【初心者必見!】クラリネットのチューニング方法や手順を現役講師が解説
投稿者 :中島彩香
クラリネットは管体全体が「グラナディラ」という木材で完成された木管楽器です。
とても硬く、大きな響きを放つ事が出来る特徴がありますが、湿度や温度変化に繊細な面があります。特に日本は四季折々気温も変化が激しい為、クラリネット奏者は湿度・温度変化を考慮した中でチューニングを行なっているのです。
今回は、クラリネットのチューニング方法と安定した音程を維持するためのコツやポイントを一挙にご紹介していきます。
もくじ
個人で楽器を吹く方にはあまりチューニングにこだわる方も少ないかと思いますが、クラリネットは、多くの和音を出す事が物理的に不可能な『単音楽器』となります。まれに現代曲で重音を出す場面はありますが、テクニック的にほんの数小節の部分のみで、ほとんど一音のみで演奏されます。
個人レッスンでも講師と一緒に『デュエット』スタイルで演奏する部分が出てまいりますので、最初のうちはご自身のみの音を聴いての練習となりますが、慣れてくると、他の方と一緒の『アンサンブル演奏』の機会は多くなるかもしれません。
そうなった場合、一方の奏者はチューニング済だったとしても、もう片方の奏者が音程を気にしていない状態ですと、心地よいハーモニーを作ることは難しくなってしまうでしょう。
人間にとって心地よいと感じるハーモニーの音程は存在します。同時に耳障りだなと感じる音も生活の中で耳にしたことがあるのではないでしょうか?
演奏する上でチューニングなどの「音程の確認」はとても大切な事ですが、何ら難しい事ではありません。手順と楽器の特徴を把握いただければ、どなたでも調整可能で、演奏をより深く楽しむ事が出来るでしょう。ご自身以外、2人以上での演奏が発生する場合は、必要になると認識いただければと思います。
個々に応じてチューニングのタイミングは異なるので一概には言えませんが、アンサンブル・合奏を行う前、ウォーミングアップ終了後、演奏中の合間、休憩後の演奏再開時など、こまめに状況が分かれております。それ以外にもチューニングする場面は個々によって存在するかと思いますが、ここでは上記一部分をご紹介していきます。
それぞれ楽器のウォーミングアップを終えていざ合奏!となった場合、一人一人が音程がバラバラですと大人数での心地よいサウンド作りは難しいでしょう。人数が増えるほど、同じクラリネットパート同士で音程を確認し、木管楽器、金管楽器、全体チューニングと、細かく分けてチューニングを行う団体もございます。
楽器もケースから出していきなりチューニング行っても、楽器が冷えている状態である事が多いため、チューニング後すぐに音程が変動する可能性があります。
人間の身体と同じように楽器もウォーミングアップにより、温めさせてからチューニングを行ったほうが良いでしょう。合奏や演奏している最中は、ケースに入ったままの温度ではないからです。
ある程度耳が肥えてきますと、演奏中に『音程が変化した』と感じ、違和感を抱くようになります。これは絶対音感とは異なり、楽器を長く続けている方には、自身の吹いている楽器の音の音程を記憶として認識出来る能力が備わってくるためと言われています。そうすると、記憶の中の音と違うと感じ、違和感を覚えるそうです。そうなると演奏中も気になりますので、合間を見て音程を確認される方も多く見受けられます。筆者もそのうちの一人です。
長時間の練習で、休憩を挟む事があるかと思います。演奏中の楽器の温度と比べますと、休憩中に何もしない状態ですと、楽器の温度は多少下がる傾向にあります。(環境や季節により、変動はあります)
演奏再開時には、音程も変化しておりますので、ある程度温度を戻した際に再度チューニングを行っておくと良いでしょう。
簡潔に申し上げますと基準の音に対して自身の楽器の音程を合わせる工程となります。さらに大まかにお伝えしますと基準の音に対して「高い」か「低い」かによって調整を行います。管楽器、弦楽器、打楽器によって、チューニング方法は様々です。
例えばギターなどのチューニングは、音程を上げたい場合、弦をより張って調整し、下げたい場合は弦を少し緩めながら調節していく作業を行います。
上記でもお伝えしましたが、クラリネットは、温度によって音程が上がったり下がったり顕著に変化していきます。
