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OCT,2021
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午後のカフェタイムにぴったり!優雅で楽しいブラジル音楽『ショーロ』

# 音楽ネタ# 音楽ーアーティスト

投稿者 :ミュージックレッスンラボ編集部

南米ブラジル生まれのポピュラー音楽ショーロ(Choro)。
19世紀のリオデジャネイロ発祥で、当時の上流階級の間で流行していたヨーロッパ起源のポルカなどの舞踏音楽を現地のポピュラーミュージシャンが真似て、独特の訛りを持った音楽へと変化していったことがショーロの誕生と言われています。ショーロはすぐにカリオカ(リオっ子)の日常に定着し、のちにサンバやボサノヴァの誕生にも大きな影響を与えました。

今回は“ブラジル最古のポピュラー音楽”とも呼ばれ、今も人気で各地で演奏されているショーロの魅力に迫ります。
記事末尾にはSpotifyのプレイリストもご用意しました。ぜひ最後までお楽しみください!

Choro

ショーロの特徴

ジャズよりも歴史の古い即興音楽

即興を主体とした音楽としてはアメリカ合衆国生まれのジャズ(Jazz)が有名ですが、19世紀後半に誕生したショーロはジャズよりも古い即興音楽として知られています。リズムはゆっくりとしたものからとても速いものまで様々で、とくに速い曲は即興を演じるソリストの超絶技巧の競い合いも魅力的です。

音楽的な特徴としてはシンコペーションの多用、低音の対旋律(バイシャリーア)、そして独特のリズムの訛りなどもショーロの醍醐味といえます。基本的にA、B、Cと3つのパートが組み合わさったロンド形式で、1曲の中で長調と短調を行ったりきたりするような構成の曲も多く、長調から短調に転調する瞬間などは特にブラジル音楽特有のサウダーヂ(=郷愁感)が感じられると思います。

ショーロの誕生後、20世紀に入ってからサンバが誕生し、20世紀半ばにはボサノヴァが誕生しますが、ショーロは今でも根強い人気を持っています。

ショーロの主な楽器編成

もともとは6弦のクラシックギター(ヴィオラオン)、カヴァキーニョ(ウクレレに似たサイズの鉄弦の4弦楽器)、フルートという編成が一般的でした。
現在では7弦クラシックギターが低音とコードを受け持ち、カヴァキーニョ、バンドリンといったソロを取る弦楽器があり、さらにはフルート、クラリネット、サックスなどの木管楽器やパンデイロという打楽器で編成されることが多くなっています。
また、ピアノの場合はソロ演奏で弾かれることも多くあります。

稀に歌が伴うこともありますが、基本的には器楽曲(インストゥルメンタル)として演奏されます。

語源は「泣く」

ショーロ(Choro)はポルトガル語で「泣く」を意味します。これはバイシャリーア(baixaria)と呼ばれる、7弦ギターが奏でるメランコリックな低音の旋律からきていると言われています。

他にはシャラメラ(日本では「チャルメラ」の名で知られるリード楽器)を吹く人のことをショロメレイロス(あるいはシャラメイロ)と呼んでおり、それが次第にショーロに変化したという説もあります。

代表的なショーロの作曲家たち

ピシンギーニャ

フルート/サックス奏者のピシンギーニャ(Pixinguinha, 1897年 – 1973年)は“ブラジル・ポピュラー音楽の父”と呼ばれ、「カリニョーゾ」「1×0」といった今も愛される数々の名曲を遺しています。作曲家としての彼の楽曲はそれまでの古いショーロと比べてハーモニー、リズム、対位法などの面で洗練されており、ショーロの普及と発展に大きく貢献。さらにはその後のブラジル音楽の発展にも影響を与えました。
ピシンギーニャの誕生日である4月23日はブラジルでは「ショーロの日」に制定されています。

