【現役音楽講師が解説】バイオリンの音が綺麗になる3つの秘訣
投稿者 :沼田翼
私がバイオリンのインストラクターをしていて一番よく質問されることのひとつに、「音が綺麗にならない」という悩み事があります。
音が綺麗にならないというのは即ち、ギシギシと音が歪んでしまったり弓が意図せずに跳ねてしまったりすることを指しています。
今回は、そんな悩みを解決して頂けたら嬉しいと思い執筆してみました。
ぜひ最後まで読んでいただき、できれば途中で実際に楽器を弾いてみるという練習も非常に有効だと思うので、試してみて下さいね。
もくじ
バイオリンは弦と弓を擦る「摩擦楽器」です。まず、バイオリンを弾く上で意識しておきたいのは“弦を弓で擦っている”ということです。
「そんなの当たり前じゃん」という声が聞こえてきそうですが、実はそんな“当たり前”が実は盲点だったりするのです。
できるだけ多くの方に共通する話題で例えてみると「大根おろしは強く擦ると辛くなる」という例えが一番近い気がします。
まず、音が歪んでしまう一番の原因として、右手の力が強すぎることが問題となっていることが多いです。
さて、意外と知られていないのですが私たち人間の右腕は何キロくらいあるでしょうか?……正解は皆さん小さい頃から馴染みのあるお米5kg相当と言われています。
酔って寝てしまっている人を運ぶ時とか、洒落にならない重さですよね。
僕達は普段筋肉によって身体の重さをコントロールしているので、さほど重さは感じませんが、筋肉で制御しない身体はこんなに重いのです。
何が言いたいのかと言うと、力(筋力)に頼らずともこれだけの重さをバイオリンに対して活かすことができ、また逆に影響を与えてしまっていることにもなります。
「音が綺麗に出ない」と悩む生徒さんに対して僕がまずレクチャーするのは、弓を弦に“ただ乗せて引っ張る”という動きを試してもらいます。
バイオリンの弓の持ち方はそんなに簡単ではないですよね。
ただ、ここでは親指と人差し指でつまむように“支えるだけ”に徹してもらいます。
そこから、右に引っ張ってみましょう(ダウンボウイングの動き)。すると意外にもしっかりした音って出るんです。
弓を持つ時、また弓だけを横にして持ち上げてみると結構重いですよね。
そう、バイオリンの弓って意外と重量があるんです。
何せ1m近くもある楽器ですから!
つまり、弓の重さに任せてあげるだけである程度の重さは稼ぐことができるので、わざわざ力任せに弾かなくてもキチンとした持ち方で弓が横に倒れないように支えるだけで綺麗な音は出せるのです。ぜひ試してみて下さい。
次に、弓の長さや位置を気にしてみましょう。音が歪んでしまっている原因として、“弓の元だけで偏った位置で弾いている”ことが挙げられます。
ただ、そう弾きたくなる気持ちはとてもよくわかります。
理由は弓の元の方がコントロールし易いからです。
人間は自分の身体に近ければ近い程制御し易いです。
もっと細分化して言うと”関節が曲がっている程”コントロールがしやすいんです。
例えば、お箸でご飯を食べる時は腕の各関節がほとんど全て曲がっているハズなんです。
お箸というあれだけ綿密な動きを意図も簡単に行うことができる民族は稀だそうです。
話が逸れかけてきたので戻しましょう。
バイオリンを初めて間もない方はほとんどが弓の元から発音しようとします。おそらく無意識のうちに
・長い弓を余裕を持って使いたい
・自分の手の届く範囲(手から近い位置)でコントロールしたい
この二つを無意識に考えているように思います。
とても解ります。携帯電話のギガも余裕を持って使いたいですよね。
ただ、この意識が逆に仇となってしまっている可能性が高いのです。弓は元に糸留め(黒い四角いヤツ)が付いているので重いです。
しかも、そこを右手で持つわけですから弓の元側は相当重いはずなんです。
なので弓の元だけで弾くと相当な摩擦がかかって音が歪んでしまう…ということになります。
