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JUN,2017
JUN,2017

ストラディバリを輩出した弦楽器製作の聖地、イタリア・クレモナとはどんなところ?

# 楽器

投稿者 :Natsu

古くから弦楽器の製作の地として栄え、今もなお世界中の人を惹きつけるイタリア・クレモナ。ヴァイオリンを語るうえで、セットのように語られるクレモナは一体どんな街なのでしょうか。そして、バイオリンをはじめとした弦楽器の製作の現状は、どのようなものなのでしょうか。

クレモナと東京に工房を持ち、コントラバスとチェロの製作を行う鈴木徹さんに話をお聞きしました。

イタリア・クレモナとはどんなところ?

クレモナ ヴァイオリン

クレモナ(Cremona)は北イタリア・ロンバルディア州にあり州都・ミラノの東南東約75kmのところに位置します。国立の弦楽器製作学校があり、主にヨーロッパ各国やアジア圏から楽器製作の技術を学びに多くの人がやってきます。

人口はおよそ7万人と小さな町の中に、弦楽器の工房の数が180~190、工房を持たずとも楽器製作者として活動している人が約200人、さらに弦楽器の製作を学んでいる学生も多数おり、全体で500~600人もの楽器製作に携わる人が暮らす、文字通り楽器製作の街です。

弦楽器だけに限っていうとアメリカのボストンやシカゴ、ドイツのミッテンヴァルト、イギリス・ロンドンといった地も挙げられますが、製作者の人数では比較にならないほど、クレモナが抜きんでています。

そもそもクレモナ弦楽器製作として有名になったのは、古く16世紀にさかのぼります。16~18世紀にかけてヴァイオリン制作が盛んになり、クレモナの地だけで弦楽器が2万個以上も作られたといいます。

クレモナ 楽器製作

なかでも17世紀後半から18世紀にかけて活躍したアントニオ・ストラディバリグァルネリ・デル・ジェスといったヴァイオリン製作者は名工として崇められ、現在に至るまでその名を馳せています。

彼らが生きた時代は、ちょうどヴァイオリンが広まった時代と重なり、非常に需要が高かったようです。量産を求められた時代に、徹底的に質を求めて製作したのが、いまもなお支持され需要があるゆえんでしょう。

ストラディバリは生涯で1000を超える弦楽器を製作し、現在も600ほど世界各地で大事にされているというから驚くばかりです。

楽器製作者は、どうしてクレモナを目指すの?

クレモナ ストラディバリウス

弦楽器の製作の地として選ぶのが、どうしてクレモナなのか? これには様々な回答があると思いますが、ヴァイオリン製作が盛んになった背景のひとつが立地。クレモナ市内にはイタリア一長いポー川が流れ、交通の要所として栄えてきました。

弦楽器の原材料となる木材の輸送の面でも好立地ということもありますが、しかし、現在もなお弦楽器製作地の聖地として崇められる最大の理由は、やはりストラディバリやグァルネリといった製作者が暮らしたということは非常に大きいといえるでしょう。

街全体として楽器製作者を育成しようという姿勢があり、何よりもたくさんの職人が暮らすことで、情報交換がしやすいといった環境も、学校を卒業した後に、その地に残って楽器製作を行う後ろ盾となっているようです。

今回、お話を聞いた鈴木さんもクレモナに工房を構えていますが、気候の面でいえばイタリアも日本も大差はないといいます。大きな差でいえば、かの地に流れる「空気」。クレモナはのんびりゆったりとした田舎町。

東京だと、どうしてもせわしなく日常を過ごしてしまいがちですが、クレモナに滞在している時は、ゆったりとした時間の取り方になります。どちらが良い、悪いということではなく、クレモナで過ごすゆったりとした空気の中で作る楽器は、その姿勢が手がける楽器に映し出されるのでしょう。

日本人からすると、イタリア人は皆オープンマインドなイメージがありますが、クレモナの人たちは落ち着いていて、前述したイメージとは少し異なるそうです。

ヴァイオリンは年月が経つほどにいい音色になるものか?

クレモナ チェロ

今から20~30年ほど前は、クレモナで製作されるヴァイオリンの多くはある特定のニスが使われており、塗布されたニスを見ればクレモナで作られたことが一目瞭然でしたが、現在は特に区別するような判断材料はありません。

製作の技術は日進月歩にも思われますが、ことヴァイオリンに関していえば、改良を加えながら完成したのではなく、16世紀中旬に突如としてほぼ完成形で登場したと言われています。17世紀にはその技術は確立され、その後は大きな進化はないようです。

そのような背景もあり、200~300年前の楽器であっても、メンテナンスを施すことで現代においても素晴らしい音色を響かせてくれるのです。

ここでひとつ。

ヴァイオリンは古いものほどいい音を奏でるものなのでしょうか?

これは答えを出すのが難しいようです。楽器は演奏しながら味わいのある音に育てていくことができるので、新品の楽器には出せない魅力があることは確か。ただし、現代に作られた新品の楽器は修繕の必要がなく健康な状態。狂いのない正しい音を出しやすいのは新品でしょう。

とはいえ、音色の好みは十人十色。どちらが良い、と判断するのはあまり意味のあることではないかもしれません。

今回、お話を聞いた方
鈴木 徹(すずき てつ)さん
コントラバス、チェロ製作者。日本大学哲学科卒業後、イタリア・クレモナにあるIPALLに入学し弦楽器の製作を学ぶ。在学中よりEmilio Slaviero(弓製作者)工房で働き、2011年にクレモナに工房を開業、2016年に東京・下井草にも工房を構える。代官山音楽院、CHICAGO SCHOOL of VIOLIN MAKINGでコントラバス製作も教えている。
オフィシャルサイト

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