休憩がもし長時間になるようでしたら、一度楽器ケースにしまってから休憩する事をお勧めします。特に夏場では、クーラーのよく効いたお部屋に長時間置いた結果、クラリネットの接続部分が抜けなくなってしまい、その日はケースにしまうことが出来なかった方を実際何人か拝見してきました。これは、演奏最中は温まっていた楽器が、休憩中全く吹いていない環境下で、冷房による急激な温度変化も合わさり、接続部分の金属が収縮して抜きづらくなってしまったのではないかと考えられます。
クラリネットにはたくさんのキィが備え付けられておりますので、力づくで抜こうとすると、別のキィを曲げてしまい、調整が狂ってしまうことも考慮し、その方は後日再度試みたところ無事に抜けたそうでした。まさか接続部分の金属の一部が収縮するとは思ってもいなかったようで、木管は細かな箇所が多いので、慎重に取り扱う必要がありますね。
クラリネットは乾燥した環境下で保管する事を進めておりますが、ごく稀に乾燥が原因で調整が変化することもあります。
トーンホールという、穴の空いている部分がいくつかありますが、その上に被さるように『蓋』のある箇所が、下管にいくつか取り付けられております。その蓋についていつ白くて丸いクッションを『タンポ』と言います。その『タンポ』は乾燥などで稀に変形してしまう事もあるようです。変形したタンポは、上手くトーンホール(穴)にフィットしなくなるので、響きが弱くなったり、楽器が共鳴しなくなり、音が鳴らなくなってしまう可能性も出てきますので、異変を感じたらすぐ楽器屋さんで調整してもらいましょう。
不健康な状態の楽器で無理やり演奏しても、癖がついてしまい、上達から遠ざかってしまうでしょう。
冬場、特に気をつけていただきたいのはクラリネット管体の割れです。
バリンッと勢い良く割れるのではなく、「ピシッ」とヒビが徐々に進行してくるような割れが管楽器に起こります。一度入ったヒビ割れは、楽器屋さんに持っていっても完全な修復は難しいとの事で、目立たないように隠す対応が精一杯との事でした。
そうならないように、なるべく未然に割れを防げるよう、原因と対策をお伝えいたします。
割れの原因は大きく2つが考えられており、寒い日にいきなり大音量で楽器を吹く、ストーブやエアコンで直接楽器を温める行為などが挙げられます。
『木』は、冷え切っている時は、身体が縮こまっている状態にあります。人間の身体に例えると、冬の朝は体温も低く、筋肉が収縮している状態をイメージできることでしょう。
そんな状態で、いきなり暖かくて湿った人間の息が一気に吹き込まれたら、管体の内側は膨張しますが、管体の外側は冷え切った状態のままなのです。楽器の内側と外側で温度差が生じて、膨張に追いつけなかった外側の管体がダメージを受けて、ヒビ割れを引き起こしてしまうのです。
楽器を吹く前に、楽器をよく自分の手や体温を使ってしっかり温めてください。冷え切った部屋で吹くよりは、室内の温度を上げておきましょう。手っ取り早く温めたいからと言って、楽器を直接エアコンやストーブの風に当てる事は絶対にしないようにしましょう。これも急激な温度変化を引き起こし、割れの原因になります。
手で温めたら、いきなり吹かずに内側に暖かい息をゆっくり吹き込んで見てください。楽器の外側と内側から焦らず温度を均一に上げていきましょう。
その一手間で、何十年とクラリネットは現役で輝き続ける事が出来るのです。次第に愛情も芽生えてきますので、この作業も楽しくなってくる事でしょう。
全ての団体とは言い難いですが、一般的に「オーケストラ」と「ブラスバンド」によりチューニング音が異なります。
オーケストラは「A」の音でチューニングを行います。Aはドイツ語で「アー」と呼びまして、ドレミファソラシドの音の中では『ラ』の音を指します。オーボエが基準となり、そのオーボエの音程に合わせて各奏者がチューニングを行うのです。
なぜ『A(ラ)』の音なのかについてですが、これは諸説ありますが、古代ギリシャの弦楽器で一番低い音は『ラ』だったと言われており、そこから音階が次々と誕生していったという説があります。ほぼ成り行きに近い形でしょうか。
また、チューニングはなぜオーボエからなのかという点にも諸説ありますが、オーボエはコントロールが難しい楽器と言われており、『オーボエのコンディションに合わせる為』であったり、オーボエはクラリネットと違って音程が狂いにくい楽器なので、音程を均一に保ちやすい性質がある為、また、コンサートホールなどで、よく響き、他の奏者に伝わりやすい為、オーボエが選ばれているという様々な説があります。
