ファンを巻き込んだ演奏スタイルで、1990年から活動を続けているシエナ・ウインド・オーケストラは、日本の吹奏楽を牽引する存在です。プロの吹奏楽団は数あれど、ひときわ勢いのある楽団として認識されている方も多いのではないでしょうか。
シエナ・ウインド・オーケストラは、テレビ朝日で放映中の「題名のない音楽会」で司会を務めていた佐渡裕(さどゆたか)さんとのコラボで人気に火が付きました。
現在もシエナの首席指揮者を務める佐渡裕さんが登壇するコンサートは、常にお客さんがびっしり。これほどまでに全国のファンを引きつけるシエナの魅力とはどんなものなのでしょうか?
今回は、シエナ・ウインド・オーケストラの独特な演奏スタイルや世界観を切り口に、その秘密に迫ります。
もくじ
吹奏楽部出身でない方のためにも補足しておくと、「ウインド・オーケストラ(吹奏楽)」は、「オーケストラ」や「ブラスバンド」と違い、トランペット・トロンボーンなどの金管楽器とフルート・サックスなどの木管楽器を中心に構成されています。
これに対してオーケストラはヴァイオリンなどの弦楽器が中心になります。また、ブラスバンドは金管楽器と打楽器が中心です。楽器の構成から演奏スタイルも変わってきますので、意識して聴くようになればすぐに区別がつくかと思います。
ちなみに、「吹奏楽っぽい曲」と聞かれると シエナ・ウインド・オーケストラも、コンサートの最後に必ずといっていいほど演奏する「星条旗よ永遠なれ」がまず思い浮かびます。この曲を聴いて高校の吹奏楽部を連想する方も多いでしょう。金管楽器と木管楽器がバランスよくお互いに主張する名曲です。
ほかにも、テンポによっては木管泣かせの「アルヴァマー序曲」や、吹奏楽の特徴である高揚感を最大限に引き出す「宝島」といった定番曲がありますが、もちろんシエナもこういった定番曲は大好物で、頻繁に聴かせてくれます。
シエナ・ウインド・オーケストラは不動の首席指揮者、佐渡裕さんの存在なくして語れないでしょう。バーンスタインや小澤征爾に師事し、ウィーンの名門「トーンキュンストラー管弦楽団」音楽監督にも就任しています。世界中に熱狂的なファンがいて、日本人指揮者としては最も注目される人物でしょう。
「シエナ×佐渡」以外のコンサートでも多彩なゲストが出演します。ヨーロッパの人気作曲家、ヤン・ヴァン・デル・ローストや、前述「アルヴァマー序曲」を作曲したアメリカ吹奏楽の巨匠、ジェームズ・バーンズなど、吹奏楽好きにとっては垂涎ものの指揮者を迎えることもあります。学生時代に吹奏を「水槽」と間違え入部したというエピソードを持つさかなクンなどを呼ぶこともあり、さまざまなファン層へのおもてなしが感じられます。
ここで1曲。聴いてみてください。
もし、「吹奏楽が退屈だ」と考える方がいれば、シエナ・ウインド・オーケストラの演奏会に行くと180度考えが変わることでしょう。シエナの演奏会は毎回ワクワクするような演出が用意されています。「おもちゃ箱スペシャル」では、大人の学園祭をテーマに、楽団メンバーがかぶりものをしてネタを披露。相当な盛り上がりを見せます。
災害の発生を想定して、演奏が始まる前にみんなで速やかに避難する「避難訓練コンサート」や、演奏時間以外もお客さんを楽しませようと、ロビーでメンバーが演奏する「ロビーコンサート」が開催されることもあり、退屈だなんて言わせないという気持ちを感じさせます。
シエナの演奏曲は、ディズニー映画やゲーム「ファイナルファンタジー(FF)」など、みなさんがよく知っている曲を盛り込んでいます。そのため、吹奏楽の曲はそんなに知らないという方も、十分にシエナを楽しむことができます。
FFシリーズの楽曲を吹奏楽アレンジしたオフィシャルコンサート『BRA★BRA ファイナルファンタジーツアー』は大好評。今年も全国をコンサートで廻ります。
また、『ディズニー・ミュージック・フェスティバル』のひとつとして開催される『「ブラバン・ディズニー!」コンサート』は、ディズニーの音楽の素晴らしさを再確認できると同時に、吹奏楽の気持ちよさも感じられるでしょう。
ほかにもJ-POPやブラジル音楽、バレエの作品やジブリ作品で有名な楽曲なども演奏してくれますので、オールジャンルで楽しめます。
シエナ・ウインド・オーケストラの一番の魅力として、「演奏に参加できること」があげられます。
