージックのリズムを取り入れたりしてモダン・パンデイロ奏法を確立しました。さらにパンデイロのヘッドの裏面にテープを貼ってヘッドを重くすることで低音を際立たせるような工夫を始め、彼の奏法は現在ではパンデイロ奏者のスタンダードのようになっています。
この動画ではパンデイロ・ヘピーキ・デュオ(Pandeiro Repique Duo)という若い打楽器デュオと共演しています。
すごいタンバリンのおじさん、マルコス・スゲーノ!
覚えました!!
スザーノ、です。
マルコス・スザーノ登場以前のパンデイロ奏者として有名なのはジョルジーニョ・ド・パンデイロ(Jorginho do Pandeiro)。この名前は“パンデイロのジョルジーニョ”って意味で、そのまんまですね。分かりやすい芸名です。
パンデイロを芸名にしちゃうくらいだから、ほんとに上手いです。
残念ながら2017年に他界されてしまい、若い頃のご本人が演奏している動画があまりなかったので、ジョルジーニョさんが作曲した曲の動画をご紹介します。演奏はジョルジーニョもかつて所属していたエポカ・ヂ・オウロ(Época de Ouro)というショーロの超有名老舗バンドで、ここではセルシーニョ・シルヴァ(Celsinho Silva)がパンデイロを演奏しています。
これも渋くて素敵ですね~♪
さらに古い時代だと、ジャクソン・ド・パンデイロ(Jackson do Pandeiro)という人もこの楽器の普及と発展に大きく貢献したパイオニアです。
マルコス・スザーノ以降の若手で今注目されているのがトゥーリオ・アラウージョ(Tulio Araujo)というプレイヤーです。ショーロからジャズ、エレクトロ・ミュージックまで多様なスタイルを得意としており、ブラジル国内のみならず世界中の様々なアーティストと共演しています。
ほかにもセルジオ・クラコウスキ(Sergio Krakowsky)や小川慶太(おがわけいた)など、世界的に活躍しているパンデイロ奏者はたくさんいます。
あとは適当にググって探してね。
急に突き放された
面白いですね~♪
私もやってみたくなりました。
どうやって楽器を探したら良いですか?
パンデイロは打楽器の専門店などで扱われています。
大きめの楽器屋さんに置かれている場合もありますが、取扱店が多いかというとまだまだ微妙です。。。
Amazonなどの通販なら容易に入手することもできますが、楽器によって音の個性がだいぶ違いますし、ちゃんとした楽器だと1万円~2万円ほどのお値段ですので、できれば実際に持ってみたり音を出してから気に入ったものを買うことをオススメします。
なるほど…意外と高いんですね。タンバリンのくせに生意気な。
初心者の方がパンデイロを選ぶときには、楽器の「軽さ」も重視してください。
重い楽器ですと最初は楽器を持つ手首がすぐに疲れてしまいます。
以前は500g前後が標準的な重さでしたが、最近のパンデイロは軽量化が進んでいて、400g以下のものも充実しています。
手に持ったときにしっくりくる楽器がいいなー。
ご参考までに、グラミー賞の常連バンド、スナーキー・パピー(Snarky Puppy)などで活躍している日本人パーカッショニストの小川慶太さんによる17種類のパンデイロの叩き比べ動画をご紹介します。楽器によってだいぶ音色に個性があることがお分かりになっていただけるかと思います。
どっかで習えたりするんですか?
EYS音楽教室には、日本の大手音楽教室では珍しいパンデイロコースがあります。
無料の体験レッスンもできるので、かっこよく叩けるようになりたければぜひ問い合わせてみてください。
パンデイロは初心者でも手軽に始められますし、ドラマーのサブ楽器としても重宝すると思います。
興味を持っていただけたら、ぜひ演奏にもチャレンジしてみてくださいね!
ありがとうございます!
私もすごいタンバリン始めてみます♪♬
「パンデイロ」ですっ!!