約120分の映像に花を添える存在、「映画音楽」。作中に流れる音楽がその作品の評価を左右することも多く、映画監督が脚本やキャスティングと同じ比率で重視する要素だともいわれています。
今回ご紹介するのは、「チェコ」を筆頭とする「東欧(東ヨーロッパ)」の国々が舞台の映画たち。ストーリーやキャスティングはもちろん、作品を盛り上げる映画音楽にも触れていきます。
もくじ
エミール・クストリッツァ監督作品の『黒猫・白猫』は、1998年に開催されたヴェネチア映画祭で大きな話題を呼んだ長編映画。
東ヨーロッパのバルカン半島に位置するユーゴスラビア・現マケドニア、ドナウ川が舞台で、2組の男女のラブストーリーを軸にしつつも、巨額の詐欺事件や石油列車強奪計画など、クレイジーな展開が次ぎから次へと押し寄せるヒューマンコメディ映画の傑作といわれています。
作中を盛り上げる音楽は、西アジアやヨーロッパなどで広く浸透されている「ロマ音楽」です。コメディ映画ということもあり、ちょっとマヌケな雰囲気を漂わせる、コミカルな曲調のものが多い印象。
サクソフォンやクラリネットを中心とするブラスバンド形式の楽曲も少なくありません。気が抜けるような音楽をあえて使用することで、コメディ映画の真骨頂である“くだらなさ”や“シュールさ”が引き立っているのではないでしょうか。
いわずと知れた、ポーランドが生んだ“ピアノの詩人”、「フレデリック・ショパン」。「学聖ショパン」はそんな、フレデリック・ショパンの伝記映画であり、今から半世紀も前の1945年に製作された作品です。
伝記映画ということで、ショパンの半生を描いているのはもちろん、ショパンと肩を並べるロマン派の代表的作曲家、「フランツ・リスト」との関係も描写。
ロマン派の代表的音楽家であり、“ピアノの魔術師”とも呼ばれているリストとショパンの絆を描く物語でもあるのです。
作中に流れる音楽は、ピアノソロを中心とするクラシック音楽。ショパンが作曲した歴史的名曲、「幻想即興曲」を実際に演奏するシーンには食い入ってしまうことでしょう。
「シンドラーのリスト」は世界的映画監督、「スティーブン・スピルバーグ」氏が10年もの歳月をかけて作り上げた傑作映画。アカデミー賞では、作品賞を筆頭に7部門を受賞した作品でもあり、世界中に多くのファンがいる感動のヒューマンドラマです。
舞台は1939年、第二次世界大戦中のポーランド南部・クラクフ。ナチスドイツによる侵攻を受けている渦中で、1200人のユダヤ人を虐殺から救うべく、ドイツ人実業家、「オスカー・シンドラー」が奮闘する姿が描かれます。
シリアスなシーンが多いことから、作中に使用される音楽は悲壮感漂うものが多い印象。クラシック音楽をベースに、繊細かつダイナミックな楽曲の数々が、物語に悲しげな花を添えています。
また、本作品のテーマ曲は、先日引退を表明したロシア代表のフィギュアスケート選手、「ユリア・リプニツカヤ」さんがフリープログラムで使用したことでも有名。クラシックがお好きな方は、もう一度この名曲を聴きなおしてみては?
「誰もがハッピーになる、究極の婚活ムービー」という一風変わったラブコメディ、それが「ウエディングベルを鳴らせ!」です。
カンヌ国際映画祭で2度も「パルムドール(映画祭における最高賞)」に輝いた「エミール・クストリッツァ」監督が贈る名作であり、セルビアの山奥に住む主人公、「ツァーネ」が花嫁探しに奮闘する姿に心癒やされます。街中で一目惚れした可憐な女学生、「ヤスナ」との恋愛は見物です。
クストリッツァ監督の作品といえば、映像だけでなく音楽も魅力。コメディ映画である本作を盛り上げるのは、ちょっと“おちゃらけた”ジプシー音楽で、馴染みやすくノリの良いものばかりです。ツァーネの一途なピュア・ラブストーリーをコミカルな音楽で盛り上げる演出は“さすが”の一言。婚活中の人も、そうでもない人も、是非一度ご覧あれ!
「コーリャ 愛のプラハ」は1996年度のアカデミー賞・外国語映画賞を受賞したヒューマンドラマ。「ロウカ」という55歳の独身チェリストと、5歳の少年、「コーリャ」の交流が、社会主義崩壊直前のプラハを舞台に描かれます。
本作品はストーリーもさることながら、コーリャという少年の可愛らしさとユーモア溢れる台詞も魅力。キャストオーディションで選ばれ、5歳のコーリャ役を演じることになった「アンドレイ・ハリモン」の演技は秀逸であり、多くの映画ファンの心をわしづかみにしました。
この映画はチェロ奏者が主人公ということもあり、作中の音楽も高い評価を得ています。チェコを代表する作曲家である「スメタナ」や「ドヴォルザーク」の楽曲を採用し、ロウカとコーリャが寄り添って生きる姿を、時には明るく、時には悲しい曲調の音楽で演出しています。涙無しでは見られない、チェコ発の感動作品です。
1960年代の旧チェコスロヴァキアを舞台に、若者たちの平穏な日々を描くミュージカル青春物語、「プラハ!」。一見すると明るくユーモアに溢れた映画のように思えますが、その実は、旧ソ連軍の侵攻を鮮明に描いた社会派作品でもあります。
色取り取りの衣装と、軽快なステップを刻むキャスト陣が魅せるミュージカルシーンは必見。古き良き、ヨーロッパの牧歌的風景が楽しめるのも同作品ならです。
これまで紹介してきた作品はクラシックやジプシー音楽が中心でしたが、本作を盛り上げるのは既成ポップス。「ナンシー・シナトラ」の「シュガータウンは恋の町」や、「ペトゥラ・クラーク」の「恋のダウンタウン」など、ポップスの名曲をチェコ語で歌ったものがミュージカルシーンで使われています。ユーモアとシリアスのバランスが絶妙な、隠れた名作的なミュージカル映画です。
いかがでしたでしょうか? 今回ご紹介したのはユーモア溢れるコメディ作品から、感動のヒューマンドラマまで、東欧が舞台の名作ばかり。
上から下まで“イッキ見”すれば、東欧の各国を旅しているかのような気分に浸ることができます。次のお休みは、映画でヨーロッパ旅行を楽しんでみては?
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