南米を舞台にした映画を観たことはあるでしょうか。南米の各国は社会的背景が日本とは全く異なるため、私たち日本人にとっては、作品を観ることで「非日常」を感じることができるでしょう。
今回はそんな南米を舞台にした映画の中から、音楽が特徴的な7作品をご紹介します。
世相を反映したセンセーショナルなテーマを扱う作品が多いですが、映画を通して何かを感じ、得るものがあるかもしれません。ストーリーはもちろん、音楽も一緒に楽しんでみてください!
もくじ
主人公はメキシコの富裕な家庭出身のフリオとテノッチ。高校卒業をした彼らですが、二人とも彼女はバケーションに出かけていて溢れるエネルギーを持て余していました。パーティーなどに出かけるものの、後に残るのは虚無感ばかり。
そこで、2人はスペイン美女ルイサをナンパして旅に連れ出すことを画策します。ルイサは夫から不倫したことを告白され、そのショックからフリオとテノッチの誘いに乗るのです。
3人は車を乗り回し陽気にメキシコの旅を楽しんでいますが、「今」を楽しく生きる彼らと対照的に、劇中には麻薬戦争による衝撃的なシーン、重装備の軍隊がパトロールをしている姿など、厳然たるメキシコの現実に関する描写もあります。死と生のコントラストが強烈な映画です。
劇中挿入歌のほとんどが、軽快でノリノリになれるメキシコ音楽で構成されています。映画を観つつ、その挿入歌を聴いているだけで元気になれること間違いなしです。
革命家チェ・ゲバラの若き日の南米旅行記を元に映画化した作品です。
舞台は1952年アルゼンチン。当時のチェ・ゲバラは医学の道を志す学生でした。しかし、チェは大学を休学し、友人のアルベルト・グラナードと共にバイクで南米大陸横断の旅に出かけることに。
旅の道中、チェはチリの鉱山で過酷な環境で働く労働者、ペルーのマチュピチュに暮らす先住民の貧しい暮らし、隔離されたハンセン病患者など南米社会の厳しい現実を目の当たりにします。この旅が後にゲバラを共産主義革命へと駆り立てるきっかけとなりました。南米の人々の生活風景の描写が印象的な映画です。
そして、終始流れているギターの音色にも気を留めてみてください。ちなみに、ウルグアイのシンガーソングライターのホルヘ・ドレクスレルによる映画の主題歌「河を渡って木立の中へ Al Otro Lado del Río」は、2004年のアカデミー賞歌曲賞を受賞しています。
主人公はコロンビアの田舎町に住む17歳の少女マリア。彼女は農場で働くことで家計を支えていましたが、ささいなトラブルで農場を辞めざるを得なくなります。日々の生活に嫌気を感じたマリアは、首都・ボゴタに新たな仕事のチャンスを求めに行くことに。
しかし、ボゴタを目指す道中で出会った男からアメリカに麻薬を運ぶ仕事を紹介され、大金が稼げることから安易に仕事を請け負います。マリアはアメリカへと飛行機で向かいますが、機中や現地に着いてからも様々なトラブルに見舞われます。待ち受ける困難、そして異国の地で、己の進むべき道を探していくというストーリーです。
コロンビアの抱える非情な現実を描いたことで、劇場公開された当時は物議を醸した作品でもあります。
コロンビアはサルサが盛んな国であり、映画の中でもサルサやラテンミュージックが流れているので、ぜひ音楽にも耳を傾けてみてください。
舞台は1997年のブラジル、リオデジャネイロのスラム街ファべーラ。ギャングがはびこるフェべーラでは、本来、正義のために戦う警察官も賄賂を受け取ったり保身ばかりで機能していません。
そんな地で、正義のために戦う唯一の存在が警察特殊作戦部隊(BOPE)。正義のためと言ってもBOPEは殴る、蹴るなど暴力を使ってギャングを壊滅させる最悪最強の部隊です。
