【トロンボーン】合奏で綺麗なハーモニーを作る4つのポイント
投稿者 :井浪 直子
トロンボーンの魅力は多々ありますが、その中でもやはり一番の魅力と言えるのが美しいハーモニーを奏でられるところではないでしょうか。
もちろん、他の楽器でも素敵なハーモニーを奏でることはできますが、トロンボーンだからこそできるハーモニーがあります。
それはずばり、トロンボーンは他の楽器よりも人間の声の音域に近く、唯一の「スライド」を使うことから、微妙な音程の調整も慣れれば難なくできるからなのです。
今日はそんなトロンボーンでのハーモニーの作り方についてお話ししたいと思います。
もくじ
そもそもハーモニーとは何なのかというと、複数の音が集まってできる和音のことです。
二音でももちろん和音ですが、今回は吹奏楽で最も多い三和音の説明をしていきます。
三和音でハーモニーを作る場合、3パートがやみくもに選ばれた音を吹いているのではなく、曲にあった和音を構成する3つの音を吹いています。その3つの音の役割は、和音の主の音になる「主音」と、和音の明るさを決める「第三音」と、その上の「第五音」です。
例えば皆さんよくご存知の「ドミソ」という和音は、
この様な構成になっているのです。
普段何気なく演奏している音も、パートで集まって吹いてみると、しっかりそれぞれの役割があるのです。
美しいハーモニーを奏でるには、まずこの和音の構成と、自分が3パートの中で第何音を吹いているのかを分析してみましょう。
スコアを見たり、パートでそれぞれが何の音を吹いているのかを確認しあって自分の役割を知ることが、美しいハーモニーを作るための第一歩となります。
ハーモニーを作るとき、例えば第三音は少しピッチを低めにしよう、とか、第五音は高めにしよう、などのセオリーがあります。もちろんこれは間違ったものではありません。そして、この微々たる調整がトロンボーンではスライドを使えば最も簡単にできてしまうのです!
…がしかし。
ロングトーンならまだしも、曲中で、たった一音だけを必ず狙ったスライドの位置へ動かせることなんてできるでしょうか?これはプロでも至難の技だと思います。
ではどうすればいいのか。耳で和音の響きを聴けば良いのです。
和音は主音と第五音が綺麗に響けば、自ずと第三音が聞こえてきます。この感覚がわかるまで普段の練習でハーモニーを意識して演奏すれば、曲中でも気持ちよくハモることができます。
突然ですが皆さん普段カラオケには行きますか?学校行事の合唱コンクールの経験はありますか?
楽器で考えるからすごく難しいことに感じますが、ハモる感覚は声も楽器も変わりません。
皆さんが普段から友達や家族とハモったり、音楽の授業で合唱したりするときに、ハモっていて楽しい!綺麗なハーモニーが気持ちいい!という感覚になる瞬間があると思いますが、トロンボーンでも同じです。
楽器を吹きながら、三和音を意識しながら練習しないといけないので意識することが多く難しいかもしれませんが、綺麗にハモる感覚は声と同じなので、まずはパート内で声で綺麗にハモって、ハモる感覚を養うのもいい練習かもしれませんね。
耳でハモる感覚が掴めるようになれば、スライドを気にしなくても自ずと正しいハーモニーのピッチで吹けるようになります。
そして、今から吹く和音がどういう響きをするのかがわかっていれば、短い音符でも瞬時に綺麗なハーモニーを作ることがでるのです。
ハーモニーを作る基本がわかったら、次はいよいよ実践です!綺麗にハモるには、和音の知識と確かな耳のほかに、「音色」も重要になってきます。
例えば下の図のように、3つの丸を同じ大きさの囲いの中で重ねる時、小さい丸と大きい丸ではどちらの方が重なる部分が多いでしょうか?
一目瞭然で大きい丸の方が重なる部分は多くなりますよね。
この丸がトロンボーンの音の太さだとすると、音はより太い方が他者と重なる部分が多く、ハモリやすくなる、ということなのです。
ではどうすれば「太い音」が吹けるのか。その答えは「倍音」にあります!!
「倍音」と聞くとすごく難しい物理の授業を思い出しそうですが、すごく簡単に言うと、ある音の「響きの成分」のことです。
例えば単純な「ド」の音でも、「ド」と聞こえる成分のほかに、「ミ・ソ・シ♭」などの音の成分が入っていて、その「ド」じゃない成分がたくさん入っているほど所謂「豊かな響き」になるのです。
そしてお気づきですか?この倍音の響きの成分には、先ほど紹介した和音の音が入っているのです!
太い音=倍音が豊かな音なので、倍音が豊かに響けば上図の丸の重なる部分が多くなり、綺麗にハーモニーを作ることができます。
倍音を豊かにするコツは、力任せに吹くのではなく、リラックスして、ゆっくりした息でロングトーンをしてください。そして、大きな音を出すのではなく、楽器のベルに振動を伝える感覚で吹いてみてください。
あとは、基礎練習でも曲練習でも、コンサートホールの真ん中で満杯のお客さんに向けて良い音を吹くイメージで練習すると、自ずと豊かな音で吹けるようになります!
ハモる感覚を掴み、倍音も豊かに響かせられるようになったら、最後に大事になるのがこの「バランス」です。
吹奏楽で3パートある場合、音の高低差や人数、楽器の経験年数などでどうしても1stが目立ってしまったり、3rdが大きくなってしまったり、などあると思いますが、ハーモニーを作る場合は、自分が第何音の音を吹いてるかによって、うまくバランスを取る必要があります。
だったら面倒くさいから3パートが3パート同じ音量で吹こう!というわけにはいかないのもこのハーモニーの難しいところなんです。
三和音の綺麗なバランスは、第一音をしっかり目に、それと同じくらいのバランスで第五音を吹き、第三音は少し控えめに吹く。そうするとハーモニーが綺麗に響きます。
もちろんすごく速いパッセージの時にはこのバランスにするのは不可能ですが、二分音符以上のゆっくりした動きの時には少し意識をしてみてください。
大事なことは、自分が吹いているパートよりも、和音を意識すること。
1stだから、先輩だから、複数人いるから、大きい音を吹くのではなく、ハーモニーのバランスを見ながら自分の音量を調整することも、合奏をするときにはすごく大事になってくるのです。
いかがでしたか?
吹奏楽では縁の下の力持ちとして、合奏全体のハーモニーを支えることの多いトロンボーン。
そして、トロンボーン四重奏などでは、豊かに響くハーモニーが美しい曲がたくさんあります。
トロンボーンの魅力でもあり、武器でもあるハーモニー。楽器をしっかり響かせて、しっかりバランスをとればより素晴らしいハーモニーを奏でることができます。
トロンボーンが綺麗なハーモニーを作ることで、合奏全体のバランスもよくなることでしょう。
ぜひこの「ハーモニー」を意識して、練習してみてください。