クラシックのコントラバシスト必見!ピックアップの選び方や種類・おすすめをプロが解説
投稿者 :河野岳美
もくじ
ピックアップとは言葉の意味通り拾い上げる。つまりコントラバスの音を拾ってくれる機材の総称です。音を拾うものの代表といえばマイクですね。
声でもなんでも音を拾ってくれる。それを拡声するアンプとかスピーカーというのはまた別の機材の話になります。このマイクもピックアップの一つの種類です。今回はコントラバス用に特化したピックアップのご紹介をしていきます。
とは言ってもクラシック奏者の方は必要性を感じていない方も多いことでしょう。事実、オーケストラでもアンサンブルでもソロでも演奏会でマイク立ててスピーカーから音出すなんてことはしないですもんね。
でもこれはホールという会場のおかげでもあります。クラシック系の演奏者も年々演奏する場所に変化が出てきています。ロックバンドと弦楽の融合であったり、ライブハウスでクラシックを演奏してみたりと音楽的にも演奏環境的にも多岐に渡るようになりました。
このような場面で慣れておかないといけないのがPAシステムと音響さんたちとのコミュニケーションと音作り。クラシックの演奏者は音色と音量バランスを自身でコントロールすることに長けています。
アンサンブル全体がどのように響いてお客さんに届いているかイメージしながら演奏されています。でもPAシステムのある環境では外音、お客さんが聴いている音を作っているのは音響さんです。そしてマイクとスピーカーを通して出てきた音は手元のコントラバスから鳴っている音色とはどうしても変化してしまうんですね。
なので奏者は音響さんとコミュニケーション取れていないと自分の求める音にはならないわけです。
そして必要な発想として、音を音響さんに送るところまでは自分でコントロールできる。鳴らした音を電気信号に変えて送るところまでは、今まで自分で楽器や弓、弦や松脂を選んだように自由に選べるというわけです。PAシステム下においてピックアップというのは音の入り口です。音響さんにお任せすれば現場にあるマイクで音を拾ってくれますが、この音の入り口であるピックアップにも拘ってみてはどうでしょう?
ピックアップには3タイプの音を電気信号に変える方法があります。
各タイプがどのようなものかみていきましょう。
ピエゾというのは圧着素子を使って楽器の振動を電気信号に変えるもの。駒周辺に取り付ける物が手軽で一番多く販売されています。
音色もそれぞれで、傾向としては駒の先端、弦に近いところに取り付けるタイプは高音が強調された硬い音色になり、駒の脚、ボディに近いほど音色は柔らかくなるけれど少し籠りがちなサウンドになります。
マグネットタイプはエレキベースと同じシステムで、磁石にコイルが巻いてあって、その磁界の中で磁性体である弦が振動すると電流が発生するという仕組みを利用しています。
ここで注意が必要なのは、弦の芯線が磁石に反応しないガット弦やナイロン弦だと使えないということですね。中には巻線との相性で使えるものもあったりします。サウンドはエレキベース的になるのと、構造的に指板のエンド部分にネジで取り付けるというのがデメリットでしょう。
クラシックの方に多く好まれるのがマイクでしょう。最大の強みはコントラバスの「音」自体を拾ってくれること。
ピエゾは楽器の「振動」、マグネットは弦の「振動」を電気に変えていますが、マイクは音という空気の「振動」を電気に変えます。どれも「振動」ですが、楽器が音を出すという仕組みのどこで振動を捉えているかんがえると分かりやすいかもしれませんね。
弦が振動し、駒がボディに伝え、ボディが共鳴して空気を震わす。なので外部からの影響という意味では弦の振動を拾うマグネットが影響を受けにくく、楽器から放たれた空気の振動を拾うマイクが一番影響を受けます。要は近くの他の音も拾っちゃう。なので大音量のバンドの中では相性が悪かったり、ハウリングを起こしやすいというデメリットがあります。
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スイスのメーカーでアンプまで一通りのコントラバス用システムを販売しています。こちらは駒に取り付けるタイプのコンデンサーマイクです。マイクとは言っても駒に直接取り付けているので空気感というのはあまりないですが、それでもかなりナチュラルにコントラバスの音を拾ってくれます。
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リアリストといえば、コントラバスピックアップの中で一番メジャーで使用頻度も多いメーカーでしょう。リアリストは駒の足の下に挟むピエゾタイプです。そのラインナップの中でピエゾ素子を木材で覆った商品です。通常版の銅で覆ったタイプより輪郭がはっきりするので音の立ち上がりが不明瞭になりがちなE線のアルコでも追従してくれます。
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駒の改造が必要ですが、アジャスタータイプのピエゾピックアップ。このモデルは両足から音を録るのでG線からE線までバランスよくパワフルに鳴ってくれます。また、E線側からのみ出力することも可能で、この場合若干芯がソフトになりマイルドな音色になるので、音楽の種類によって使い分けられるのも魅力です。
https://www.soundhouse.co.jp/products/detail/item/252141/
駒とテールピースの間の弦に取り付けて楽器の音を録るコンデンサーマイク。弦楽器専用にチューニングされている高感度タイプ。マイクスタンド にマイクを立てて録ろうとすると楽器の向きによって音が変わってしまいますが、楽器の鳴りに影響を与えないように取り付けてあるのでマイクを気にせず演奏に集中できます。
自然な音色でどんなタッチも明瞭に集音してくれますが、大音量の中だと周りの音に影響を受けやすいのが唯一のデメリット。
https://abendrot-int.co.jp/eartrumpetlabs/nadine/
今回一番高額なものとなりますが、コントラバス専用に設計されたハンドメイドコンデンサーマイク。こちらも駒とテールピースの間の弦に取り付けるタイプです。楽器本来の音をフラットに集音し非常に解像度の高い再現を実現しています。まだあまり有名ではないですが、世界の名だたるプレイヤーが使い始めた大注目のモデルです。
どのタイプが良いかは使用する環境にもよりますが、ナチュラルに楽器自身の音を増幅するという意味では駒に取り付けるピエゾか、楽器に取り付けるタイプのマイクがおすすめです。
片っ端から試してみるしか選び様がないというのも事実です。楽器屋さんに頼めばある程度の種類を試奏させてはくれますが、そうは言ってもなかなか出来ないもの。試奏はよかったのにステージでは全然印象違ったというのもよくある話です。
ステージで使うというのが非常に大事で、ちゃんとステージ上で他の楽器と一緒にPAシステムを通してどうだったかという経験がないと自分にとって良し悪しなんて判断なんて出来ません。ご自身でトライ&エラーを繰り返すのもアリですが、すでにそれをやってきた人たちに相談に乗ってもらえたら助かりますよね。ましてや今回ご紹介したものはそこそこ高額商品でもあるので買い換えるのにも予算の都合もありますし。
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やりたいことを実現するためのレッスンですから、やりたいことができる環境というのは非常に大事です。
今回はクラシックプレイヤーに向けたピックアップというかなりピンポイントな内容となりました。クラシックの技術と音楽性を使ったライブ等、今までは必要なかった機材などの知識も必要になってくる時代です。新しい音楽にもどんどんチャレンジしてコントラバスの様々な魅力を楽しんでくださいね。