【コントラバスの弦交換方法!】交換の仕方から種類まで現役プロが解説
投稿者 :河野岳美
もくじ
楽器には必ずといって良いほどに消耗品というのがあります。コントラバスの場合は弓の毛と松脂、そして弦です。弦の張り替えは慣れればどうってことの無い作業ですが、慣れてない場合は僅かながらの危険を伴う作業なので一工程ずつ丁寧に作業しましょう。
とある中学校にあった部活備品の楽器。顧問の先生にいつ弦を変えたか、メンテナンスに出したか聞いたらこの10年一度もないと…こんな状態の楽器では部員の子が一生懸命弾いても鳴ってくれないもんだから力が入る。力が入るからよけい鳴らない。力が入るから左手も右手も思うように動かないと、なかなか大変な状況に出くわしたことがあります。
技術磨きも大事ですが、ちゃんと道具の手入れしておかないと技術も身につきませんよね。こんな状態になっていたら弦交換の時期なのでご紹介しましょう。
松脂なんかは使っていけば減っていくので(とは言っても数年単位ですが)いつ新しいの買うかはわかりますが、いまいち弦って交換の目安わからないですよね。なので、こんな感触が出てきたら交換のサインと目安を作っておきましょう。
素手で触っている金属なので、汗で錆びてくることがあります。手汗の量も人それぞれなので一概に期間を言えるモノではありませんが、弦に触った時にザラザラしてたり凸凹があったり、なんか引っ掛かりがあったら交換時期です。
A線合わせてハーモニクスで他の弦合わせたのに開放弦合わないなど、こんな症状も替え時ですね。弦は使っていれば劣化します。弾いてなくても経年劣化で倍音の成分も変わってきます。これはもう劣化が進んでいるサインなので交換時期です。
弦を張りたての時は中の芯線が伸びようとしています。そして一通り伸びれば音程も音色も安定してきますが、弾力を残したままなんですね。これが伸びきった状態になって弾力も失われてくると弦に触った感触が硬く感じてきます。こんな時も交換のサインです。
これら以外にも物理的に巻線がほつれたり、ペグを回しても音程が上がらなかったり(芯線が切れている)したら交換しましょう。
前置きはこのくらいにして実践といきましょう。
・弦…これがなければ始まりません。
・クロス(布やタオル)…せっかく張り替えるので掃除もついでにしましょう。楽器を拭くためのものは目の詰まった楽器専用のクロスもあります。楽器の固定や傷つき防止のためにタオルも何枚かあると便利です。
・鉛筆…弦と楽器が触れる駒に潤滑剤の役目として使います。2B以上の物を用意してください。
これペグを回す道具なんです。道具の名称としてはストリングスワインダーなんですが、通称「アルトベンリ」と言うんです。なくても弦は張り替えられます。でもあると便利です。
準備が整ったところで実際に張り替えていきましょう!
楽器を寝かせておけるスペースを確保しましょう。椅子などを利用して角度つけても良いですね。その際はタオルなどで保護してください。寝かせた時にラウンドバックの楽器はグラグラするので、そんな時もタオルで安定させましょう。
全部の弦を一度に外すのはお勧めしません。弦が張ってあるから魂柱や駒が固定されています。魂柱や駒が倒れないように気をつけてくださいね。
駒や上駒(ナット)の弦が当たる部分に鉛筆を塗り込みます。これが潤滑剤になるんです。新しい弦を出したら真っ直ぐに伸ばしてきれいな布で拭きましょう。保護用の油が塗ってあるのでそれを拭き取ります。そして新しい弦をテールピースに通してちゃんとはめる。しっかりテールピースにはめないと巻いている間に取れて危険です。
外した弦と同じペグに巻きつけていきます。ペグポストの穴に通して弦が重ならないように綺麗に巻いていきましょう。素直に内から外へ向けて巻いてOKですが、最初の一周は穴から飛び出た弦を挟むように逆側に巻いてから巻きつける方法もあります。
ある程度巻けたら音を確認しながら巻いていきます。調子に乗って巻きすぎると弦が切れるのでご注意を。全ての弦を交換するまではちゃんとチューニングする必要ありません。全ての弦を張り終えたら駒の角度も注意しましょう。巻いているうちにどんどん駒も引っ張られます。気づかずに放置してしまうと駒が反るだけでなく割れる可能性もあるので気をつけてください。
