作者の「名誉」と「利益」をどう守るか?
この2つのワードは音楽の著作権を理解する上で非常に重要です。
今年1月、「森のくまさん」の替え歌を歌った芸人のパーマ大佐と、CDの発売元であるレコード会社ユニバーサルミュージックに対し、「森のくまさん」訳詩者の馬場祥弘さんが著作者人格権を侵害されたとして慰謝料300万円を請求しました。朝日新聞デジタル によると、馬場さんは弁護士を通じて、歌詞の無断利用を批判し、YouTubeの動画も削除するように求めています。
また先日、JASRAC(日本音楽著作権協会)がヤマハやカワイなどの音楽教室に対して、著作権使用料を徴収する方針を固めたことが話題となりました。
この話題について、著作権の基本的なしくみと併せて考えてみましょう。
もくじ
これまでもJASRACは著作権法が定める演奏権(上演権)を根拠にコンサートや演奏会、カラオケ歌唱に対して著作権使用料を徴収してきました。
さらに、音楽教室での演奏にも演奏権は及ぶとして、著作権使用料を音楽教室から徴収する方針を固めました。この方針に対して、音楽教室を運営する企業側が反発しています。
世間では、「ジャスラック、そこまでやる?」という声もあがっています。
このように音楽業界では著作権に関連した議論が巻き起こっており、音楽の著作権に対する関心が高まっています。
そもそも著作権とは何のためにあるのかというと、著作者の名誉と利益を守るためといっていいでしょう。
音楽の著作権は、著作物が創作された時点で成立します。アドリブの即興演奏も対象に含まれ、音楽の作者(作詞家、作曲家、演奏家など)の利益、名誉が損なわれないように保護することを目的とします。
一般人からすると、「著作権って、なんか面倒だな」と邪魔もの扱いされがちですが、音楽を創作する作者にとって、ひいては音楽業界にとって、とても大切なものなのです。
大きな意味での著作権は「著作者人格権」と「財産権としての著作権」に分かれ、一般的に「著作権」と呼ぶときは後者を指しています。そして2つの権利は、さらに細かな権利に分かれます。
著作者人格権
著作権(財産権)
(参考 著作権の概要|JASRAC )
また、著作権とは別にCDをつくるレコード会社や音楽を演奏するミュージシャンにも、著作物の伝達において重要な役割を果たす事業者として以下のような「著作隣接権」が認められています。
ミュージシャンの著作隣接権
レコード会社の著作隣接権
(参考 著作権って?音楽をつくる人、つかう人|JASRAC )
このように、音楽の著作権にはさまざまな細かい権利が存在します。
ただ、音楽の作者が自らの著作権が守られているかどうかを把握することは、簡単ではありません。
例えば、作者本人が全国のカラオケや飲食店で作詞・作曲した楽曲が何回流されたのかをカウントする…なんて、現実的に無理ですよね。
そこで、音楽の著作権絡みの管理を一手に引き受けるのが、音楽著作権管理事業者です。そのひとつがJASRACになります。なお、正式名称は「一般社団法人日本音楽著作権協会」といいます。
JASRACは音楽の作者である作詞家、作曲家、音楽出版社から著作権の管理委託を受けています。なお、レコード会社やミュージシャンの持つ著作隣接権は管理していません。
JASRACの業務は、「音楽の利用者に対する利用許諾を出す」「利用料の徴収を行って利用料の分配を行う」「著作権侵害を監視する」「著作権侵害者に対する法的措置を取る」ことなどです。
こうして、音楽の作者が監視や許諾、利用料の分配を行わなくても良いようにしてくれているのです。
音楽の著作権に関して概要を説明しました。続く後編では、わたしたちの日常生活において気を付けたい点について書きたいと思います。
【参考】