ただし、オーケストラにピアノやシロフォンなど鍵盤楽器(鍵盤打楽器)が入った場合は、それらもチューニングをすることができない楽器のため、オーボエではなくピアノでAの音を出して皆がその音に合わせるという方法でチューニングを行います。
また、クラリネットは移調楽器と呼ばれている木管楽器なのも特徴の一つであります。ピアノの「ドレミファソラシド」のハ長調音階に対して、クラリネットも同じハ長調の音階を吹いたとしても、実際に鳴っている音階は、なんと2度低い『♭シドレ♭ミファソラ♭シ』という変ロ長調という音階が鳴っている事になるのです。このような、実際に鳴っている音階が異なる楽器は、クラリネット以外に、トランペット・ホルン・サックスなど多数存在しております。
それは時代も大きく関係しており、最初は移調楽器という概念はなく、改良・進化を重ねるにつれてクラリネットも様々な管の種類も増えてきました。その事もあり、オーケストラでは、楽曲によって別のクラリネットの移調管に持ち替えて、演奏される事は多々あります。
オーケストラのチューニングでは、先述で述べた『A(ラ)』の音で音出しを行いますが、クラリネットは『H(ハーと呼びます)』の運指で音出しをします。Hは五線譜内でいうところの 『シ』の音になります。指遣いこそ『シ』ですが、実際になっている音は『A(ラ)』の音になるのです。絶対音感をお持ちの方が、クラリネットなどの移調楽器を演奏されると、イメージした音と異なる音が発せられる為、慣れるまでに違和感を感じる事もあるようです。
一方吹奏楽ではチューニング音が異なります。(※全ての団体とは限りません)
ややこしいのですが、オーケストラの『ラ』より半音高い『♭シ』の音でチューニングを行います。これも諸説ありますが、吹奏楽では『トランペットとクラリネットを主流』として、それに合わせたチューニングとして基準音を決定したという説がございます。先程クラリネットは移調楽器とお伝えしましたが、トランペットもクラリネットと同様『Bb(ベーと呼びます)管の移調楽器』となります。B♭は『シ♭』を指します。この音が基準音とし、クラリネットの運指では五線譜上でいう所の『ド』の運指に値します。指づかいは『ド』ですが、実際に鳴っている音は『シ♭』が鳴っているのです。
クラリネットの音程調節は、管と管の接続部分の隙間を開けたり閉めたりする作業で音程を調節します。(※先述の画像参照)
基準音に対して自身の出した音程が高く、基準音に合わせる為に音程を下げたい場合は接続部分の隙間を開ける作業を行い、再度吹いて音程が下がったのか確かめます。
基準音に対して自身の音程を上げたい場合は隙間なく接続部分を閉める事で、音程が上がったか確認を行います。
開け閉めする接続部分の箇所はタルと上管の部分から調節していきます。夏場はそれでも音程がなかなか下がらない日が多くなります。その時は、上管と下管の 接続部分または、マウスピースとタルの接続部分を開閉することもあります。
冬はなかなか楽器が温まらない事が多いので、チューニングに苦労することもありますが、楽器の外側と内側からゆっくりと地道に温めていく必要があります。
突然ですが、ホースから流れる水をイメージしてみましょう。
ホースの先端を狭めると、水は遠くの距離まで飛んでいくかと思います。
このように、マウスピースを加えるアンブシュア(口の形)をよりキュッと唇を締めることにより、息の流れをより狭めた状態でマウスピースに息が送り込まれます。その事により、自然と管内に流れる息の流れが早くなりますので、音程が少し上がる事があります。
別の例えでお伝えしますと、寒い日に冷えた手を暖める時に「ホーッ」と柔らかい息を吹きかけた経験はありますでしょうか?鋭い息の流れではなく、柔らかくてたっぷりの息を吹きかけるようなイメージかと思います。
それとは対照的に、ラーメンなどの熱いものを冷ます時の息の吹きかけ方を思い出してみましょう。先程より強くて勢いのある息で吹きかけるようなイメージを思い浮かんでいただいたかと思います。
このように、楽器も息の緩急と口の締め付け具合によって、管内に流れる息に変化が生じます。それは音程や音量にダイレクトにあらわれてきますので、吹きながらいろいろと変化を楽しんでまいりましょう。
クラリネットで特に音程が高くなりやすい音があります。
