暑い夏が永遠に続くかと思えばあっという間に季節は秋。年齢を重ねるごとに、時間の流れが早くなっているのを感じますよね。
子どもの頃は、とりわけ密度の濃い時間として部活動があったと思いますが、あの頃の思い出が今も心の財産として生きている方も多いことでしょう。そんな充実した時間をありありと思い出させてくれる小説があります。吹奏楽部出身の方はもちろん、そうでない方も青春時代を疑似体験できるのではないでしょうか。
今回は、吹奏楽部をテーマとした音楽小説を6本ご紹介したいと思います。読むと、思わず吹奏楽がやりたくなるかも!?
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もくじ
SNSを通して世界が爆発的に広がった現代でも、少年期~青年期独特の閉そく感は変わりありません。『楽隊のうさぎ』では、この閉そく感が同時に、あの頃にしか得られない、「真剣な」体験を生み出す装置として機能していることを教えてくれます。
いじめられっ子気質である主人公奥田克久が、中学に入って吹奏楽部に入部したことから自然に物事の優先順位が変わる様子が描かれます。ティンパニの練習に没頭し、悩み挫折するうちに、絶対的に感じられていたクラスのヒエラルキーについてはいつの間にか脇に追いやられ、小説のテーマからもフェードアウトします。
まるで別のドラマが始まったような展開ですが、このドラマでの悩みがいじめられっ子時代のものよりも小さいかといえば、決してそんなことはありません。2年のときのコンクールでは「シバの女王ベルキス」に取り組みますが、冒頭のティンパニのソロで、克己はすべての責任を背負うことになり、いじめらていた頃とは別種類の緊張感と孤独感を味わうことになります。
ブラスバンド部経験者の既視感と郷愁に深く訴えかける一冊です。ストーリーは、冴えない生活を送る中年の主人公が、40代で高校生の頃のブラスバンド部を再結成するというもの。いかにもカタルシスが得られそうなテーマですが、物語自体は淡々と進みますので、冴えない雰囲気は最後まで払しょくされることはありません。
キャラクターはみんな欠点を抱え、かつて自分が一番輝いていた時代や、まだ街に流れる音楽の質が高かった時代への郷愁を抱いています。一念発起したところでなにかが変わるわけではないことをどこかで知っていますが、昔の思い出をなぞらう行為によって、人生においてほんとに価値のあるものを確かめているように思えます。
価値のあるものへの思い入れは、特にブラスバンドのパートごとの説明や音楽や曲の解説に表れていて、同じ価値観が深く深く根付いているブラスバンド部経験者(特に30代~40代の方)であれば、痛いほど共感してしまうのではないでしょうか。
自己防衛のもとになる、触れると壊れてしまいそうなデリケートな心と、これと反対に作用する、見たことのない世界への強い好奇心は、子供のころは誰もがもっているもの。この作品は、すっかり不感症になったかのように見えるわたしたち大人のなかに、まだ確かに眠っているそうした部分を、みずみずしい表現で刺激してくれます。
不器用で引っ込み思案の高校生1年、給前志音(きゅうぜんしおん)と吹奏楽部の部長、日向寺大志(ひゅうがじたいし)の二人に交互にスポットがあたります。タイトルの「屋上」は、唯一の友達で心の支えだった友人と別の学校へ通うことになった志音が確保した「居場所」。エアーでドラムの練習をしていたところを、大志が見つけ入部をすすめます。
志音は何かが変わることを望んでいますが、なかなか殻が破れず、外交的に見える大志も実は、心に傷を抱えています。二人の内面や、それぞれの目線から見た人の仕草などの描写がとてもデリケートかつ新鮮で、子供の頃に体験した葛藤を思い出すでしょう。
吹奏楽部を題材にした小説にカタルシスを求めるなら、この青春小説がピッタリです。やる気なしの弱小吹奏楽部にやってきた顧問、「ミタセン」が、情熱と突き抜けた音楽センスで、部員たちを立て直すために奮闘します。全日本コンクール金賞を目標に掲げ、ダメ部員たちが実力をつけていく姿は読んでいて爽快。笑いと涙をこらえるのは難しいでしょう。
これを読んで、吹奏楽部は実は体育会系だったということを思い出しました。青春映画を観るように、難しいことを考えず一気に読み進められる一冊です。
青春小説にはつきものの2要素、「目標に向かってのがむしゃらな努力」と「恋愛・友情など人間関係の切磋琢磨」がバランスよく扱われた作品です。個性的な部員のキャラ設定もリアルで、自分の知人を思い浮かべる人も多いでしょう。丁寧に描かれた部員通しのやりとりはやたらとなままなしく、楽しみながら読み進められます。
メインに描かれるコンクールに向けた取り組みや本番の様子は、経験者なら情景がありありと目に浮かぶことでしょう。人生でもっとも真剣にものごとに打ち込んだ時間を思い出し、コンクールの緊張感を再体験できます。課題曲「青空と太陽」を聴きながら読めばなおリアルな体験が得られるでしょう。
中学校の吹奏楽部でフルートを担当する果南(かなみ)と、転校してきた天才ピアニスト透子をめぐる物語ですが、実は音楽的な要素はそれほど前面に出てきません。ですので、人間関係をメインに楽しみたい方におすすめの作品になります。
表面的には優等生で、担任から託されて透子の面倒も見る果南ですが、透子の才能や超然とした態度に嫉妬し、おとしめようとします。ところが、さまざまな過程を経て果南はクラスから孤立。そこで初めて周りに対して常にいい顔をしてきた自分は、便利屋としか扱われていなかったことに気づき、自分に正直に生きる透子への嫉妬と劣等感にも気づきます。
このように、中学生特有の過剰な自意識や劣等感、嫉妬などがなまなましく描かれていて、特に女子中学生のお子さんを持つ方や当人などが読めば、客観的な視点が得られてなにかが解決するかもしれません。
いかがでしたでしょうか?比較的読みやすいものを多く取り上げました。話に入りやすいので読んでいるうちにいつの間にかタイムスリップしているでしょう。
時の過ぎゆく速度は加速していますが、あのなにもかもに必死だった時代は、永遠にあなたの心の中にあり続けます。小説を読んで青くて甘酸っぱいあの頃を回顧することこそが、時間の流れを止めるコツ。現世での生活にも生命力を注入してくれるのではないでしょうか。
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