シエナのコンサートでは、お約束のアンコール曲があります。それは、前述した「星条旗よ永遠なれ」。題名を聞いただけではピンとこない方も、曲を聴くと「ああ、この曲知ってる」となるほどポピュラーな曲です。
演奏する楽器はなんでもかまいません。ステージに上がっても、自分の席でもかまいません。でも、一番の楽しみ方は当日までに自分の一番得意な楽器(吹奏楽以外でもOK!)を練習して、ばっちり合わせて演奏することでしょう。特に経験者にとっては、吹奏楽魂をくすぐられること間違いなしです。
楽団と会場の一体感が生まれ、言葉では表せない感動が体験できます。音楽は聴くだけのものじゃないことに改めて気づかせてくれるのではないでしょうか。
シエナ・ウインド・オーケストラを生で聴きたくなった方は、定期演奏会や定番ツアー、全国各地の音楽祭で聴くことができます。定期演奏会は文京シビックホールで開かれますので、ぜひスケジュールをチェックして足を運んでみてください。
地方にお住まいの方は、『BRA★BRA FINAL FANTASYツアー』など、ツアーのスケジュールをチェックしておきましょう。
では、直近のシエナの活動をピックアップしておきます。興味がある方はチャンスを逃さず楽器を持って参加しましょう。
シエナ・ウインド・オーケストラの活動拠点、文京シビックホールで定期的に開催される演奏会です。毎回豪華ゲストが登場しますのでそれも楽しみのひとつになっていて、今回のゲストはなんと、イギリス吹奏楽の大御所、フィリップ・スパークさんです。「オール・スパーク・プログラム」で前回大反響を呼んだコンサートを再び聴くチャンスがやってきます。早めにチケットをゲットしましょう。
名曲ぞろいのファイナルファンタジーの楽曲を、シエナが演奏するというコンセプトで、全国ツアーを繰り広げています。2015年、2016年も開催し、好評を博したこのコンサート。壮大なファイナルファンタジーの世界を、一流吹奏楽団の演奏で堪能できるなんて鳥肌ものですよね。ファイナルファンタジー未経験者にも吹奏楽未経験者にも人気でリピーターも続出です。コンサート数も多く全国各地で開催されていますので、地方の方にとっては最もシエナが聴きやすい機会となるでしょう。
高校生吹奏楽部によって演奏された音源シリーズ「ブラバン・ディズニー!」の祭典にシエナ降臨。1回目となる今回は、東京ディズニーランド・メドレーやディズニー ツムツムのテーマなども演奏され、とてもドリーミーなコンサートになりそうです。コンテストでグランプリに輝いた、北海道旭川永嶺高等学校がシエナと共演を果たすようで、さぞかし気合いの入った演奏を聴かせてくれることでしょう。ゲストにはさかなクンも来ますよ。
フランスで誕生したクラシック音楽祭が、今年はコンベンションセンター「シテ・デ・コングレ」の9会場で開催されます。朝から晩までさまざまなアーティストによる演奏が繰り広げられ、クラシック好きには夢のような祭典です。今回シエナは初参戦。一流のアーティストが集う会場でも、きっと素晴らしいパフォーマンスを見せてくれるでしょう。
シエナの番外編ともいえるアンサンブルユニット。精鋭のなかの精鋭、16人編成の小さな室内楽団がシエナ・スピリッツです。こちらも不定期に演奏会を開きますので、要チェックです。
中学校や高校で「音楽鑑賞教室」と題して演奏することが多いようですが、それにしても、目の前でホンモノの演奏を聴ける生徒たちへの刺激はとても大きなものでしょう。きっと一生の宝物となりますね。
いかがでしたか?シエナのコンサートを一度体験すれば、たちまち吹奏楽の魅力にとりつかれることでしょう。「シエナクラブ」というファンクラブも絶賛稼働中です。シエナをもっと知りたい、もっと身近に体験したいという方はぜひ。
シエナ・ウインド・オーケストラの演奏は、練習の丹念な積み重ねによる達成感や、人と人とがつながるハーモニーを喚起させてくれます。それは時短と競争に追われる社会生活ですっかり忘れさられている感覚かもしれません。吹奏楽に参加することで毎日を豊かにしてくれるのがシエナの魅力ではないでしょうか。
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