全部張れたらチューニングしますが、新しい弦は伸びます。チューニングしても引っ張れば音程低くなります。弾いていても音程下がります。落ち着くまで数日はかかるのでチューニングは頻繁にしてください。その際に駒の角度もみてくださいね。
交換のやり方はわかったけれど、弦ってどれを選んだら良いの?と言うのもバシストの悩み。片っ端から試そうにもお金がかかりすぎますね。なのでここではクラシック系にお勧め出来る弦を紹介していきます。
弦の種類と言ってもたくさんありますが、大きく分けて2種類のジャンルにします。それは「芯線」の素材。スチール弦とガット弦という風に分けられますが、どんな違いか気になりますね。
一般的にはスチール弦の方が音量があって華やかなサウンドになる傾向があります。ガット弦は天然素材の羊の腸なのでテンションが弱く深みのある暖かいサウンドになる傾向がありますが、天然のガットはお値段がかなりします。ガット弦の代替品としてナイロン弦も最近はたくさんの種類がありますね。何点かずつご紹介していきましょう。
Pirastro(ピラストロ)/Flexocor(フレクソコア)
クラシック奏者に定評のあるスチール弦の中でも知名度抜群。芯のある太くかつ甘い音色がします。弓引きでは非常にコントロールしやすいです。初心者の方には扱いやすい弦ですね。
Thomastik(トマスティーク)/Belcanto(ベルカント)
音色は明るく反応が早いですが非常に濃厚なサウンドの弦です。サスティーンは長く、ピチカートでは野太く鳴ってくれます。立ち上がりの速いサウンドなのでオーケストラや吹奏楽などのクラシック音楽には最適です。
D’Addario(ダダリオ)/Helicore Orchestra(ヘリコアオーケストラ)
ギターやエレキベースではお馴染みのダダリオ社が作るスチール弦。ピチカートでも弓でも立ち上がりが早く、音色は明るくクリアなサウンドです。テンションは弱めで、非常に上品なサウンドに仕上がっています。
Pirastro(ピラストロ)/Oliv(オリーブ)
テンションは弱いのでそれなりに音量も小さいですが、上品かつ柔らかな音色はガット弦ならでは。クロムスチールを巻き線に使っているのでパワーとバランスの取れた弦です。これより高級なオイドクサという弦もあります。「ガット・シルバー巻き」という高級な弦ですが、その音色は唯一無二。より落ち着きのある柔らかなサウンドが生まれます。
https://www.soundscape-net.com/?pid=24240921
Pirastro(ピラストロ)/Obligato(オブリガート)
ガット弦を意識して作られたナイロン弦。テンションは弱いですが反応は早く、音色のガット弦に通ずるものがあります。ガット弦の音色を求めているけどオリーブやオイドクサは手が出ないという方は試してみてはいかがでしょうか。
Thomastik(トマスティーク)/Dominant(ドミナント)
こちらもナイロン弦。ガット弦のような柔らかな音色と感触のある弦です。弦自体が他のものより太いのですが、太いからといってテンションが強いわけでもなく、しっかり鳴ってくれます。
楽器を始めてみたものの、メンテナンスに関しては意外と誰も教えてもらえなかったりします。部活では伝統という名の不思議なメンテナンスのやり方があったりと何が正しいのかわからない方も多いようですね。
弦の交換だけではなく、楽器を最低限の状態に維持するのもプレイヤーの責任でしょう。リペアマンほど知識と技術がなくても大丈夫。自分でできない範囲のことを自分でやると取り返しがきかないことにもなるので、そんな時は素直に専門家のところへ持っていきましょう。
自分で気をつけるところだけやれば良いのですが、何をすれば良いのかわかりませんよね。なので練習方法もそうですがプロに教わってしまうというのが一番効率の良いやり方でしょう。疑問に思ったことをすぐに聞ける人が近くにいたらこんなに安心できることはないですね。
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やりたいことを実現するためのレッスンですから、やりたいことができる環境というのは非常に大事です。
主にクラシック系の弦についてと弦交換について書かせていただきました。文章ではわかりづらい部分もたくさんあるとは思います。途中でわからなくなってしまったら素直に楽器屋さんや先生に相談してくださいね。