逆に弓先はというとほとんど重さがないので軽く音量もそんなに出ません。これは“弓”という楽器の一長一短なところなのですが、軽いからといって弓先だけで弾いても重さが足りないので音が掠れてしまいます。
なので「できるだけ弓の真ん中で弾きましょう」と教わった方も多いのではないでしょうか?弓の真ん中で弾くことは勿論正解です。
ただ、その段階からもう1ランクステップアップして“弓先を使う”ことができると、音が綺麗になるだけでなく新たな技術も習得できることになります。
まずは、弓先で綺麗な音を出す為に必ず意識したいのは“親指と人差し指の梃子の原理”を使ってあげることになります。
バイオリンの弓はとても特徴的な持ち方をしますよね。
実は、あの持ち方にはちゃんと意味があります。特に人差し指ですね。弓を元の方から弾いていき、段々と人差し指の方に加重をかけるように意識してみます。イメージとしては丸いドアノブを左に回す感じです。
親指を支点に4本の指を順に左側に回していけると自然と弓の真ん中から弓先に加重をかけることができるので弓先でもしっかりと発音することが可能になってきます。ぜひ試してみて下さい。
最後に、弓の重さと速度の関係についてお話ししてみようと思います。今までは音が歪んでしまうことについての対応策を書いてみましたが、勿論逆の症状も沢山悩まれる方が多いです。
音が歪むことに対する逆の症状……、つまり音が掠れてしまうんですね。また掠れてしまうだけでなく弓が小刻みに跳ねてしまう現象もたまにあります。
音が掠れてしまう原因は先ほどとは逆で弓からの加重が少なすぎることにあります。
先ほど、弓をただ引っ張るだけの感覚を感じるという説明をしましたが、上記のやり方だと弓の真ん中まではある程度の音が出ますが、その先は音が掠れてしまう可能性があります。
ここで、さっきとは真逆の感覚を掴む練習をレクチャーします。
まず弓を先と元を逆さに持ってみて下さい。
先ほどの重かった糸留めが弓先に来るような持ち方になります。
なので、弓を弦に乗せないと相当な重さになると思うので右手を痛めないように気を付けて下さいね。
準備ができたら、先ほどと同じように右に引っ張ります。この場合は弓をちゃんと持って頂いて構いません。
すると、弓の元から先まである程度安定した音が鳴るハズです。
これは、弓の先にある程度の重さが得られるので弓の両端を手で持っているような感覚に近いですね。
片方だけに重さが集中するわけではないので安定した音質が得られます。では、弓の向きを元に戻してみましょう。
先ほどの感覚を思い出して弓の真ん中から先にかけて人差し指で圧をかけながら動かしていくと安定した音になりませんか?ここで今度は”弓の速度”と”距離”にもフォーカスしてみましょう。
今までは加重をかけることへの説明が多くなってしまいましたが、ただ加重をかけるだけでは一点に摩擦が集まってしまい音が歪んでしまいます。
そこで、この集まった摩擦を逃がすことが非常に大事になってきます。弓は車などのダンパーと一緒で馬の毛と木の間の幅が張力で変わりますよね。
この張力の調整をするのが右手人差し指なワケですが、仮にこの張力を限界まで使ったとします(毛が木に付くぐらい加重をかける)その状態でゆっくり動かすと当然音は歪みます。
しかし、逆に思い切り早く動かしてみて下さい。
すると、音はかなりくっきりと発音されるハズです。
いわゆる“フォルティッシモ”の音量ですね。
つまり、加重をたくさんかけてもかかった加重を全て逃すくらいの“距離”と“速度”を出してしまえば音はハッキリと出るんです。例えここまで加重をかけていなかったとしても「なんか音が濁っているなぁ」と感じたらまずは弓の速度を上げていつもより長めに弓を使ってみて下さい。きっと、あなたの悩みはスグに解決すると思いますよ。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
これからも綺麗な音を一緒に奏でていきましょう!
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