エルネスト・ナザレー

エルネスト・ナザレー(Ernesto Nazareth, 1863年 – 1934年)はショーロの最初期に活躍したピアニスト/作曲家。ショパンやベートーヴェンら西洋のクラシック音楽だけでなく、ブラジルの民族音楽からも多大な影響を受けており、素朴な作風ながら現在も愛され続ける数々の名曲を遺しています。通称“ブラジルのショパン”。

シキーニャ・ゴンザーガ

シキーニャ・ゴンザーガ(Chiquinha Gonzaga, 1847年 – 1935年)は当時の男性優位の社会において作曲家やピアニストとして活躍し認められ、“ブラジル・ポピュラー音楽の母”と称されています。優れた作品を数多く遺しただけでなく、ブラジルにおける奴隷制の廃止など社会活動にも積極的に取り組みました。
彼女の誕生日10月17日は「ブラジルのポピュラー音楽の日」となっています。

ジャコー・ド・バンドリン

ジャコー・ド・バンドリン(Jacob do Bandolim, 1918年 – 1969年)はショーロの花形楽器であるバンドリン(4コース8弦の複弦楽器)の名手であり、作曲家としても「カリオカの夜」など数々の名曲を遺しています。現在も活動を続けるショーロの名門グループ、エポカ・ヂ・オウロ(Epoca de Ouro)の創立者としても知られています。

ヴァルジール・アゼヴェード

ヴァルジール・アゼヴェード(Waldir Azevedo, 1923年 – 1980年)は、今ではショーロに欠かせない4弦楽器カヴァキーニョ(Cavaquinho)の名奏者として活躍し、それまで伴奏楽器として認知されていたカヴァキーニョをバンドリンに並ぶソロ楽器にまで引き上げました。彼が作曲した「ブラジレイリーニョ」はショーロを代表する超高速テンポの楽曲で、腕に覚えのある奏者たちがこぞってテクニックを披露する定番曲となっています。

ショーロの名曲

ショーロには数多くの名曲がありますが、中でも特によく知られている曲を紹介します。

1×0(Um a Zero)

1919年、サッカーの第3回南米選手権大会の決勝でブラジルがウルグアイを1対0で下し初優勝を飾ったことを記念しピシンギーニャによって作曲された曲です。テーマどおり、舞い踊るような躍動感にあふれたショーロを代表する名曲です。

カリニョーゾ(Carinhoso)

「カリニョーゾ」はピシンギーニャが1916年頃に作曲し、現在もなおブラジル国民の“第二の国歌”と呼ばれるほど親しまれている名曲です。器楽曲としても、この動画のように歌入りでも非常に多く演奏されており、ブラジル音楽のなかで最も多く録音された曲としても知られています。歌詞は熱烈な愛をストレートに歌う内容で、愛情表現の苦手な日本人にとっては少々恥ずかしく感じられるほど。

チコチコ・ノ・フバ(Tico Tico No Fuba)

おそらくショーロで最も有名な曲ではないでしょうか。タイトルは“トウモロコシの粉をついばむ雀”という意味で、その姿が想像できる可愛らしいメロディーが印象的です。ショーロの枠を超えて様々な編成で演奏されており、日本でも吹奏楽の定番曲になっています。作曲者はゼキーニャ・ヂ・アブレウ(Zequinha de Abreu)。

カリオカの夜(Noites Cariocas)

ジャコー・ド・バンドリン作曲の「カリオカの夜」。カリオカとは“リオデジャネイロ生まれの人”の意味で、日本で言う“江戸っ子”のようなもの。リオの夜の街、丘から見下ろす海といった光景が目に浮かびます。

PLAYLIST「幸せな午後の珈琲のためのショーロ名曲選」

ショーロの代表的な曲を20曲程度集めたSpotifyプレイリストを作成しました。
1曲2分~3分程度でお楽しみいただけます。
日常を彩ってくれる優雅なショーロの名曲・名演をぜひご堪能ください。

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Main Photoは、Otávio Nogueiraによる『Zé da Velha & Silvério Pontes』の一部切り抜きです。
出典:https://www.flickr.com/photos/55953988@N00/3621931671/in/photostream/

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