前編では、バイエルの歴史について書いてきました。
さて、現代ではどんな存在なのでしょう?
もくじ
前述したように、バイエルが日本に入ってきたのは130年以上前です。
バイエルを初心者のピアノ・レッスンで使用することに、最近では賛否両論あるようです。
というのもバイエルを使ってピアノ教育を行っているのは現代となっては日本だけなのです。
例えばフランスでは、ピアノのレッスンと同時に歌うこともします。
簡単に弾ける曲を弾かせることで
「ピアノを弾くことは楽しい!」というイメージを子供たちに持ってもらうことを目的としてピアノ・レッスンのカリキュラムが作られています。
一方、日本では「ピアノを習う=バイエル」とされています。
バイエルが先に進まなくてピアノが楽しくなくなってきてそのままピアノを辞めてしまう、なんてこともよく聞く話ではないでしょうか。
ピアノを習う子供自身が「楽しい」と思わないと、レッスンも続かないし上達しません。
バイエルの長所と短所を踏まえ、バイエルから一部分を抜き出してレッスンで使用するといった先生が増えているようです。
とはいえ、子供のピアノ・レッスンが続かないのは何もバイエルだけが悪いというわけではありません。
バイエルが優れたピアノの教則本だということは間違いないのです。
しかし、そんなバイエルにも欠点があります。
子供が好きそうな曲が無い、楽しいと思える工夫がされていない、という点などが理由としてあげられます。
逆に優れている点といえば、ハ長調の曲がたくさんあるのでハ長調を定着させるにはとても良い内容です。
50番台ぐらいから左手の伴奏は即興演奏に使えたりするという良い点もあります。
明治時代に出来た教本が今も使われていることが、その証明と言えそうです。
賛否両論もありますし、それぞれの先生の指導哲学もあるので簡単に善し悪しの判断はできませんね。
ただ、多くのピアノ教室では試験の課題曲として使われており、また幼稚園教諭や保育士の資格取得試験でも使用されています。
そのため、苦労しながら取り組むものというイメージがついてしまっているのかもしれません。
バイエルに限らずあらゆる教材に関して言えることですが、先生が教材や曲の目的を生徒へ伝え、適切なものとなるように導いていくことが重要です。
最近では使わなくなってきたという意見もありますが、バイエルの需要は依然として高いようです。
ただ傾向としては、ピアノ・レッスンの最初にバイエルだけを重点的に使うという先生はあまり多くなくなってきているようです。
時代が変わり、子供が楽しめるよう工夫を凝らしている教材がたくさん出てきました。
生徒の意欲や興味に合わせ、さまざまな教材を使い分けるという方法を多くの先生が選択しているようです。
では最近だと、どんなレッスン内容のピアノ教室が人気を集めているのでしょうか?
ひと昔前だと、習い事は一種類だけだというケースが多かったのが、最近では複数の習い事をしている子供が増えています。
ピアノも複数の習い事のひとつとしてとらえられているため、一週間に何度もレッスンに通うということができません。
親も楽しくやって欲しいという気持ちが大きいため、音楽がしっかり身について子供が楽しそうであればいいという考えがあるようです。
また、最近ではピアノのオンラインレッスンがあるようです。
某学習塾のように録画された映像を見ながら学ぶスタイルから、テレビ電話アプリのSkype(スカイプ)を使って学ぶスタイルまでさまざまなものがあるようです。
オンラインレッスンのメリットとしては月謝が安いということや、自宅で自分のスケジュールに合わせてレッスンを受けることができるということが挙げられます。
今は珍しいスタイルですが、将来は当たり前になる可能性もゼロではなさそうです。
さらに、大人に人気なのが一曲をマスターするコースです。
好きな曲をピアノで弾けるようになりたいという憧れはあるものの、これまでは「ピアノの経験が無いから…」と諦めてしまいがちでした。
しかし、1曲をマスターすることを目的としたピアノ・レッスンなら会社帰りに通うなど少しずつ上達できます。
結婚式の余興でピアノを披露するなど、ちょっとしたサプライズとしてもよさそうですね。
本来、ピアノ・レッスンはピアノを上手くなるためでなく「楽しむため」に受けるのではないでしょうか?
ピアノが上手くなったから楽しいのか、楽しいから上手くなったのか。
楽しいというモチベーションは、ピアノを継続的に弾くという習慣につながります。
今回はバイエルについて取り上げましたが、ピアノを弾くことが好きになるという本質的なことを忘れずに教材とレッスン選びをしてみてはいかがでしょうか。
参考文献/「バイエル教則本初版本の研究」、安田 寛・多田 純一・長尾 智絵、奈良教育大学
参考URL/「日本ピアノ事始め」日本ピアノ調律師協会、http://www.jpta.org/musicfair2001/index.html(2017年1月21日)
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