メーカーによりますが、五線譜内の『ソ』の音が該当します。指づかいとしてはどこもキィを押さない為、楽器の支えが不安定になりやすい運指ですので、音程もコントロールが必要になります。
この場合は、右手のトーンホール(穴)をがっしりと塞いでしまいましょう!音が変わらない?大丈夫?と感じるかもしれませんが、実は『ソから上の音域は右手を押さえても音に影響しない』のです。しかも、右手を押さえたほうが『音程が上がりすぎるのを防ぐ』事も期待できるのです。楽器の支えも安定しますし、技術面での負担軽減も見込めるかと思いますので、ぜひともお試しくださいませ。
日本のオーケストラや吹奏楽など多くの団体はピッチ442Hz(ヘルツ)あたりが一般的と言われております。これは、より輝かしいサウンドの響きを求めて
442〜446あたりでチューニングを行っているという説があります。
本来は、「440」を基準としていたようで、夏場など季節に応じて基準値を変化させる団体も存在しております。
楽器を始めてまもない方ですとチューナーを使用して音程を確認される方も多いのではないでしょうか?目視で確認出来るので、とっても便利な機能ですが、デメリットもございます。
それはチューナーに頼りすぎて耳が鍛えられないという可能性が出てくるかもしれません。クラリネット温度変化が顕著な楽器ですので、最初にチューニングした音より上がったり下がったり必ず変動が伴います。演奏時に常にチューナーをつけたままチェックする事は難しいので、自身の耳で聞き分けなくてはならない場面が必ずやってまいります。耳を鍛える対策としてお勧めなのが、自身が演奏する楽器の音源を聴く事が有効的かと思います。音を「記憶」として覚えてしまうのです。自身の中の音色感、和音感を聴くことにより、徐々に浸透していき、やがて演奏時のイメージへと繋がったり、実際に発する音色の音程に違和感を感じるようになったり、あなたの演奏をより深くアシストしてくれる事へと繋がる可能性を秘めているのです。
いわゆる「耳が肥えてくる」ようになってくる事が期待出来るでしょう。これは、絶対音感関係なく身についてくる能力かと思いますので、是非とも積極的にチャレンジしていただけたらと思います。
毎回チューナーと睨めっこして音程を合わせるのではなく、まずは音出しの際に『高いかな、低いかな』と自身の中で予想して、その最終的な答え合わせでチラッと確認しておく程度に留めておきましょう。
クラリネットの響きをより身近に感じて、安定した音色を手に入れる為には、プロ講師によるレッスンをご受講いただく事が一番の近道なのではないでしょうか。
講師自身の経験もダイレクトに伝わり、身近でクラリネットの音色を感じる貴重な機会は、レッスンだからこそ得られる特権でもございます。
また、生徒様に応じて必要な演奏・楽器に関するノウハウをお伝えする事により、今までつっかえていた事が、いとも簡単に解消されるケースも数多く見受けられます。
EYS音楽教室では『楽器プレゼント』キャンペーンを実施しております。クラリネットはメーカーや種類も数多いので、どれを選択したら良いか分からず、始める前に楽器の購入が最初のハードルになってしまっている方も多いのではないでしょうか。ハードルを感じてしまうと、最初の一歩を踏み出しにくくなってしまいますよね。
EYSでは、楽器プレゼントキャンペーンをお選びいただいた方には、すぐに楽器を始められるようにレッスン前にご自宅に楽器をお届け致しております。初めての方でも、レッスンで最初の手ほどきをお伝えしておりますので、安心して楽器をご活用して演奏に取り掛かる事が出来るでしょう。
ご自身の楽器をお持ちいただく事で、レッスン以外でも運指の確認をしたり、思い立った時に演奏することも可能となるので、より身近に音楽を感じられますね。
数ある音楽教室の中でお勧めなのがEYS音楽教室でございます。
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まずは、お気軽に体験レッスンにて最初の一歩を踏み出していただけますと幸いでございます。
クラリネットの特徴も踏まえて、チューニングにつてお伝えしましたがいかがでしたでしょうか。
クラリネットはまだまだ奥深い楽器でございますので、日々発見が尽きず面白い存在であります。一緒に楽器を通じて充実した音楽ライフを楽しんでいきましょう!
是非ともお待ち致しております。