そんなBOPEに勤めているナシメント大佐は一向に終わりが見えないギャングとの闘いの日々に疲れを感じ始めていました。そこで警察官として勤務し始めた正義感の強いマチアスとネトをBOPEの隊員として採用し、後継者にすることにしました。しかしある日、ネトがギャングに殺害される事件が起きます。そこからギャングとBOPEの全面戦争が繰り広げられるというストーリーです。
ブラジルのラップデュオCidinho e Docaなどによる、ラップミュージックが随所に使われています。ギャングによる衝撃的な内容とは対照的に、陽気な音楽が不思議とマッチしています。
1960年代後半から1980年代の初頭、ブラジルはリオデジャネイロのスラム街ファベーラが舞台の作品。
主人公は暴力が嫌いなブスカぺ。ブスカぺの兄弟や友達は貧困から抜け出すため麻薬を売るギャングになり、縄張り争いを繰り広げます。そのギャングの中で頭角を現したのが、リトル・ゼ。
悪の限りを尽くすリトル・ゼはある時、元軍人のマネを襲撃し、マネの家族を殺害。これをキッカケにリトル・ゼとマネを仲間に引き入れた別のギャングとの全面戦争が繰り広げられます。救いようのないギャング同士の闘争を描いた作品。
残酷なストーリーではあるものの、映画のBGMとして流れている音楽は妙に陽気で軽快。それは当時のブラジル・ファベーラにおける人の命の軽さを物語っているようです。
アルゼンチン・ブエノスアイレスの連邦刑事裁判所を定年退職したベンハミンは25年前に起きた 事件を題材に小説を執筆することにしました。
その事件は、若い美人の女教師カルラが自宅で暴行殺害された凄惨なものでした。犯人の捜索は難航しますが、夫のリカルドは単独で犯人を捜し続けます。その姿を見たベンハミンは心打たれ、上司イレーナを説得して執念深く犯人を捜し続けます。遂には犯人を捜し出して逮捕しますが、巨大な力が動き犯人はすぐに釈放されてしまいます。
犯人が釈放され、ベンハミンは命の危険にさらされることに。恋心を抱いていたイレーナに対して想いを打ち明けることも叶わず、地方へと異動することになりました。時は流れ25年経ち、ベンハミンは事件当時の出来事を回想しつつ、イレーネ、リカルドを訪問します。訪問して話をする中で、ベンハミンが予想してもいなかった事件の真相が明らかになっていきます…。
もちろん音楽にもご注目を。Emilio Kauderer 氏とFederico Jusid氏が作曲し、ブルガリアシンフォニーオーケストラが演奏を担当したドラマチックで気品のある音楽もお楽しみください。
ブラジル・サンパウロ最大のスラム街エリオポリスの公立学校で、子供たちによる交響楽団を結成するまでの実話を描いた作品です。
元ヴァイオリニストのラエルチがヴァイオリンを教える教師として赴任。貧しい家庭出身の生徒は今を生き延びることに必死。そんな環境においてクラシック音楽を奏でる余裕はなく、見向きもされません。当然、子供たちは楽譜も読めないし、楽器の演奏もできません。
ある時、ウエルチが強盗に襲われ銃を突き付けられます。しかし、ウエルチは彼らの前でヴァイオリンを演奏し銃を下ろさせました。この話を聞いた生徒は音楽に興味を持ち、熱心に練習に取り組み始めて遂には交響楽団を結成します。音楽が将来に希望を持てなかった生徒の人生を変えていくことになります。
劇中挿入歌は映画のストーリーにふさわしくモーツァルト、ブラームス、チャイコフスキー作曲による名曲の数々。なじみのある曲が出てくるかもしれませんよ。
南米を舞台にした作品には、日本や欧米とは全く異なる南米社会の現実を描いた作品が多いことがお分かりいただけたのではないでしょうか。
私たち日本人にとっては、非現実的にも受け取れる別の世界を垣間見ることができるでしょう。
ちょっとスパイシーなストーリーでも、劇中では南米独特の軽快で陽気な音楽が終始流れています。音楽を楽しみながら、ユニークな南米映画の数々を観てみるのはいかがでしょうか。
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