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金管楽器ホルンの秘密~オーケストラでも出番が多い、じつは花形楽器!?

# 楽器

投稿者 :吹原紗矢佳

オーケストラや吹奏楽でよく見かけるぐるぐる巻きの楽器、ホルン。金管楽器でありつつも、木管楽器のようなやわらかい響きを持ち、どこか牧歌的で素朴な音色が魅力的です。今回は、そんなホルンの歴史から素材の特徴、演奏法まで詳しく解説します!

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管楽器ホルンの基礎知識~素材は何?~

ホルンは金管楽器。トランペットやトロンボーンと同じように、管体(管の部分)は真鍮(しんちゅう=銅と亜鉛の合金)という素材で作られています。真鍮にはイエローブラスやレッドブラスなど、銅や亜鉛の組成比が異なる種類があり、比率によって音色も変わります。そして、ベル(音が出るラッパの部分)に用いる真鍮の種類を変えることで、音色のバラエティを生み出しているのです。

金管楽器 ホルン

そのほか、洋白(ようはく=銅・亜鉛・ニッケルの合金)と言われる、光沢のある白色の合金が用いられることもあります。これは真鍮よりもサビに強いので、耐蝕性や耐摩耗性が求められる抜差管や吹込管などの管体部分に用いられることもあり、金銀ツートンカラーのホルンが多いのはそのためです。

それぞれの素材の組成比と音色は以下の通りです。

種類亜鉛音色
イエローブラス70%30%明るい音色
ゴールドブラス85%15%柔らかく温かい音色
洋白60%ニッケル+亜鉛40%深く重厚な音色

表面の塗装はサビや汚れを防止するだけでなく、音色にも影響してきます。ラッカー塗装では、締まった音に。アンラッカー(ラッカー塗装なし)では、深い響きになると言われています。

ホルンにはどんな種類がある?

吹奏楽 ホルン

ホルンには、「フレンチ・ホルン」「ウィンナ・ホルン」「ナチュラル・ホルン」の3つがあります。ウィンナとナチュラルは古い形式のもので、現在の「ホルン」と言えばフレンチを指すのが一般的です。「フレンチ・ホルン」は大きく分けて3つ。それぞれを簡単にご紹介します。

シングルホルン

シングルホルンは、1つの楽器で1つの調(※)だけを演奏できる形態になっており、F管やB♭管、F管より1オクターブ高いHigh F管などがあります。構造が比較的シンプルで、軽いので扱いやすく、価格も全体的に安めのものが多いです。F管の全長は約360cm、B♭管は約270cm、High F管は約180cm。管が最も長いF管が、音域が最も低くなります。

※調…その楽器の楽譜(ハ長調)で「ド」を出したときの音程を実音表記したもの

ダブルホルン

ダブルホルンは、1本の楽器で2種類の調性を切り替えられるようにしたもので、F管とB♭管の組み合わせが一般的です。「セミダブル」と「フルダブル」があり、これは切り替えの違いによるもの。迂回管があるのが「セミダブル」、バルブで切り替えるのが「フルダブル」。フルダブルはセミダブルよりも楽器の重量が0.1~0.2kgほど重くなりますが、低い方の調性の音色がよりシングルホルンに近いものになるという長所を持ちます。そのほか、B♭管とデスカント・ホルン(High-F管)を組み合わせた「デスカント・ダブル・ホルン」なども存在します。

トリプルホルン

トリプルホルンは、1本の楽器で3種類の調性を切り替えられるようにしたもの。高音域を演奏しやすいが中低音域の音色が劣るHigh-F管、中低音域の音色は優れているが高音域の演奏が難しいF管、両者の中間の性質を持つB♭管の3つを組み込むことで、幅広い音域に1本の楽器で対応できます。動画の通り管体は複雑なレイアウトで、重量も重く、長時間の演奏にはそれなりの体力を要します。

ホルンの誕生ストーリー

木管と金管 ホルン

ホルンの歴史は、動物の角などで作った「角笛」から始まったとされています。16世紀までは主に狩猟時の信号用楽器として発達し、馬に乗りながら吹けるように管を大きく巻いて肩にかつげるようにしました。そのとき邪魔にならないように、ベルは後ろ向きになったと言われています。

19世紀中頃までのホルンはベルと円形に丸められた管にマウスピースをつけただけのシンプルな構造で、「ナチュラル・ホルン」と呼ばれるものでした。唇の振動や吹き込む息の速さを調節することだけでしか音程が変えられず、自然倍音しか演奏できません。もちろん、音階も!

ホルンとは

18世紀中期にはベルの中に手をさしこむことで音程を変える「ゲンシュトップ奏法」が考案され、この技法と管体自体の調性を変えることで、ある程度は半音階を演奏できるようになりました。

しかし、ゲシュトップ奏法にも出せる音には限りがあり、音も音程も不安定なものでした。これらの不満を解消するために、19世紀中頃には、バルブによって管の長さを瞬時に変えることのできる「バルブホルン」が開発されました。さらに19世紀の末には複数の長さの管を組み合わせた「ダブルホルン」が発明され、20世紀には「トリプルホルン」が登場しました。

ホルンの奏法は?

ホルン 吹き方

前述のホルン誕生ストーリーで触れた「ゲシュトップ奏法」。バルブのなかった「ナチュラル・ホルン」の時代には、ベルの中に右手を入れ、その入れ加減によって音程をしていました。じゃあ、今のホルンなら右手はいらないのでは?と思いますよね。現代では、楽器を支えて持つため・音程や音色を“微妙に”変えるために右手を使っています。例えばF管ホルンなら、右手で軽くベルをふさぎながら演奏すると、半音低く、こもった感じの柔らかい音色(ハーフミュート)を出すことができます。

また、右手でベルを密閉状態にして吹き込む息の圧力を増やすと、約半音高い「キーン」とした鋭い金属的な音を出せます。このゲシュトップ奏法は、曲の中で効果音として使われています(楽譜には「+」の記号で指示)。よって、この鋭い金属的な音を出すときは半音低い運指で演奏します。

ただ、Bb管ホルンの場合は2/3~3/4音高くなってしまうため、 いい替え指がありません。そこでB♭シングルホルンやBb/ハイFデスカントダブルホルンには、ゲシュトップ時の音程調整用に、「ゲシュトップ・キイ」と呼ばれる追加のバルブ(4分の3音下がる)を備えているものがあります。これを使えば、通常の運指で演奏できるのです!

「ゲシュトップ奏法」はホルンならではの奏法で、この壁にぶつかって悩んでしまう人もいるのだとか。でも、モノにできればカッコいいですよね♪

ホルンの魅力を知ってもらうために

ホルンの特徴や誕生ストーリー、奏法まで詳しく解説してきました。ちょっと小難しい話もたくさんあったので、疲れてしまった方もいるかもしれませんね。そんな方のために、ホルンの魅力が詰まったこちらの動画を紹介しておきます。

テレビ番組の『いきなり!黄金伝説』を思い出した方も多いでしょう(笑)。美しく伸びやかなホルンの音色に癒やされます♪

この曲の冒頭のホルンは、明るくパリッとした印象。

このように、ホルンはいろんな表情を見せてくれる、魅力的な楽器です。これから音楽番組やコンサートを観に行くときは、ぜひホルンに注目してみてくださいね!

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投稿者
関西出身で愛知県在住のフリーライター。3歳の頃から13年間続けたピアノはすっかり忘却のかなたで、今や弾けるのは猫踏んじゃったのみ。高校時代は吹奏楽部でトロンボーンを担当。